ー 歌詞にある「おべんとうがなぜかよぶんにできたので もってって ドアにかけた日も」は真梨恵ちゃんの経験?
実は違うんです。私が東京に来る時によく泊めてもらってる友達がいて、その子と公園に行った時に話してくれたことなんです。でもその時私、アルバムのことで頭がいっぱいだったので、最初は話半分で聞いていたんだけど。
ー ひどいな!(笑)
アハハ。ですよね(笑)。でも実はそれがすごく良い話で!だから自分の中でも印象に残っていたんです。それで、話を聞いてる時に、五時のチャイムが鳴ったんですが、私、子どもの頃ぶりくらいに五時のチャイムを聞いたので「あぁ、都会でも鳴るんだ。」って思って、曲にもその情景や懐かしさみたいな感情を入れたいと考えたんです。
ー でもそのお友達、乙女だよね。だって、きっとわざわざ作ったのに、お弁当が余分に出来ちゃったという言い方をするなんて。
乙女、乙女!!私にはない…。お弁当が余分には出来ない(笑)。
ー アハハ!正直でいいね。でもこの曲は他の曲からしても、かなりサウンドがシンプルですよね。
今回は、かなり言いたいことを言っているアルバムになったので、一曲くらい何も言いたいことを言わずに、良い感じの雰囲気の曲を作りたいと思って。もちろん全体的に素敵な作品にしたいとは思っていたんですけど、その中でも情景が浮かぶような、何も言わず、語るような曲にしたかった。だからメロディ推しで歌詞もなるべく削ぎ落しました。
ー 何も言わず、語るというのは素敵。個人的にも真梨恵ちゃんの描く風景描写の作品って好きなんですよ。今後もっと聴きたいと思っているし。
ありがとうございます!私自身も、そういう曲は自分の作品の中でも好きなんです。
ー それと、ライヴでも聴かせていただきましたが“a girl”は、初音源ですか?
弾き語りヴァージョンをライヴ会場限定のCDに入れたことはありましたが、こういう形できちんと音源にしたのは初です。
ー この曲は個人的にも音源待望でした!
ありがとうございます。お待たせしました!「a girl」という言葉を思いついたのが大分前で、最初のデモが出来たのが2011年。「たった一人の女の子」という意味なんですが、「独りぼっちの淋しい女の子」という意味もあれば、「たった一人しかいない尊い女の子」、この両方の意味を持っている言葉だと思っていて。これは確か、ビレバン(ヴィレッジヴァンガード)で買い物をしている時にふと思いついて。
ー そうなんだ(笑)。エリザベス女王が出て来る発想がとても興味深いです。
中学校二年生くらいの時に観たベルばら(「ベルサイユのばら」)の中に、貴族の女の子が自殺してしまうお話があって、それがずっと頭の片隅に残っていたんです。身分の高い女の子が死ぬことも、鳥が一羽死ぬことも、ひとつの命が消えたことには変わりないけど、それを受けての状況って全然違うじゃないですか。
ー 確かにそうですよね。
だから「一人」というものや「ひとつの命」ということの両面からの見解を書きたかったんです。
ー 今作で言えば“プリーズプリーズ”もそうですが、この“a girl”は三拍子ですよね。真梨恵ちゃんの楽曲って他にも三拍子が多い気がするんだけど。
好きなんです、三拍子。だからたまにやりたくなっちゃう。あまり三拍子を使わないようにはしているんですけど。
ー それは何故?
好き過ぎて(笑)。
ー なるほどね(笑)。あとコード使いも面白いですよね。例えば、“支配者”でも、ヴォーカルラインに対して、変わったコードを入れこんだり。
変わったコードを使うことが多いです。というか、コード進行とメロディラインはめっちゃこだわるんです。メロディに関しては、胸がキュッとなるようなものが好きなんですが、それこそどんなアレンジになっても問題ないように、骨組みの部分は自分のこだわりを100%出し切ろうと思っています。
ー これだけ今の曲と昔の曲が混在していると、曲順を決めるのは難しかったのでは?
自己満足的なんですが、今回は今迄よりも全曲通して何回も聴けるアルバムになったなと思ってるんです。曲順を決める時も、自分ひとりで、最初から何度も何度も聴き直しては少し並べ替えて、再び聴き直すという作業を繰り返すんですけど、それが苦なく出来たので、案外早く決めることは出来ました。
ー “ペースト”は、踏切の音など効果音の要素が印象的で、サビの展開がすごくドラマチック。映画やドラマの主題歌になりそう。
嬉しい!
ー コーラスもすごく繊細な入り方していますよね。
コーラスワークはかなりしっかりやりました。この曲は十代の頃に書いてから、しばらく寝かせておいた曲なんです。録音も進めていたんですが、収録に至らず、多分ライヴでもやっていなかったんじゃないかな。この曲の歌詞に「桜は吹雪と見間違って」という部分があるんですが、今回のアルバムの中でも物ごとの移り変わりというものを表現したかったので、時間が経って決心が変わってしまっていることを歌ったこの曲は合うと思って、収録を決めました。