2010年7月21日に1st シングル『素晴らしき日常』でメジャーデビューした高橋優。デビュー5周年の7月22日に、自身初のベストアルバム「高橋優 BEST 2009-2015『笑う約束』」をリリース。収録曲30曲中29曲を高橋が選曲し、残りの1曲はファン投票により、“リーマンズロック”に決定。アルバム楽曲を通して、インディーズ時代も含めて高橋が感じてきた6年間の想い、知り合った人たちとの話などをたっぷり訊いてみました。
ー『笑う約束』というタイトルは、優くんらしいというか、どこか納得出来るところがありましたが、改めてタイトルへの想いについて教えて下さい。
今迄、あまり自分の曲を聴き直すことはなかったんです。でも今回ベスト盤を作ることになり、 改めて自分の曲を聴き直したんです。曲を聴きながら、自分がこの5年間どういうライヴをしてきたんだろうということも思い起こしてみると、「また会って笑おうね!」って言っていることが多かったし、“こどものうた”の中でも、『「生まれて良かった」って笑える日まで』という歌詞がある。いつか笑えたらいいねということや、笑える日まで生き抜いてやるということを歌っている。“明日はきっといい日になる”でも、自分が笑えば、いい日に出来るみたいなことを歌っているし。僕はこの5年間、ずっとそうやって「笑う約束」を取り付けてきている気がしたんです。
ー 楽曲でもライヴでも、確かに「笑う」というのが、高橋優というミュージシャンにとって、ひとつのキーワードになっていた気がします。ライヴでは本当にいつもお客さんが良い笑顔を見せているし。
みんな笑っていますよね。僕自身もみんなに笑わせてもらっている部分が沢山あるし。だからこそ、一番自然な言葉だったのかもしれません。この5年間をまとめて僕は何をやってきたのか。そしてこれからも僕は何をやっていくのか?高橋優の代名詞というか、「高橋優それはつまり何だ?」と問われたならば、色々な人に笑う約束をしてきている人だなと思ったんです。それで今回『笑う約束』というタイトルにしました。
ー 私がインタビューさせてもらうようになったのは『福笑い/現実という名の怪物と戦う者たち』だけど、毎回印象の違いを感じていました。ストイックに感じる時だったり、模索しているように感じる時だったり、デビュー当時とは違うアグレッシブさを感じたり。この6年を振り返って、ミュージシャンとして一番苦しかったこと、楽しかったことは?
楽しいのは今!今が一番楽しいです。苦しかったのは2012年だったと思います。2011年に東日本大震災が起こって、余裕がない中でライヴをしていましたが、2012年になり自分の中では一段落しました。ただ、「さぁこれからどうしていくんだろう?自分は。」と考えた時に、色々な意味で「今のままじゃ駄目だ。」と思ったんです。でも「今のままじゃ駄目なら、どうすれば良いの?」という答えが見つけられないままの時期だったんです。やむを得ず今のままいくしかないって思っていると苦しいし、かと言って答えが見つかっているわけでもないから、それもまたもどかしい。でも心の中では「今のままじゃ駄目だ。」というのは分かっているので、2012年はずっとその葛藤をしていました。
ー ということは、その時期は作品づくりもしんどかった?
しんどかったです。ただ曲自体は出来ていたので、しんどいながらも何かしら作っていたし、まずは出来たものをみんなに聴いてもらいたいということで、2012年の12月に『僕らの平成ロックンロール②』をリリースしました。
ー なるほど。
本当はあの時、シングルをリリースする筈だったんですが、ミニアルバムにさせてもらって。その後、2013年にBRAHMANにも参加してもらったシングル『(Where's)THE SILENT MAJORITY?』をリリースして、その辺りから少しずつ兆しが見えてきたというか、苦しかった時期が終わった感じがしました。
ー その頃だよね?色々な人と沢山会うようになったのは。
人見知りやめようキャンペーンね(笑)。
ー そうそう(笑)。
やれることは沢山あるけれど、まずは自分を壊し続けることだと思ったんです。自分の固定概念や積み重ねてきたもの。そういうものを、自分以外の人間が壊すことは出来ないんですよね。
ー それは分かる気がする。
今はデビュー5年ですが、今後15年、もしかしたら20年と音楽活動を続けていけば、その分年齢も重ねるし、もしかしたら「高橋優さんが築き上げたものは」とか言われる日が来るかもしれない。でも、もしそうなっていたとしても、僕は自分の中で何か新しいキャンペーンをやって「自分はこういう人間だから」みたいなものを、覆し続けたいんです。それをやっていかないと、見ていても面白くない人になっていっちゃう気がして。だって、それまで人見知りだった人間が、急に社交的になったらちょっと面白いじゃないですか。
ー びっくりするね(笑)。
誘っても全然食事に来なかった人が、やたら来るようになったり(笑)。そういう変化を起こすと、こちらもまた全然違った景色を見せてもらえるようになって、出来る曲も変わってきた。自分の世界がすごく広がった気がするんです。だから社交的になるというのが、自分の中でひとつのテーマになっていたけれど、これからも何かしらやっていきたいです。今はまだ気付いていないけど「この部分をもっとこうした方が良いな」という何かが自分の中で生まれたら、やると思うんです。それに対して行動を起こすこと自体に迷いがないから、今は前向きだしすごく楽しいです。
ー「あの頃」ではなく「今」が一番楽しいと言えるのは素晴らしいね。
デビューしてからだけでなく、生きてきた31年間中でも今はかなり楽しい時期だって言えます。
ー いいね。そしてアルバムの話になりますが、今回は音源としては初の新曲3曲も収録。そのうちの1曲、“今を駆け抜けて”は、個人的に大好きです!
そうですか!すごく嬉しい。
ー Aメロの歌い方がリズミカルなのに対して、Bメロは丁寧な抑揚をつけてサビへと爆発させる。それぞれに違う表情があって、サウンドそのものというわけではないけど、今までの優くんの楽曲としても新しい何かを感じました。
弾けていますよね。この曲はライヴをかなり意識して作りました。今迄メッセージに捉われすぎちゃっていて。どういう言葉選びをするかに重点を置いていたし、大切にしていたけど、この曲はどちらかというと「今を駆け抜けてぇぇぇ!」ってライヴでみんなと一緒に歌えたらいいなって思ったんです。その部分がこの曲の全てですね。
ー この曲は、北海道アルバイト情報社「アルキタ」CMソングですよね。youtubeでCMを見ました。優くんが大きく出ている駅ポスターも凄いみたいですね。
そうなんです。(取材時)僕、昨日まで北海道に行っていたんですが、色々なところに貼ってくれていて、超嬉しかったです!
ー 以前、映画館でバイトしていた時に、優くんが掲示ポスターの選択を任されたって言ってたけど、他にアルバイトで覚えている印象的だったことは何かある?
僕、映画館以外でも色々なバイトをしてきたんです。アパレル関係もあったし、ラーメン屋やマクドナルドの厨房で働いたこともあるし。着ぐるみのバイトもしたことあるし。