ー ジャンクさんの楽曲は、それこそ村上さんの言葉ではありませんが、まさに70年代サウンドを彷彿とさせるような感じで今の時代では珍しいアプローチですよね。その時代の音を聴いてきたリスナーからの反応などはいかがですか?
僕より年代が上の、それこそリアルタイムに70年代、80年代を生きてこられた方々から「こんなの偽物だ」ということを言われることもあります。
ー そうなんですか?
ええ。でも、それは実はすごく危険なことなんですよ。
ー 危険なこと?
僕をこの音楽業界から排斥してしまったら、あなた達の未来はないですよと言いたい!
ー お!大胆発言ですね。
だって、こういうことを誰もやっていないんですもん。自分からこういう音楽に食いついていって、まさにそれをリアルタイムでやっていた人達と一緒にプレイして、遜色ないものをぶつけていくんですから。しかも、何かの流れで人から誘われて、しょうがないからやるかっていう仕事的な感じではない。ありがたいことに僕の歌に共鳴してくれた諸先輩方があつまって、自分たち発信の音作りなわけです。だからそれはちょっと聴いただけでは判断できないんです、本当は。じっくりと音だけで判断して欲しいです。ただ、そういう意味でも僕はやり続けなければいけないと思っています。まぁ、むしろ興味があるからそういってくださるのかなという風に受け取っています。
ー そうは言っても今の時代にもマッチしますし。
そう言っていただけると嬉しいです。だから、是非探究心を持って楽曲を聴いて、楽しんでもらいたいです。つまり好きか嫌い、それだけで判断してくれればいいと思います。逆に表面だけで判断したり、みんながそう言うからとか、こっち寄りの音楽なんだろうなという、変な概念は捨てて欲しい。それは音楽を聴く上で大切なことですしね。
ー 日本人って、ジャンルとかも含め、くくることが好きですからね。
そうなんです!
ー 具体的にはどんな音楽の影響を受けてきましたか?
ブラックミュージックですね。その中でもファンクやソウル、 マーヴィン・ゲイも好きだし、 それを飲み込んで吐き出しているような日本人アーティストも好きです。井上陽水さんや、玉置浩二さん。あとフォークも好きなんですよ。例えば西岡恭蔵さんとか大塚まさじさん…。
ー おー!いいですね。
まぁそういう方々のサウンドは直接的に今の僕の音楽には反映はされていませんが、大好きです。だから80年代よりも70年代の音楽の方が僕の中では色濃いです。
ー それはすごく感じました。でもジャンクさんのリアルタイムな音楽ではないですよね。
ええ。クラスメイトが聴いていたものとはだいぶ違いました(笑)。それを否定するつもりは全くないんですが、僕は音楽を、青春の思い出の産物ということにはしたくなかったので、どうしてもチャートを賑わすものよりも不朽の音楽に心惹かれるんです。勿論、当時聴いていたものを懐かしむ気持ちというのは分かります。ただ、自分はもっと永遠に続く音楽が聴きたかったし、当時は別に音楽をやろうとは思っていませんでしたが、追求していったらいつの間にかやることになって(笑)。
ー なるほど。
確かに聴いてきた音楽は70年代のものが多かったですから、僕自身から発信する音楽も、そういう時代のニオイはすると思うんです。ただ、決して懐古趣味でやっているわけではないですし、古い、新しいという問題ではなく、いいものはいつまでも残るという感覚で自分の音楽にも取り組んでいます。
ー 曲自体はいつ頃から作り始めたんですか?
大学生位からです。それでライブハウスに出るんですが、結構ふざけた奴多くてね(笑)
ー え、ふざけた奴?(笑)
ええ。遊び半分というか。アマチュアとかインディーズの場合は、基本的にはこちらがお金を払ってライブハウスに出るわけですよ。
ー ええ。
それなのに友達同士が集まって、飲み会のついでにやっているような奴らも多かったんです。でも、そういう動機付けで音楽をやってほしくなかったんです、僕は。ましてや、お金払っているんですもん。そこでどれだけ得るものがあるのかは重要じゃないですか。
ー 確かにそうですね。
しかも、例えばそうやってライブハウスで、ある程度のお客さんを呼べたということで酔いしれている人達も多かったんですが、そういう小さい中での満足は嫌だし、脱却したかったんです。
ー 井の中の蛙にはなりたくなかった?
はい。むしろ僕たちはお客さんが殆どいない方だったんですが、その当時対バンで出ていたような人達は今、ほぼ活動すらされていないです。だから多分、続ける意思があるかどうかではなく、どれだけ説得力があってそれについてきてくれる人がいるかどうかだと思うんです。バンドって難しいですよね。
ー ジャンクさんはバンドを解散されて、ソロ活動を選んだわけですよね。
はい。まずは自分の出来ることを追求したかったし、プロにもなりたかった。自分の歌で何か伝えられるものが絶対あると確信していました。
ー 当時はメジャーのレコード会社にデモテープを送ったりしたんですか?
いえ、一切していなかったんです。
ー それは何故?
まだ時期尚早だと思ったんです。きっとその時に送っても、殆ど何の結果も出せていなかったと思います。その位、まだ自分の中に薄っぺらさがあったと考えていたんです。ただ、その中でいい加減何か出したいと思い、インディーズで1枚だして、そこから今に繋がったという感じです。
ー なるほど。6月20日にシングル『あの空の向こうがわへ』でメジャーデビューですが、今迄のお話を伺う限りでは、メジャーデビューといったところで、ジャンクさんに心境の変化は、あまりなさそうですね(笑)
そうなんです!全然ないんです(笑)。やっていることも言っていることも一環しているし、むしろそこがぶれていないから、今メジャーというフィールドでやれることになったんだと思っています。急に、今迄のジャンク フジヤマからするとありえない音楽を始めたり、例えばラップに挑戦したりとか、そういう風に違うことに取り組むことが一切ないのでそこはよかったんじゃないかな。僕らの世代でこういう音楽をやる人って他にあまりいませんからね。でも、そういうことをやっていた先輩方の音楽を聴いている若者というのは、沢山いるんです。商品としても実際残っていて、いつでも買えるわけじゃないですか。それって音楽として存在価値があるということですよね。