ー 佐藤タイジさんとの「グローバ・リズム」はまた力強い原始的なネイティブサウンドが印象的ですが、この曲は歌詞を浜崎さんが担当。ガガーリンや銀河鉄道の夜 アーサー・C・クラークと(スタンリー)キューブリックが出てくるあたりは、浜崎さんの好きな世界を反映されているんですか?
好きな世界というより、妄想というものが人間の社会をどんどん広げていくということなんです。イメージしたことを実現しようとすることが人間社会の歴史の中にはあるじゃないですか。それをどんどん拡大していっている。悪く言えば肥大していっている。この歌を作る時に問題にしたのは、ネット社会になってから世界が小さくなったということです。
ー 小さくですか?
この間もFacebookでロシアの人から友達申請が来たんですが、何でロシアの人が僕に?っていう感じだった(笑)。でもそういう意味では世界がどんどん小さくなっているのかなと。ネット社会というのが非常に大きな影響をもたらしていると思うんですが、それに伴う孤独感みたいなものが生まれて来た。それが混乱のポイントのひとつになっている気がするんです。
ー なるほど。
世界が近くなって自分の手元にあるということは、逆をいえば広すぎて自分がどこに立っているのか分からないという孤独感なんだと思うんです。例えば渋谷にいるとして、スマートフォンとか携帯で実家にいる宮城県の人とネットを通じて会話したりするわけじゃないですか。「今、何食べてるの?」とか「今、渋谷にいる」とか。そういう意味では世界は近いんだけど広くなっちゃっていて、どこにいるか分からなくなってしまう。肥大していく世の中や、自分がどこに立っているかという場所というのは、歌になるのかなと思ったんです。
ー 深いですね。具体的にはどうやってそのイメージとサウンドを繋ぎ合わせたんですか?
音楽が広がっていくストーリーです。例えばヨーロッパの人達が世界中に大航海時代という形で、奴隷を連れて色々な各地に旅に立つ。サンバは元々ポルトガル移民の“Fado(ファド)”という民族音楽とアフリカ移民のリズムが合わさって生まれたり、アメリカのカントリーミュージックは元々スコットランドやアイルランドの民謡だったり。そうやって、人が移動することで音楽が混じり合って広がっていく。そこにまた黒人のブルースが合わさることで、どんどん現代の音楽に繋がっていくわけです。日本の歌謡曲とロックが合わさってJ-POPが出来上がったりね。そうやって混じり合いながら肥大していくことを表現したかったんです。だからリズムとなっているヴォイスパーカッションは大航海時代の奴隷船に乗る人たちのかけ声をベースにしているイメージなんです。それで船をこいで行くストーリーが、ガガーリンになり、妄想の中で宮沢賢治は銀河鉄道を走らせ、キューブリックは「2001年宇宙の旅」をあんなにドラマチックに描いたわけですが、気がついたら2013年を迎えている。そんなことを音楽にしてみたいなと思ったんですが、以外と大河ドラマですよね(笑)。
ー まさにそうですね。大河ドラマか冒険活劇!そこから今度はRock Barでのひと幕を歌った、おおはた雄一さんとの「ウィスキー」は、妙なリアリティを感じました。浜崎さんは結構Rock Bar的なところに行ったりはするんですか?
Barにはよく行くんですよ。
ー やっぱりウイスキー?
ウイスキーですね。Barって結構劇場だなと思ったんです。現実の中の、非現実みたいなところがあって。要するに酔っぱらっているわけですからね。ある日常のある時間、Barの扉を開けると非日常が待っている。だから怪我することもあるんです。
ー 怪我ですか?
日常だと思って過ごしていると、実は非日常だから、めちゃくちゃなことを言ったり人を傷つけたり色々なことが起きるわけなんですよ。だから後からあんなことしなきゃよかったなとか、余計なこと言わなきゃよかったなとかあるわけですよ。
ー ある意味歌のテーマにしやすい題材かもしれませんね。ちなみに、おおはたさんと飲みに行ったりはしたんですか?
昨年「GACHI(ガチ)」で共演した時は打ち上げをやらずに別れたんですが、その後僕が青森県の弘前でライヴをやった時に、おおはたくんも別の現場でたまたま同じ街にいて、夜中に二人でBarで飲みました。まさか青森の弘前で会うとは思わなかったけどね(笑)。
ー 東京で偶然とかとは違いますからね。
その時の雰囲気も含めて、おおはたくんとはブルースをやりたいと思ったし、酒の歌でも作れたらいいなと思ったんです。
ー おおはたさんも結構飲まれるんですか?
うん。でもそんなに飲んで騒ぐという感じではなくて、淡々とした感じでしたけどね。
ー その時は音楽の話をしながら飲んだんですか?
ロックビデオが色々流れてたんですよ。それ観て「これ、やばいな」って感じ(笑)
ー ギターの音色も印象的ですが、これはドブロですか?
ドブロです。あれはおおはたくんが弾いているんですが、この曲ではおおはたくん大活躍ですよ!ベースも弾いてるし。
ー そうだったんですか。あのドブロが効いていますよね。
あれ、すごくいいですよね!
ー 今回は浜崎さんもかなりギターは使いましたか?
そうですね。ギターは4、5本使ったかな。
ー 曲によって、かなりギターの音が違いました。でもまだ未熟なので、浜崎さんとコラボ相手の音の聴き分けまで出来なかったんですが…。
大抵、うまい方がおおはたくんだったり和義くんだったり(笑)
ー いやいや(笑)。楽曲としてはすでに出来ていたという、仲井戸“CHABO”麗市さんとの「ぼくらのX'mas-Song」は、クリスマスというキーワードを最初からテーマに考えていたんですか?
そうです。一昨年の冬に「CHABOの恩返し」という、CHABOさんがやっていたアコースティック・ライブシリーズがありまして、そのライヴに出演させてもらうことになったんです、12月に。それで、ライブで一緒に歌おうということでCHABOさんが大元の部分を作ったMDを送ってくれまして、続きを僕が作ったんです。詞曲の部分はいくつかの方向性があったので、CHABOさんにメールでどういう感じか聞いたら、「あったかいけど、切ない感じかな。」という答えが返ってきたので、それを元に作ったんですが、結構早く仕上がりました。その日に帰ってきてすぐ作っちゃった位。
ー それは早いですね。
早かった、早かった!