昨年12月にリリースした6thアルバム『COSMONAUT』以降、2011年に入ってからもBUMP OF CHICKENは引き続き楽曲制作の日々を送り、コンスタントにシングルをリリースしている。
2月には長編アニメ『映画ドラえもん新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ天使たち〜』の主題歌「友達の唄」。5月には東日本大震災を受けて制作し、漫画家・井上雄彦とのコラボレーションとともにSoftbankの復興支援ポータルサイトCMに起用されたチャリティー・シングル「Smile」。そして、今回もまた特別な作品との邂逅によって生まれた楽曲が世に放たれる。
タイトルは、「ゼロ」。メンバーも大ファンだという国民的RPG“FINAL FANTASY”シリーズの最新作『FINAL FANTASY 零式』の主題歌として書き下ろされた楽曲である。
藤原:「僕は『FINAL FANTASY』シリーズを古いタイトルからリアルタイムでプレイしていて。ゲームの世界観、ハードとともに進化していく音楽と映像の演出効果、新たなシステムの導入……作品が出る度に驚きと感動をもらっています」
直井:「ゲームを通して自分がいちばん最初に触れた絶対的なファンタジーなんですよね。なので、自分のなかのファンタジーの概念を作ったのは『FINAL FANTASY』シリーズだといっても過言ではない。それくらい大きな存在なんです」
増川:「僕は『FINAL FANTASY』シリーズのダークな雰囲気に惹かれています。ストーリーも内省的で、子どもにとっては衝撃的な部分も多いんですけど、主人公が闘わざるを得ない理由がそこにはあって。そういう意味でも、大人になってからのほうが作品の世界観に強く惹かれていきましたね」
升:「僕は普段あまりゲームはやらないんですけど、メンバーからの影響もあって『FINAL FANTASY』シリーズはいくつかプレイしているんです。今回、僕らはゲーム内で“ゼロ”が流れるシーンをチェックさせていただいたんですけど、ストーリーの前後関係を理解していなくてもゲームの世界観と曲が必然的に融合していることを強く感じることができました。それがすごく感動的でしたね」
そう、BUMP OF CHICKENの楽曲は、これまでも得がたい出会いとコラボレーションをその音楽力で“必然”に昇華してきたし、この「ゼロ」もまたそういう風韻を感じさせて止まない。相変わらずの緻密さをもって築き上げられた荘厳なムードをたたえたサウンドに描かれているのは、生命と生命の交わりとその終わりを深遠な筆致で焼きつける、魂の唄だ。それは聴く者に『零式』の世界観の核心を想起させながら、その実やはりどこまでもBUMP OF CHICKENの真髄が響く楽曲として迫ってくる。
藤原:「最初にいただいた『零式』の設定資料に十数人の主要キャラクターが描かれていて。そのバックの背景は赤黒い感じで、戦火なのか、あれは燃えているんだと思うんですけど。そこに十数人のキャラクターがそれぞれ武器を持っていて。闘いを予感させるようなイラストですね。その記憶が曲の全体像に作用しているのかなと思うんですけど。ただ、曲を書くときはどうあがいても、自分が生きている現実に意識が行きますので。最終的にはメンバーのことや家族のこと、そしてずっと僕らの音楽を聴いてくれているリスナーのみなさん、ライヴを観に来てくれる人たち——そういうところに向けての歌になっていくんですよね。だから、この曲も僕にとっては日常を歌っているものでもあって。いま僕は32歳ですけど、32年間生きてきたことを書いている。それをどう捉えるかは、受け取ってくれたリスナーのみなさん一人ひとり次第なんだと思います」
期間限定盤、通常盤ともにM2にはバンド・サウンドにリアレンジした「Smile」が収録されている。オリジナルは藤原の弾き語りによるテイクで、ひとつのメロディを繰り返すミニマルな歌が、切実な祈りとしての訴求力を増していく様子が生々しく収められていた。
このバンド・バージョンでは、静謐な序盤を経て、バンド・インのタイミングで一気にダイナミックな生気が放出され、アウトロが鳴り終わるまでサウンドの熱量が高まり続ける、BUMP OF CHICKENというロック・バンドの生々しい肉体性が剥き出しになっている。
また、期間限定盤のM3には「ゼロ“FINAL FANTASY 零式”オープニングver.」が収録され、ジャケットを彩るのはFINAL FANTASYシリーズのイメージイラストを手掛けてきた、天野喜孝氏による『零式』用イラストを本作のためにリメイクしたものだ。さらに同梱されるDVDにはここでしか観られないSQUARE ENIX制作によるスペシャルMVを2本収録。BUMP OF CHICKENと『零式』の濃密なコラボレーションが、全方位で果たされている。
そして、最後に。BUMP OF CHICKENは12月5日から実に約3年半ぶりとなる全国ツアー「GOOD GLIDER TOUR」をスタートさせる。多くの、本当に多くの人々が待ち望んでいたこのツアーへ向けた4人の言葉で、本稿を閉じよう。
増川:「3年半ぶりの全国ツアーって感慨深いものがありますね。僕らもすごく楽しみにしています」
升:「お客さんの熱気を目の前で感じることを心から楽しみにしています」
直井:「この前、メンバー4人とプロデューサーで集まりまして。曲を決めたりとか、どういうライヴにしようかというミーティングをしました。『COSMONAUT』の曲がライヴの軸になるのは間違いないんですけど、“やっぱりこの曲もやりたい”って過去の曲をどんどん入れていったら、すごくいい感じのセットリストになりました(笑)。楽しみにしていてください」
藤原:「すごく久しぶりのツアーになるんですけど、そのあいだに僕らが何をやっていたかというと曲を作っていたということで。そのすべての曲が、作っているときにお客さんに聴いてもらうことを前提にしていたので。僕らは曲を聴いてくれる人がいるんだという事実に助けられてきたから。お客さんに会える、みなさんの前で演奏できるのをすごく楽しみにしています」