ー 新しい歌詞で一番伝えたかった部分は?
それこそタイトル通りの「どうした日本」という気持ちです。みんな思っているんじゃないかな。どうなってるんだろうとか、どうしちゃったんだろうとかって。でもシリアスになってしまうのは嫌でした。
ー どこか皮肉を笑えるような?
はい。サウンドも含めて最終的に歌詞にはそんなに重みはないけれど、音楽としてすごく楽しめるものにしたかったんです。だからもっと弾けられるように、もっとはっちゃけられるようにということは意識しました。すごい言葉(歌詞)は使っていますけど(笑)。
ー 確かに、ライヴだとシリアスというよりは、本当に盛り上がる曲だからね。
だって日本を相手にする位だから、これはシリアスになっては駄目だ!って思ったんです。そんな、勝てるわけないんだから(笑)。
ー 重くなり過ぎるしね(笑)。
そうそう!重くなってはいけないですから。だから原発とか地震というように、明らかに震災のことを連想させるような言葉はシーンを限定してしまうので、そういう言葉は使っていないけれど、何となくあのことかな?というような書き方が、特に前半では分かると思います。ある意味、日本人らしいと感じる言い回しもありますし。
ー「モンタージュ」の他にも「ブルーブルー」と「リエラ」の2曲が新曲として収録。「ブルーブルー」もメッセージ性も感じつつサウンドの雰囲気も相まって広がりや希望も感じました。
この曲も、言ってしまえば「モンタージュ」の意味合いと少し似ているような歌詞の感覚だけど、捉え方が違うのかな。例えば「蛹-サナギ」と「平々-ヘイヘイ-」のような対比が自分の中にはありました。自分にはやりたいことがあるけれど、どうしようもない。どれだけ叫ぼうが世界は変わらない。だからそこで「モンタージュ」のように、グッと考え込んでしまうのではなく、ある種ちょっと開き直るような感じで空を観ながら「まぁしょうがないか。とりあえず笑っておこうか。笑っていれば何か良いことあるかな。」というイメージ。それで青空のブルーと、でも少し気持ちがブルーという、ふたつのブルーを共存させました。どうあがいても変わらない現状というのは絶対的にあって、それを受け入れなければいけないのであれば、ずっと落ち込んだ状態でいるのではなくて、笑って迎えよう、もう一回イチからやりましょう!という感覚です。
ー そういう感覚は必要だよね。しかもこの曲は結構耳というか頭に残るの!
あ、本当ですか?嬉しい!
ー 前向きな開き直り(笑)。同じく新曲の「リエラ」。とても悲しい歌詞なんだけど、とても暖かくて優しい曲。この曲はどういう想いを抱いて作りましたか?
この曲は今回のアルバムの中で唯一、主人公である自分の他にもう一人、別の人間の存在が目の前にあります。他の曲は生活の中の現実をすごく観ていて、それを歌っていますが、この曲は自分が捉えた現実が、まさに人となりとなって目の前にいるようなイメージです。そこには恋愛をはじめ、そういう感情が全部詰まっているので幸せな曲かというとそうでもない。でもすごく落ち込むかというとそうではない。その現実に対してしっかり誠意を持たないといけないなという気持ちで、いい加減な気持ちだったり無関係でいることは絶対に出来ないという気持ちを表現しました。
ー 単に恋愛での別れを歌っているわけではないと。
はい。勿論そう感じてもらっても良いのですが、僕の中でこの「リエラ」という存在は、自分が置かれている現実そのものというイメージなんです。
ー この“リエラ”という名前はどういう発想で浮かんだの?
“リアル”という言葉から来ているんですが、それが人の名前っぽく聴こえる方が面白いかと思って、「リエラ」にしてみました。
ー ハモンドの音が印象的なのと、suzumokuくんの声も「フォーカス」や「幻灯機」のような穏やかな楽曲よりも、もっとひたすら真っすぐ伸びている気がしたんだけど、そういう部分は意識ましたか?
「リエラ」みたいなタイプの曲は歌うのが実際すごく難しくて、いくつもテイクを録ったんですが無理だなと思って(笑)。
ー あはは!
ピッチが不安定なところがあるんですけど、それはこの曲の描く気持ちの部分で考えるとある意味間違いではないと思ったので、逆にあえてそのテイクを使ったりはしました。まぁ僕の今の力量かもしれないけど(笑)。
ー いやいや(笑)。上手い下手の問題ではなくもっと、心の中に歌の世界がより入ってくるような。
サウンドも、もっと感動的になるように色々な音を重ねようかと考えましたが、この曲はシンプルにした方が良いかと思ったので極力シンプルにしました。「フォーカス」よりもすごくシンプルだし、だけど言葉もしっかり伝わって欲しかったので、歌い方もかなり真面目に挑みました!
ー suzumokuくんの世界って、それこそ「どうした日本」や「真面目な人」のように力強く問題定義するような曲、「フォーカス」のように風景を優しく切り取った曲というように、光と影のような魅力があるけれど、この「リエラ」という曲では更に新しい一面を観た気がしました。
Bメロで出てくる“結んだ唇は”や、“俯いた瞳は”という歌詞は、本当に目の前に人がいるという状況が浮かび易いと思うんです。 先ほど人物像を描いたのはこのアルバムで唯一と言いましたが、 でも改めて考えると今回のアルバムだけではなく、今迄の曲でこれだけ人物像というものが見えてくる曲はこの「リエラ」が初なのかもしれません。
ー 確かに他の曲は、風景や色というのが特に浮かび易いけど、この曲は人物の質感やぬくもり、湿気のようなものさえ感じます。
もしかしたら、友達のアーティスト写真を撮ったのがやはり潜在意識の中にあったのかもしれません。
ー そういう感覚や意識というのは、やはり音楽だろうが絵だろうが写真だろうが、繋がるものだね。
繋がりますね!