今回多くの新たな試みに挑んだ新作「しんぱい」。そのタイトルに込められた想いや、YUKI や いきものがかりを手がける湯浅篤氏をアレンジャーに迎えた制作秘話などを伺いました。
ー 今作「しんぱい」というタイトルから 「とんだって」(『ナクナイ』収録)のようなバラード的サウンドを想像していたので、音を聴かせていただいた時にポップチューンで驚きました。
なるほど!そうかもしれませんね。
ー ”大丈夫だよ 心配しないでね” から始まり “ありがとう” で締めくくられる歌詞に込めた想いやシチュエーションを教えていただけますか。
”ありがとう”という感謝の言葉を際立って使っているので、この曲の一番のテーマはそこだと思いきや、実は、”伝えられるうちに伝えなきゃいけない”というところがメインテーマなんです。その ”伝えられるうちに伝えなきゃいけない” ことがあるような状況は何かと考えて、歌詞のストーリーは後に出来たという感じですよ。この曲の中で表すための舞台としてどういうものにしようかなという作り方ですね。
今回は新たなところに向かうというのをベーシックなテーマにして、そういう状況の中、そういう時に感謝の言葉を言えるか?という感覚を思い起こさせる雰囲気にしたかったんです。だから『しんぱい』というタイトルではありますが、”大丈夫だよ 心配しないでね” というのは、伝えるという部分の脇役的装飾に近いです。最終的に伝えるべき相手というのは大切な存在だし、心配するという現象は相手のことを想っていないとしないですよね。自分が意識している人だからこそ心配するんだということに繋がると思うんです。
ー 決してネガティブではないと?
そうです。だから心配することが嫌だとかいうことではなく、そういう人がいるということに幸せを感じられるようになれればいいなという想いを、この曲の中の言葉に込めています。
ー ”しんぱいしないでね 体だけは大きくなったけど” という歌詞で、最初は親へ対しての歌かと思ったんですが、それだけではなくもっと広い感じもうけました。
そうですね。勿論親のような近い相手に対して、どれだけ大切に接していられているかという部分の投げかけもあります。それは勿論自分自身への問いかけも含んでいるんですけどね。
ー この曲はいつ頃出来た曲ですか?
1年位前です。
ー そうだったんですか。何でもあの震災に結びつけてはいけないのですが、震災の影響でリリース自体も遅れたし、作品も変更したということで、この「しんぱい」は、震災を受けてのメッセージかとも思っていたんです。
自分も、自分が前に書いていたものが、世の中の現象によって急に強さを増すというのを今回感じましたし、そういうことが起こることが不思議というかすごいというか、奇妙な感覚です。そういうつもりではなくても、何かが起きたことによって、それに当てはまるというのは、作品を色々出し続ける時点で関係が反応し合ったり影響しあうのは当然なんだとも感じました。今回のシングルは「そんなつもりじゃなかったのに…」ということが、それこそ世の中の出来事によって起こることってあるじゃないですか。結果的に意図しないことが起こってしまうって。この曲は、その解釈や意味深さが自分の予想外に広くなったとしても、エンターテイメントの作品として嫌にならないというところでの安心感があったので、最終的にこれをリリースすることに納得できました。それに昔から自分が書いてきたことが、いつどの状況でも繋がるんだという想いはこれから作品を書いていく中で、「そういうことを感じていて大丈夫だったんだな」と再確認が出来ました。
ー 1年前、この作品を書いた時に”伝えられるうちに伝えなきゃいけない”と思うことが、田村さんの中で何かありましたか?
すごくリアルに何かがあったということではなかったんですが、「もしかしたら、もう会えなくなってしまうかもしれない。」ということがあったのは事実です。やっぱりそういう時って、その人との今迄のこともそうですが、その人以外との関係性や自分の親に対しても考えたりしました。
ー 確かに、いるのが当たり前のような存在の人に、改めてありがとうという言葉を言ったり、想いを伝えるのって、結構照れくさいですよね。
そこなんですよね。当たり前だと思っては駄目だってよく言うじゃないですか。でも自分の中でそれも実はわかりつつも難しくて。そういう恥ずかしいという部分も含めて大事なことって割とシンプルなんだと思います。