ー オフィシャルサイトにUPされている、CDジャケットの撮影風景の動画を見させていただきましたが、テニスコートで楽器を背負いながら、これから試合が始まろうという雰囲気が面白いですね。
大橋:背負っている楽器も衣装の一部として作ってもらったんです。色々な楽器を二人でやっていますという雰囲気をパッと見で分かってもらうためにそうしたのですが、他にも色々仕掛けがあるので、それはCDを買った時のお楽しみにしてもらえればと思います。
ー 今回この12曲が選ばれて、いざ制作に取りかかる時には、どういうことから取り組むのですか?
常田:まず最初にメモ程度のものですが、インスピレーションだけで書き出したアイデアを元に二人で話し合いました。その上で何曲も同じアプローチが重ならないように気をつけました。スキマスイッチというと、歌とギターとピアノというイメージだと思うのですが、それは本当に吟味して、ここぞという時にのみだけにしました。しかも、出来るだけ最後の方に持っていこうと考えていたんです。最初にそれをやってしまうと、アルバム全体がすごく手狭なものになってしまうので。
ー なるほど。制作ではどの曲が一番苦労しましたか?
常田:どの曲も楽しかったんですが、「雫」はピアノと歌だけなので、すごく神経を使いました。この曲に対しては、「できちゃった」というセッションぽいフレーズでは駄目だと思ったので、きちんと歌を聴きながらフレーズを入れていきました。でも、そういう風に伴奏を作るという方法は今迄やってこなかったので、その部分は大変でした。多分、初めてじゃないかな。今迄だと、双方いい具合に高めていった上で、あらかじめ作っておいたデモを投入するのですが、今回はその部分もすべて二人でやりました。だから、僕が考えていないフレーズも出てくるので、それを譜面に書いたり、また書き直したりの連続でした。
ー「雫」では、セッションぽくない形で制作されたということでしたが、デビューシングルでもある「view」は逆に、冒頭で入っている大橋さんの声やフロアの広さを感じる音、それに一発録りみたいなスタジオ感がいいですね。
大橋:「view」は最後までアレンジ的にフィットするのが見つからなくて悩みました。それで、やはりデビュー曲だし、原点回帰というか、 当時よく出演していた新宿LOFTというライブハウスで 録音しました。昔はピアノとギターと歌だけで色々なライブハウスに飛び込みで出演したりしたんです。
ー 飛び込みで出演ですか!?
大橋:ええ。例えばライブハウス側で出演者に穴が開くこともあるんですが、僕らそういう形態だったので、すぐ動けたんです。最初はバンドを付けないでそうやって二人だけでやっていたので、折角その形式で一発録りするのだから、録音する場所も変えようという話になって。LOFTに、お客さんを入れずにステージで演奏して、その録音した音源も後からMIXするのではなくて、録った時点で、もうMIXまで終わっているという状態にしたら面白いと思ったんです。
ー そうなんですか!!
大橋:LOFTさんにはデビュー前からずっとお世話になっていて、スタッフさんとも久々に会って、すごく懐かしかったです。でも、久しぶりに行って改めて見ると、「LOFTって、こんなに広かったっけ?」って思いました。
ー え、狭かったではなく?
大橋:広かったです!こんなにお客さん入れられていたっけって。
常田:いや、入ってなかった。
大橋:入ってなかったですね(笑)
ー あはは!
常田:だって、お客さん少なくて僕、謝りに行きましたもん!!
ー えー!!
大橋:LOFTって、キャパ300人以上だよね。
常田:詰め込んだら550人以上入るみたい。(LOFT公式キャパ・500〜550)
大橋:それは当時の僕らじゃ無理だ!(笑)
常田:頑張ってお客さんを呼んでも250人位でしたから。
ー でも、250人でも凄いですよね。
常田:だけどそれじゃ採算とれないので、事務所まで謝りに行って土下座しようとして止められました(笑)
ー 土下座って!!常田さんらしい!
<一同爆笑>
ー でも、そういう想い出もある場所での録音は、やはり思うことも多かったのでは?
大橋:それはやはりありました。一番思ったのは、当時そのライブハウスでやっていた頃からこれだけ月日が経った今もなお、同じ場所で演奏出来るということは今迄の積み重ねだったのかなと感慨深いものがあります。 それに、今ならライブの時はステージの横にモニターの音を管理してくれる人と、外にも別のPAさんがいるんですが、ライブハウスだとスタッフさんが一人だけで全部管理するので、その人に「もうちょっとギターの音を上げてください。」とか言っている時点で当時のことを思い出したりもしました。
ー 確かに、そういう部分はダイレクトに懐かしさを感じるかもしれませんね。確かにこの曲だけ、他の音源と音質が変わって聴こえたのはそういうところにあったんですね。
大橋:それと、お客さんはいないのですが客席にもマイクを立てて、その音も含んだライブハウスMIXにしました。お客さんが入ったらまた音も違うんでしょうけど、それでもライブっぽさを追求しました。
ー その案に関してはお二人、それこそ「view」のMVのように殴り合いの喧嘩もなく出来たんですね(笑)。
大橋:あはは!!
常田:それ、やればよかったな!!(笑)
<一同爆笑>
ー 今回、この全12曲を原曲と聴き比べてみたのですが。
大橋:ほんとですか?
常田:それは嬉しいな!!
ー どれも本当に原曲のイメージを壊さず、でも新たな世界を生み出していると思いました。中でも面白かったのは「全力少年」です。かなりゆっくりなアレンジにしていると思っていたら、意外にもピッチはあまり変わっていないんですね。
常田:そうなんですよ。ただ、ライブが早いんだよね。
大橋:そうそう。多分ライブの印象もあるかもしれません。
ー なるほど。確かにライブはもっと早くてアッパーなイメージがあります。でも、同じような速度でも、アレンジや使う楽器、声の抑揚で聴こえ方はかなり変化するものですか?
大橋:変わると思います。実は今回「全力少年」の録音の時、僕の喉が少し疲れ気味だったんです。その日一度トライしてみて、あまり良い形で録れないのなら別の日に再度やろうかという話もあったんですが、いざやってみたらそれはそれでちょっと渋くなるというか。歌って、そういうところがあるんですよ。実は「マリンスノウ」の時もそうだったんです。あえてライブ続きの合間に録ったんですが、そういう喉の方がかえって切なく聴こえるのではないかと思い、それはピッタリハマりました。それもあって今回も、完璧な喉でなかったことが功を奏してというか、原曲より少し落ち着いて曲自体もアダルトな感じになったので、テンポ感も変わって聴こえると思います。