ー「ペースト状の私たち」という表現が不思議というか面白かったです。
電車に乗っている時とかって、みんな「無」になっているからペースト状になっているみたいじゃないですか?(笑)。
ー うーん、ペースト状ねぇ…。
パスタを作る時に、器具に入れた生地がベーッて延ばされるじゃないですか。ああいうイメージ(笑)。でも電車を降りて一歩外に出れば、みんなそれぞれの役割がある。
ー あぁ、きちんと分離するというか個に戻るというか。
そう。
ー なるほど。
でも何で満員電車ってあんなにお腹が痛くなるんでしょうね。なりません?
ー いや、ならないなぁ。それこそ無になって…というか、ぼーっとペースト状になっているかも(笑)。
そう!そういう時こそペースト状にならないと腹痛から解放されないので、無になっています。
ー え、OPP芸人(芸人ではないが)?
そうです。私は「アメトーーク!」の、あのコーナーにお呼ばれしていいタイプです(笑)。
<一同爆笑>
ー “泣いてない”ですが最初、何でこの曲は一切漢字が使われていないのかなと思ったんだけど、歌詞カードをよくよく読んでみると分かりました。面白いね!多くは語れないし語らないけど、是非CDを買って歌詞カードを読んで欲しい!
ありがとうございます!ただ、この歌詞って結構怖いんです。例えば「つちにかえるころにきみをつかんで」とか。
ー「ちとちがまざり」とか。
そう!漢字で書くとあまりにもエグいというか強烈。でも色々な意味で是非読んで欲しいです。
ー “hanamoge”もそうですが、タイトルで「ん?何だろう?」って思わせる作品が、“カルカテレパシー”でした。
カルカというのは、鉄砲の火薬を押し込める道具のことなんです。言葉の響きで選んだところもあるんですが、全然自分が知らない国の知らない人とも、どこかで魂の連鎖みたいなものが繋がっているということを書きたかったんです。
ー リズムやサウンドに80年代のテイストを感じたんだけど。
嬉しい。そこは意識しました。私、AKB48の“恋するフォーチュンクッキー”が大好きで、あの位オールドな雰囲気で曲を書きたいと思ったんです。だからこの曲は私にとってのフォーチュンクッキーソングです。
ー おぉ!
オールドという意味ではギターの音も意識しました。この曲は友だちの渡邊剣太くん(フリクションラブ)にギターをお願いしたんですが、彼は良い意味で古臭いギターを弾く人なので、この曲にはピッタリだと思ったんです。アルバム全体そうなんですが、老若男女が聴けて、いつの時代も変わらず、あえて今っぽいアプローチをせずに作りました。どんな年代の人が口ずさんでも違和感がない曲にしたかったし、時代を問わずに聴いて欲しいです。
ー “さよならのかわりに記憶を消した”について、歌詞の想いを教えて下さい。
この曲は18歳の頃に作った曲で、映画の曲なんです。
ー 映画?テーマ曲か何か?
いえ。大好きな映画があって、私が17歳の頃に初めて観たんですが、それから今に至るまでずっと不動の一位。本当に好き過ぎちゃって、その映画の主題歌を作る気持ちで書いた曲なんです。
ー そうなんだ!じゃあその映画を観てから、この歌詞を読むと納得できる部分が多いと。
ワード的には、自分が辛い別れを経験したとしたらという気持ちで書いてはいる曲ですが、内容は映画そのものです。
ー 以前インタビューしたCzecho No Republicも、アルバムでこの映画のエンディングテーマをイメージした曲を作っていましたよ。
え!?もう名作過ぎて恥ずかしいんだけど、好きすぎてみんなこの映画で曲を作らないで欲しいって思ってしまう!(笑)
<一同爆笑>
ー 私は、まだこの映画を観ていないから観てみます。今回の歌詞で「君を飼ったコップ」の部分がどうしても意味が分からなくて。
確かにその部分は特にこの映画を観た人じゃないと分からないかも。
ー「これは金魚の話?」とか思っちゃったもん。
アハハ!金魚ね。でもこの曲は映画を観ていないと、トータルの歌詞で繋がらない部分はあるけど、友だちや家族、愛する人など、大切な人を失くしたことがある人にはぐっとくる曲だと思いました。辛い別れを経験した殆どの人が持つ同じ感情があると思うし、私が映画に響いたように、色々な人に響いたら嬉しいです。
ー 最後に、mFound読者のみなさんへ一言お願いします。
これはライヴでもよく言うのですが、色々な人にそれぞれの毎日があるけれど、思いがけないところで繋がっていたもする。それぞれみんな違う人だけど、みんなが心の中に持っている懐かしい子ども時代の想い出や、夢、そういうものを日常の中で思い出して欲しいし、本当に大切に思えるものを常に持ち続けて欲しいです。そうやって毎日が素敵な日々になったら良いと思い作ったアルバムです。是非一度聴いて下さい。よろしくお願いいたします!
ー ありがとうございました!
取材・文/秋山昌未
■ 植田真梨恵 オフィシャルサイト
http://uedamarie.com/