alternative soloist vol.9 -オルタナティヴソリスト ボリュームナイン- 10.07
シンガーソングライターsuzumokuが地元静岡の盟友、代々木原シゲルと共同企画したイベント「ALTERNATIVE SOLOIST」も今回で9回目となる。
昨年4月からスタートし、隔月第一金曜日に開催するこのイベントは、あくまでも歌と楽器だけで勝負するという趣旨のもと、Vol.2には高橋優、Vol.3にはおおはた雄一なども参加している。そして今年5月には「未定 VOL.1」というタイトルで、このイベントのコンピアルバムもリリースされた。
10月7日(金)、Vol.9の会場はいつもの通り東京・代官山 “晴れたら空に豆まいて”。
会場の真ん中あたりまで進むと左右に、靴を脱いで観覧できる畳敷きの桟敷席がある。右の桟敷席には大きな紅色の番傘が広がり観客が美味しそうなものを食べながらライブを観ている。左の桟敷席にはイベントの進行もするsuzumokuと代々木原シゲルを中心に、出演者も入れ替わり立ち代わり狭いそのスペースに入っていた。
今回の出演は ウエルカムアクトに藤田悠治。オープニングアクトに、やまもとなおこ。そしてゲストアクトに齊藤ジョニー、星羅を迎え、本編は代々木原シゲル、ヨウヘイ、suzumokuという構成で繰り広げられた。
各アーティストの演奏が終わると、実況席のような桟敷席でsuzumoku達はそのアーティストのことや、それにまつわることを語った。その度に、前にいる観客は後ろを振り返り、楽しげにその様子をみている。意地悪い見方をすれば、こういう定期イベントというのはつい内輪ウケに走ってしまう。だが、個々に実力があるステージを見せてくれるこのイベントに今回初参戦した私は、ただただ楽しかった。閉鎖的要素がなく、あたたかいアットホームさだけが心地よかった。
ひとり4曲の持ち曲を終え、ラストはsuzumoku。
指を慣らすように細かくギターを爪弾くと、口に加えたピックを弦に走らせメロディは「僕らは人間だ」のイントロへ変わる。拳を突き上げるような力強さが声となって振動する。ここのところ、取材や個展のことでsuzumokuにはよく会っていたが、穏やかな青年は「歌い人」になると人格さえも変わってしまったのではないかという気持ちにさせる。
しかし結局はsuzumokuという人間の中から生まれる感情が影や光を照らし出すわけで、別に人格が変わったわけではないのだ。歌い終わると水を飲み、心臓をぽんぽんと叩きながら一息つく。挨拶をし、「この時期になりますとうちの近所にも、藤田悠治が嫌いなキンモクセイという花がオレンジ色の綺麗な花を咲かせます」と、その前まで桟敷席で話していたことをしっかりトークに折り込み笑いを誘う。仲間がいるせいだろうか。トークのテンションもワンマンの時より少し高めでおもしろい。
suzumokuの柔らかい光が「衣替え」の優しいメロディにのり、季節の移ろいや歌詞の感情は音のスピードの変化で、早足にもなり、立ち止まったりもする。
「そんな清々しい空気の中、ひとりニヤニヤ歩いてると、何だあいつはと思われるわけです。そういう気持ちで本当に路地裏を歩いたりするんですよ。気持ち悪いでしょ。カメラぶらさげてさ、ニヤニヤしてさ。」と、自分の日常風景を切り取り、面白げに会場のファンと笑いを共有させる。
そんな風景の中で、よく見る”鴉” と”自分” を透かし合わせるように作ったという「鴉が鳴くから」は、ライヴでは何度も披露していて、ファンの中では馴染んだ曲だが、11月9日リリースのシングル『真面目な人』のカップリングとして初めて今回音源化される。ラテン・サンバのリズムに、唸りをはらみながら時々挑発するように口角をあげ歌い上げる。
大きな拍手を受け、ギターをチューニングしながら「そんな鴉が僕は大好きなんです」と言う。自らひねくれ者だと言うsuzumokuの美学かもしれない。
そしてラストはそのシングル曲「真面目な人」。ニュースを見ると、事件のあり方が変わってきたと語り、そんな想いを凝縮したようなこの曲を熱唱。作品では7月にリリースした『Ni』で使い始めたエレキギターを用いているが、今回はアコギヴァージョンということで、エレキとは違うアコギらしいエッジと歌声に会場は魅了された。
正直、「真面目な人」を初めて聴いた時、楽曲の存在感に衝撃すら覚えた。今回生で聴いたそれもやはり同じだったが、しかしアンコールでの「フォーカス」がつまらないということは全くない。曲が始まり、少し切なさをはらむメロディと棘のないsuzumokuの歌声が一気に会場の空気を溶かし、新たな色に変化した瞬間を確信した。きっと私はsuzumokuの、そういうコントラストが元来好きなのだろう。観客にも木漏れ日のような笑顔が溢れていた。
suzumokuの演奏が終わると、出演者全員ステージにあがり、それぞれ挨拶をすると最後は会場のファンと一緒に集合写真を撮って、Vol.9は終了した。
取材・文/まさやん
「GARDEN Re-Boot!! Anniversary event Premium Acoustic & Electric Night」10.22
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