「毛皮のマリーズからは何が出てくるか分からない!」1月19日リリースの2ndアルバム「ティン・パン・アレイ」を初めて聴いた時にそう思った。一言で言えば、美しい!!
その美しいアルバムは東京へ捧げる曲だと志磨遼平は言う。アルバムの事や、そこで歌う「東京」への想いを志磨に語ってもらった。
—— 前作から今作はタイトルから楽曲にいたるまでかなり予想を裏切ってくれました。でも先行シングル、Mary Louはこのアルバムを予感もさせてくれていますね。
そうですよね。最初 “Mary Lou” はアルバムに入れる予定では作っていなかったんです。シングルのみで考えていたので。でも今思えば、すごく「ティン・パン・アレイ」的な曲でしたね。
—— 今回、東京をコンセプトにした理由は?
上京してきて10年なんですよ。ようやく東京が好きになってきて、やっと住んでいる心地がしてきました。それまでは居ても居なくても変わらないような生活をしていましたからね(笑)。僕は高円寺にずっと住んでいたんですけど、ギターを弾いたり本を読んだりしながらやっと外へ出られたというか、お仕事で必要とされると、東京に住んでいるんだなと実感します。それがきっと、僕の人生の中でいい時代なんだと考えると、ここらでひとつ「東京に送る11の楽曲」というイメージで作品を作ってみたいと思ったんです。
—— いつ頃から東京を好きになり始めたんですか?
多分2、3年前位からですかね。その頃からバンドで、良い反応がかえってくるようになってお仕事も増えて。昔は東京で独り生き抜く!っていう感じで周りを敵視していましたからね。「誰も分かってくれない!」って(笑)。なるべく一人で暮らしていましたけど、大分気分も晴れてくると精神的にも余裕が出来て街を歩いてみたりしてね。あとは26歳頃の時、大切な恋人が出来て、その人が東京育ちだったというのが大きいですよね。彼女を育んだ環境、土地、人。だから僕が家に閉じこもっていて知らなかった彼女の原風景や東京の街のことを、おしゃべりしながら聞いていると「あぁ、東京っていい街なんだな。」って考えるようになりました。散歩しながらよく街を歩いたりしましたよ。電車に乗ってどこかへ移動するのと、歩いて街を見るのでは大違いですからね。歩いているとその街にいるという実感が湧きますから、歩いて青山や六本木、東京タワーも行きました。そうやって過ごしているうちにどんどん愛着が湧いてきました。
—— 今回のアルバムの楽曲たちは大分前から出来ていたんですよね。
はい。デビューアルバムを録り終わってすぐに作り始めましたので、もうデビューの4月段階では半分位は出来上がっていましたね。
—— SEもふんだんに取り入れたサウンドコラージュ、ホーンやストリングス、今作はよりmid60s寄りのイメージでしょうか?
そうですね。ひとつコンセプチャルなアルバムを作るというのと、4人のベーシックだけで作り上げるライブ録音というよりは、ダヴィングを重ねたスタジオアルバム的なものが僕としては趣味なので、Sgt.Pepprt’s周辺の一連のああいうアルバムを思い浮かべました。
—— 「バンド」というより、 志磨さんの創作意欲と好奇心が勝ってしまったという事ですか?ペットサウンドを作り上げたブライアンウィルソンのように。
あー、はいはい!でも僕は基本的に作り込むタイプではなかったんですけどね。ちょっと僕はタイプがおかしいんですよ。今迄の僕らの作品は一発録りというのがなかったんです。全部個別でひとつづつダヴィングしていくんですけど、いかに一発録り風のライヴ感を出すかというのをすごく緻密に構成したりという変なこだわりはありましたね。
でもこうやって音楽的にひとつひとつやっていくのは今回が初めての試みでした。
—— メンバーの反応はいかがですか?今回は「毛皮のマリーズ」というより、「志磨遼平」が全面に出ている気がするのですが。
まぁそうですね。ただうちのバンドは、例えば「こういう作品を作ろうと思うんだけど、今回のテーマは…」とか、作り終わって「いやぁ、何度聴きかえしても素晴らしい作品だね。特にあそこのあの部分が…」っていう話は一切しないんですよ。「とりあえず次の曲いきます」っていう感じで、その曲のどの部分をどう録るかという段取り説明をして スタジオで淡々とやっています。
—— それは昔からですか?
そうです、昔から。
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