ー 日本でのレコーディングとは違いますか?
Juker:全く別ものですね。
Kenji:まず、レコーディングの音が飛び抜けてよかったというのがあります。ドラムは特に感じたと思うんですが、マイクの立て方ひとつとっても違うんですよ。それは観ていてとても面白かったです。
Kaz:ドラムって、楽器としてはアコースティックなので、太鼓の鳴りというのを録る時に、日本のエンジニアさんやプロデューサーさんだと、アタックの音をしっかり録って綺麗に音をまとめるという特徴があるんですね。それに対して向こうはドラムセットの周りに太鼓の音を狙わないマイクをいくつも置くんです。
ー そうなんですか?
Kaz:ドラムから2m離れたところにコンデンサーを2本立てておいて、扉を開けて、隣りの部屋にマイクを立ててあったりとか。
ー すごいですね!
Kaz:そうなんですよ。そういう空間の音を録るというのがとても上手な方だったので、 それが洋楽と邦楽の一番の違いに繋がるかもしれません。その分ミックスはすごく大変だと思うんですけどね。ドラムだけでも毎回マイク20本以上立てるので。でもそうやって色々なところで鳴ってる空間の振動を録ってくれるというのは初めての経験だったので、ドラマーとしてすごく勉強になった面もありますし、そういう録り方をしてくれたのが本当に嬉しかったです。
Kenji:あとダブリングがすごかったね。
Kaz:そうだね。ダブリングといって、例えばギターでいうと、同じフレーズを2回弾かせるんですよ。それでパン(音の定位のこと)を振ってミックスをするんですけど、そうすることでより広がりを感じるサウンドが作れるんです。ギターに対してもマイクは3本立てて、それをダブリングするので、ひとつのギターフレーズに対して使うトラックが6個になるわけです。
ー それすごいですね。
Kaz:それだけでもすごいと思うじゃないですか。それを更にミックスして距離感の調整とかをするんです。そういうことがあの音源の中で色々と行われてきました。
Kenji:あと機材がいいというのは言うまでもないんですが、僕たちが録ったスタジオは、スタジオシティという街で、そういう名前がつく位、沢山のスタジオがあるわけですよ。近くにキャピトル・レコードもキャピトルのスタジオもあるし。
ー おー!!
Kenji:だから機材貸し屋さんも繁盛しているんです。それではじめTomに「手ぶらで来ていいよ」って言われて、「本気で言ってるのかな?」と思ったんですが(笑)、実際行ってみたら何でもあるんですよね。さっき言った、ドラムに立てたマイクもめちゃくちゃいいものを惜しみなく使うし。
Kaz:見た事のないマイクばっかりだったのでよく分からなかったんですけど(笑)、色々な種類を使わせてもらいました。
Kenji:ヴォーカルで使ったノイマンのヴィンテージものは、ビートルズがレコーディングで使ったものらしくて、古いんですよ。でも古いのに状態はとてもいい。
ー 海外はそうやって機材を本当に大切に使うみたいですね。
Juker:そうなんですよね!結構いいヴィンテージのものが残っていたりしますね。
Lyuon:あと人間的な話をすると、Tomの人柄がすごく良かったです。
Kenji:そうだね。
Lyuon:エンジニアの人って、例えば録音する時「もう一度、録りますか?」というようなコミュニケーションの場合もあるじゃないですか。
ー はいはい。
Lyuon:でもTomはまったくそういうニュアンスじゃないんですよ。「なんだ、これは!この曲はクイーンみたいじゃないか!!」とか、そういうリアクションが毎回あって。だから僕たちは飽きずに何回も録るから、気付いたら夜になっているとかの連続でした。
Kaz:あとスタジオシティという場所は色々なエンジニアさんの卵が集まってくるところなので、Tom以外にも何人も若手のエンジニアさんがいて、中には有名な方もいるんですが「君たちの音源気に入ったよ」と言ってくれて積極的に手伝ってくれました。そういう出会いも音が良くなった要因だと思います。たまたま居たインドのエンジニアさんがエレキシタールを貸してくれたりとか本当に一期一会で録れた音ですね!
ー では改めて、ミニアルバム 『PIECES BY ELEMENTS』のコンセプトを教えてください。
Kenji:コンセプトは「生への探求」です。人間は生きる上で、色々な感情を抱きながら成長していくという人生全体のテーマを描きたくて、 1曲目の「New Brainchild」が出来たときにそのコンセプトを決めました。
ー そのコンセプトを元に、当初頭の中に抱いていたイメージ通りに仕上がりましたか?
Kenji:いい意味で変わっていきました。やはり作品を作る上で、ロスで様々な人が関わってくれたので、僕たちの中で再現したいけどどうしたらいいか分からないものも全て、プロデューサーさんやエンジニアさんが補ってくれたので、そういう意味で仕上がりは僕たちが想像していたものより、更に良くなったと感じています。
ー 曲は全員で作っているとのことですが具体的にはどういう作り方をしているんですか?
Kenji:キーワードを誰かが持ってくる場合もありますし、1からセッションする場合もあります。だから案外決まりはないですね。
ー 歌詞は?
Kenji:書きたい人が書く(笑)
Kaz:そうそう(笑)
Lyuon:歌詞が出来る前に、楽曲で伝えたいイメージを共有することから始めるんです。「生への探求」がテーマと言いましたが、そういう大きなテーマだけど、曲ごとに距離感だったり、ミクロマクロとか、角度が違ったりしながら物語を通じて伝えているというのもあるんですが、例えば、「この広い空の下で気持ちいい風が吹いて、生きる喜びを感じたよね」という話があったとしたら、そういうひとつの物語や風景というのを音と歌でどうやって伝えていくかということから入る時もありますし、誰かが原案を持って来たという時も、大体そのイメージでアレンジを膨らませていくことが多いので、歌詞も「自分はこういう気持ちだから、こう書きたい」とか言いながら、最終的には全員が納得する形には絶対します。