ー そういう考え方は、優くんらしいしすごく好きだな。
ベストパフォーマンスを1時間の中に詰め込むためには、自分なりの精神的な準備も必要だと思うんです。野球は特にそれが如実に出ちゃうから、サボっていたら絶対に打てない。でも頑張っているのに打てないこともある。映画の中ではその葛藤と戦いながら、一軍から二軍に落とされて泣いている人の姿がありました。だから、例えば「横浜DeNAベイスターズなんて優勝しないよ!」と思っている人たちに、優勝シーンを見せてあげたいと思い描いている。そういう、まだ誰も見たことのない景色を見せるというのは、すごく大変なことだけど、同じくらい充実していることだと思うんです。
ー たしかに、手を抜いていては手に出来ない充実感があると思う。
きっと僕も「まぁこれ位でいいか。」って、手を抜いて歌ったり曲作りをすることは、多分出来ると思うんです。でもそれをやっちゃったら、現状に満足してしまっているというか、それ以上の新しい景色を見ることは出来ない。僕は新しい景色を見たいし、その景色を色々な人たちに見て欲しいし、みんなで一緒に見たいんです。それは満天の星空から新しい星座を見つけるくらい大変なことかもしれないけれど、でもとても素敵なことだしロマンチックなこと。だからチャレンジし続けるしかない。さっきおっしゃられていたみたいに、どこまでも真っすぐにやるしかない!葛藤と戦いながら。横浜DeNAベイスターズの方々の姿を見てすごく感じたので、“未だ見ぬ星座”というタイトルで曲を書こうと思いました。
ー まだ見ぬ景色を見つけるための努力って、すべての人の生き方に通じるよね。
他の人たちからすれば「何もそこまでやらなくても。」っていうことに、真剣に取り組むんですよね。
ー そうそう。
“パイオニア”のMUSIC VIDEO(以後MV)に出演してくれた、登山家の栗城史多さんもまたエベレストに挑戦するって言っていました。 でも、登るだけなら色々な人が挑戦するじゃないですか。
ー ええ。
栗城さんは酸素ボンベを持たずに登頂するそうなんです。上の方は酸素が薄いから酸素ボンベがないと普通の人は登れないらしいんですが、自己呼吸だけで登る姿を若い人に見て欲しいって言うんですよ。
ー すごいなぁ。
すごいですよね!しかも栗城さんはいつも山に、パソコンを持っていってUstreamとかで中継するんです。だからWiFiの設備も持っていかなければいけない。普通なら持って行かなくても良いものを色々と持っていって、みんなでそれを共有する。「どうだ!夢は叶うんだ!」という気持ちを届けたいって。でも他の人からすれば、別に山なんて登らなくてもいいじゃんって話になるじゃないですか。
ー そんな思いまでしてね(笑)。
そう(笑)。でも自分が山に登ることで「絶対に夢は叶う!自分は出来る!」ということを、みんなに見せたいって言うんですよ。若い人たちにはそういう想いが足りなさすぎるって。そういうことを真剣に語るんです。やっぱりああいう人たちを見ていると、自分もそうありたいと思いますね。僕はボールも投げなければ山にも登らないけど、ギターを抱えて歌うことで、誰も見たことのない、誰も聴いたことのない歌を歌いたいし、高橋優には出来ないと言われていることを全部やれるようになりたい。そういう想いはすごく強いです。
ー でも優くんならやっちゃいそうだよね。勿論それは優くんの努力があるからこそなんだけど。
いやいや(笑)。
ー 2011年に、優くん初の全国ライブツアー【〜唄う門にも福来たる2011】@渋谷クアトロのライヴレポートをさせてもらった時、「もうクアトロを満員に出来るほどになったんだ。それどころか全公演SOLD OUTなんてすごいなぁ。」って思ってた。でも今やホールクラスのライヴをこなすまでになってるでしょ。この飛躍はやっぱり凄いよ!
でも、僕に出来るならみんなにも出来ると思うんです。今回のアルバムもそうですが、曲作りで一番気をつけていることは、絶対に上から物を言わないということなんです。僕は決してカリスマみたいなものではない。あくまでも秋田のど田舎に生まれた人間で、努力しないと何も成せないと思っているんです。だから努力をするんだけど、その努力だって特別なメニューや誰かに伝授された知る人ぞ知る的なものではなくて、あくまでも自分で考えたことだし、人がやっていることを真似もするし、誰にでも出来ることなんですよ。やるかやらないかだけであって。
ー そこが大きいよね。
それこそ“未だ見ぬ星座”ではないけれど、時に笑われるし「もう辞めなよ。」って言われる。僕、家族にさえ言われましたもん。インディーズで路上ライヴをしていた頃に「もう歌うな!」って。それを歌い続けて、成し得たわけだから…いや、成し得たっていつか言いたいわけだから、僕に奇跡みたいなものが起こせるんだとしたら、僕以外の誰にでも奇跡は起こせる。自分で行動を起こせば夢は叶う!そう言いたいんです。
ー そういう力が優くんの魅力だね。
ありがとうございます。
ー 東海テレビ制作・フジテレビ系「明日もきっと、おいしいご飯~銀のスプーン~」の主題歌の“おかえり”は、番組プロデューサーからの熱烈オファーがあったようですね。
そうなんです。プロデューサーの方は“素晴らしき日常”がお好きなんですって。
ー そうなんだ。
しかも番組内でのBGMを全て僕の曲にしてくれているし、また良い場面でかかるんですよ!そして “素晴らしき日常”の割合が高いというね。
ー 本当に好きなんだね!
ありがたいですよね。
ー 番組としては、養子やネグレクトなどちょっと暗い要素もあると思うんだけど、楽曲を作る際はどういう部分を一番大切にしましたか?
ドラマ自体は、いわゆる昼ドラという感じで(笑)。昼ドラって、腹違いとかちょっとドロッとしたシチュエーションがあるじゃないですか。
ー あるある。
それよりも僕が共感したのは、このドラマが「帰る場所」の話だということです。自分の母親や父親が誰なのかとか、自分の家族はどこにいるのかとか。それって自分にとっての、帰る場所はどこなのかということだと思ったんです。
ー なるほど。
僕が最近気になっているのが、街を歩いていると小中学校の男の子たちが夜、ベンチに座ってファストフードやコンビニのおにぎりを食べているんですよ。