2013年11月24日に開催された高橋優初の武道館公演は、チケット即日ソールドアウト。決して歩みを止めることなく音楽に挑戦しつづけてきた高橋が観たのは、熱狂する9,000人の姿。
そして今回、5月28日にニューシングル『太陽と花』をリリース。
タイトル曲“太陽と花”は、TBSドラマ「アリスの棘」の主題歌として書き下ろし。
「復讐劇」を高橋ならではの深く鋭い、しかし決して一方により過ぎないフラットな感性で描いている。
今回は楽曲から紐解く「今の高橋優」について、さまざまな角度から語ってもらいました。
ー 映画『東京難民』の一般完成披露試写以来ですよね。あの大雪の日…。
雪が降っていましたね。登壇した僕のすぐ目の前の席にいらっしゃいましたよね。
ー ええ。
嬉しかったです。映画のイベントなので普段とは少し違う雰囲気だし、若干のアウェイ感というか(笑)。そういう中で知ってる顔があるのは心強かったです。
ー でも、高橋優が登壇した時は大歓声で、主題歌の「旅人」はみんなかなり聴き入っていましたね。
よかったです。
ー 今作『太陽と花』はTBSドラマ「アリスの棘」の主題歌ですね。
はい。今回は復讐劇ですが、僕は復讐が好きではないんです。だから違う面にフォーカスをあてて曲を書こうと思いました。復讐自体は「やられたから、やりかえしてやる。」という単純な構図じゃないですか。
ー ええ。
でも復讐することによって、間違っている行為が正されて悲しむ人が減るかもしれない。それは場合によって直接的だったり遠回しにだったり。「アリスの棘」で主役の上野樹里さん扮する水野 明日美がやっている行為もそう。たとえそれが悪といわれたとしても、回り回って誰かの幸せを作ったり、誰かの悲しみを減らしている人って、この世の中にすごく沢山いる気がしたんです。自分の周りにも沢山いるし。その人間同士の関係性を「太陽」と「花」に例えて書きました。
ー この曲は歌詞、サウンド共に存在感がすごく強いじゃないですか。だから正直言うと、 c/wの“以心伝心”に気持ちが救われたくらいでした。
なるほど(笑)。
ー その“太陽と花”では、「誰もが一人」と歌いつつ「誰も一人きりでは生きてゆけない」とも歌っている。つまり、愛や繋がり、孤独の紙一重の部分を切り取っている気がしたんです。そしたら、本当の愛や繋がりって何だろうって考えてしまって。
愛や繋がり…物理的な観点で言えば、あると思います。
ー 物理的?
化学や物理学の話になりますが、太陽が光ってなければ花も咲かないし、生き物も息衝かない。その観点で言えば、「愛情」と呼ばれるものも同じように存在していると思います。それは親と子の間にも。産み落とされた先がゴミ箱だったら、子どもはどうしたって育たないじゃないですか。やっぱりどんな場所であれ、そこで拾い上げられ、抱きかかえられて、親にどんな欠陥があろうとも、そこに少なからずの愛情があるからこそ、子どもは育つわけで。
ー 無償の愛とはいえ、最近は親子関係での陰惨な事件も多いじゃない。でもそこに希望はあると?
大いにあると思います。無償の愛がないと、この世の中は成立しないと思うんです。ただそれも全部ひっくるめて、自然現象のように受け取ることも出来る。「親が子どもを育てるのは当たり前」、「太陽のお陰で花が咲くなんて、今更言わなくたって当たり前じゃん」って言ってしまえば、それは愛情でも何でもなく、ただの自然の成り行きで片付けられることなんですよね。でもそこをあえて切り取って歌うことが、愛情や人間関係の根本になるんじゃないかと僕は思ったんです。なんだかんだ言っても人は捨てたもんじゃない。どんな人でも何処か良いところはある。それはメディアやネットの中で叩かれている人でも。
ー なるほど。
日本中から叩かれたり揚げ足取られて、あの人が今「THEカッコ悪い」みたいに、みんなで一人を指差して笑うような風潮自体が好きじゃないんです。本当にその本人や周りの出来事などを把握せず、とりあえず誰かが作った原稿を読んだニュースキャスターの言葉だけ信じるというのは、ちょっと雑かなと。まぁ、すぐに物事を信じないというのは、僕の悪いとことでもあると思うんですが(笑)。だからどんな人の話でも訊いてみたら、共感まではいかなくても何かしら「人間」である部分は見えてくるんじゃないかなと考えていますし、そこはずっと期待し続けているんです。人の希望、幸せ、愛情みたいなものは絶対にあるって。だからこそ「それがあるのに、何でこうなるんだう?」という疑問もありますが。