家入レオ。デビュー当時からとても気になっていたミュージシャンのひとり。意志のある表情。意志のある歌声。意志のある歌詞や言葉。それらが彼女の楽曲を数多くのファンに届けてきた。11月19日リリースのニューシングル『Silly』は、TBS系金曜ドラマ「Nのために」の主題歌としても、すでに話題をよんでいる。今回、湊かなえの原作を読み、書き下ろしたという『Silly』への想いや、彼女が音楽を学んできた音楽塾ヴォイスのこと、その塾長であり家入の作品で多くの楽曲を手がける西尾芳彦氏のことなど、ミュージシャンとして家入の軸になっている部分や、ひとりの人間としての家入の姿など、今年20歳になる家入レオを様々な角度から知りたいと思い、話を伺った。
ー 家入さんは音楽塾ヴォイス出身ですが、具体的にはどういうことを習ったんですか?
メインは歌詞づくりや作曲理論でした。でも黒板に向かって理論をずっと勉強するというよりは、自分が課題にしたい洋楽を1曲選んで、その曲を耳コピするんです。それで「ここの音は違うよね。」と指摘を受けたり、「何でここのメロディは耳に残るんだろう。」という部分を解説してもらう形でした。
ー 授業で一番身になったことは?
全てです。小さい頃から母の影響でずっとThe Beatlesを聴いてはいたんですが、ヴォイス全体としてThe Beatlesを敬愛しているんです。だから私も代表曲を1曲1曲授業の課題にしていく中で、コード進行の在り方やメロディの作り方がすごく自分の基礎となりました。それと何より一番は人間的なことが大きいかもしれません。
ー 人間的なこと?
13歳の時にヴォイスに入ったんですが、その当時は本当にちゃんと言葉を持っていないような子で(笑)。
ー 言葉を持っていない?
とにかく喋らない!人見知りが激しかったです。ただ、音楽をやりたいという気持ちだけは強かったので、結構生意気なことを言ったり、大人への反発心も強かったんです。
ー それはいわゆる反抗期というやつ?
それもあるでしょうし、とにかく当時は大人が嫌いでした。だから、塾長の西尾芳彦プロデューサーはそんな私をよく受け止めてくれたと思います。あそこで「大丈夫、大丈夫」って言ってくれたから、少しずつ音楽への道も開けていったと思うんです。でもそれは決して、他の大人たちみたいに猫なで声で「大丈夫よ、怖がらないで。」ということではないんです。100%の気持ちで相手も返してくるので、ちゃんと怒ってくれるし、ちゃんと本当のことを言ってくれる大人の方でした。
ー 大人が嫌いという理由は、本当のことを言ってくれる大人が少なかったから?
すごく幼いですが、当時はそうでした。例えば私が何か我儘を言ったとしても、ちゃんと向き合おうとしないとか。そういう姿を観ると、やっぱり大人は嫌いと感じてしまっていました。
ー 西尾さんは音楽塾ヴォイスの主宰者であり、家入さんの作品で作曲を手がけていますが、家入さんにとってどういう人か更に教えてもらえますか。
西尾さんがいなければ私は今、ここにはいないです。私以上に私のことを理解してくれる大人。
ー 恐い人ですか?
うーん、私はずっと一緒にいるので恐くないですが。でも、音楽のことになるとやはり恐いです。それはもう…本当に凄いです!一度、ある曲の歌い方で言い合いになったことがあって(笑)。
ー それはヴォイスの頃?
いや、デビューしてからです。あの時は絶対私も譲りたくなかったんですが、西尾さんに「いやそこはリズムに合っていないから、そういう風に歌うと歌ではなくてただ遅れているだけになるよ。」と言われて。当時はデビューして間もなく、まだ殆どライヴもしていない状態だったんですが、私も「でも主人公はこういう気持ちなので、この歌詞を書いたから、こういう歌い方がしたいんです。」と反論したら、「それは歌い方うんぬんではなく、自分で自分のことを可愛がっているだけだと思うよ。」と言われて。でも当時のデモ音源を今、聴き返してみるとおっしゃる通りだなと思います。
ー 西尾さんは、家入さんが書いた歌詞に対してもアドバイスをくれることはあるんですか?例えば、もっとこうした方が譜割りが良いとか。
あります。ただ、自分がどうしてこういう歌詞にしたかを説明すると理解してくれて、もし私が合っていると思えば「ごめんね。そこはそれで良いと思う。」と言ってくれます。西尾さんは、自分の建前だけを守って「これをやれ!」という人では絶対にないので、常に音楽のことを一番に考えています。
ー 西尾さんは、音楽に対してとても真っすぐな人だという印象を感じました。
そうなんです。本当に真っすぐだと思います!
ー そういう人と音楽を作れることは、ミュージシャンとしての家入さんの力にもなるね!
そうですね。「こう表現したいんです。」とか「こういう気持ちを伝えたいんです。」など、自分が表現したいことや気持ちをぶつけると、それに合った楽曲を色々と考えて、作ってくれます。
ー 先程、小さい頃はお母さんの影響でThe Beatlesを聴いていたと言っていましたが、他にはどんな音楽を聴いていましたか?
中森明菜さんや尾崎豊さん、平井堅さんや山口百恵さんを聴いていました。家にあるCDが母セレクトなので、世代的には本当に上ですが。あとは宇多田ヒカルさんも聴いていました。
ー 家入さんが中学生の頃とか、リアルタイムで流行っていたものってどういう音楽でしたっけ?
私は本当に流行に疎かったのでよく分からないんですが、自分の中で流行っていたのはミシェル・ブランチやKTタンストールとかも聴いていました。アヴリル(アヴリル・ラヴィーン)は小学校の時に流行っていたかな。