ー そうですね。
音楽は本当に星の数ほど存在するわけで、中には記憶には残っても、残念ながら廃盤になって手に入らなくなるものだってある。でも、どんなに古くても存在価値があればずっと求められるわけですよ。僕はそういう音楽を、このメジャーというフィールドでもやりたいです。
ー その、メジャーデビューシングル『あの空の向こうがわへ』ですが、とにかく気持ちいいですよね。
ありがとうございます。サウンド的にもすごく突き抜けている感じがするでしょ!
ー はい!作品としての全体のコンセプトを教えてください。
突き抜けるものを作ろうというコンセプトがありました。 いくつか曲がある中で、この曲がシングル候補になったんです。この曲は坂本竜太さんが作曲をしてくださったんですが、その曲を聴いて、より美しく、羽ばたくイメージで歌詞を作りました。
ー ということは、曲が最初に出来ていたということなんですね。
はい。僕の場合はすべて曲が先です。多分僕の音楽は歌詞で聴かせるというより、まずはメロディでイメージしてもらうタイプだと思うんです。
ー じゃあ、そこから歌詞を描くわけですね。
はい。メロディを聴いて、そこから想像する人物像やシチュエーションを生み出していきます。今回はやはり折角のデビューシングルですから、より間口は広くしたかったんです。だから余計なものは出来るだけ排除して、まず耳にした時に、何のシコりもなく入ってきて、次に聴いた時にはもう「あれ、何か聴いたことのある曲だな」という感じにしたかったです。
ー ちょっと話が反れますが、ジャンクさんが作詞作曲をされる場合は、本名の藤木直史さんで表記されますよね。それは何か理由があるんですか?
これは別にこだわりないです(笑)
ー え、そうだったんですか!?(笑)
まぁ人間本人として作っているので本名で表記したいというのと、折角親からもらった名前なので、どこかで出しておかないとってね(笑)
ー それやたら親孝行じゃないですか!
でしょ(笑)。
ー 今作の話に戻りますが、ジャケットが永井博さん! やってくれましたね(笑)大滝詠一さんの『A LONG VACATION』とかを彷彿とするような。
いいでしょ!これはレコード会社がアイデアを出してくれたんですよ。
ー あ、そうだったんですか?
僕が案出したと思ったでしょ。
ー はい(笑)
こういうジャンルが好きな人間は何もかも仕切るって、よく勘違いされるんですよ。そうじゃないんですよ!巷の方も僕は何でもコンダクトして気難しいとか思ってるんですよ!
ー 私もそう思ってましたもん!
<一同爆笑>
えー!じゃあ、違うということ、ちゃんと伝えてくださいね(笑)。僕はコンダクターではなく、あくまでも演者ですから。それぞれがそれぞれの現場でやるべきことをするというのが僕の考えなんです。まぁそこまで仕切れる立場になったら言うかもしれませんけど(笑)、やはりお互いの現場に土足で踏み入るというのは違いますよね。僕はあくまでもいい音楽を作るということに専念します。
ー 音楽に対して挑発的、攻撃的発言も多いのに、そういう部分はきちんとわきまえてる感じがジャンクさんって面白いですよね。
あははは、そうですか!?
ー ええ。ところでこの曲はやはり抜け感が気持ちよいですね!!
素晴らしいですよね。だからこの曲を聴いたら、どんどん歌詞のイメージが湧いてきました。僕は歌詞を作る時に、ワンパートずつ区切って作るのではなく、メロディの頭から作っていくんです。ただ終着点は何も決めていないです。例えば、途中で「ここで韻を踏んだら面白いかも」とか考えると、そこを中心に考えてしまうから、そこから出られなくなってしまうんですよ。自分に自由度を持たせて間口は広げる方法で書いています。だから僕はライブでよく歌詞を間違えるんですよ。それまで何パターンも考えているから、「あぁ、これじゃなかった!違う違う!」って。
ー そうなんですね。…っていうか、それって単なる言い訳じゃないですか!(笑)
はい、そうです。すみません!(笑)
ー この曲は東芝製のスカイツリーエレベーターのTVCMに起用されていますが、書き下ろしというわけではないんですか?
違うんです。
ー「空」を連想させる曲なので、書き下ろしかと思いました。
東芝の方も曲を聴いて「自分達の為に書き下ろしてくれた曲だと思っています!」と言ってくださいました。
ー イントロレスで、いきなりジャンクさんのあのパワーある声が来るのは気持ちいいです。
あれをライブで再現するのは本当に大変なんですけどね(笑)。コーラスも寸分違わず合わせるってやっぱり難しいじゃないですか。しかも全部を同じ圧というか熱で重ねるって。
ー たしかにそうですよね。ただ、それがバシッと決まった時はやってる方も、聴いてる方も気持ちいいでしょうね。
そうですね。ライブで何度かやってきましたが、今のところはいい感じで出来ています。
ー ジャンク フジヤマさんといえば、サポート陣が凄いですよね。村上ポンタさんをはじめ、坂本竜太さん(b)、岸田容男(きしだよしお/Dr)さん、天野清継さんなど。ジャンクさんからすると、そういう諸先輩方から得ることは多いと思うのですが。
そうですね。例えばメジャーにいくというのはどういうことかという心構えみたいなものを教えていただきました。基本的にはご本人達が看板背負ってデビューするわけではないじゃないですか。ミュージシャンがどういう形で始まり、終わったり続けたりしていくのを見ているわけですよ、彼らは。そういう視点で、ビジネス的なところもそうですし、ポンタさんなんかはそれこそ精神論というか、音楽をやる上での美学を色々と教わりました。多分ポンタさんは、もっと昔であれば声高にそういう美学を叫んできたんでしょうが、今は寡黙に、静かに音で教えるみたいな感じです。