音楽をクリエイトする場はライヴハウスだけではない。CDだけではない。様々なクリエイターとコラボする中で音楽を生み出すという形でそれを体現しているのが2010年に結成した音楽ユニットUQiYO。例えば1枚の音源を大切な人から大切な人に渡し続けてもらうという「浮遊するCDプロジェクト」。これはCDを受け取った人が記念写真を撮り、ハッシュタグ付きでTwitterでつぶやいてもらうというもの。3月18日にリリースの『TWiLiGHT』は、そんなプロジェクトで生まれた楽曲を多く収録。楽曲のイメージや、クリエイターとコラボレーションする理由などを伺いました。
ー 実は去年12月にco-lab西麻布で開催されたUQiYOさんのライヴイベントを観に行かせていただいていたんです。
Phantao:えー!そうだったんですか!?
Yuqi:ありがとうございます!
ー 水槽に入れたセロファンを揺らしてスクリーンに映し出すVJや、その場で音を組み立てて行く行程を観ることが出来たのが面白かったです。
Yuqi:オケに頼らずにライヴをすることが、僕らのこだわりなんです。オケに頼るということは、オケに振り回されちゃうということだから。だから、自分たちがその場で作ったライヴならではの音を大切にしています。
Phantao:沢山失敗もしてきましたけど(笑)。
ー ああいうコラボスペースや映画館、コワーキングスペース、ライブラリーなどでライヴすることも多いようですが、そういう場所を選ぶ理由は?
Yuqi:今回アルバムに収録した内容も殆どがそうなんですが、UQiYOの曲はクリエイターの方々とコラボレーションする中で色々な映像作品を作ったり物を作ったりするプロジェクトなんです。僕ら自身、そういう形で音楽活動をしたいので、多くのクリエイターの人たちと知り合いたいんです。それで「そういう人たちが集まる場所ってどこだろう?」と考えた時、コワーキングスペースやシェアオフィスが思い浮かんだんです。ああいう場ならクリエイターの卵が沢山いるんじゃないかと。しかもそういう空間でライヴをすると、色々な人と知り合えるということもありますが、ライヴ自体も楽しいじゃないですか。
ー ええ。
Yuqi:そういうところからライヴハウス以外でのライヴを始めました。ライブラリーの場合も、公共の図書館というよりは、コワーキングスペースのライブラリーなんです。
Phantao:渋谷にある「co-ba」というコワーキングスペースのライブラリースペースでライヴをやらせていただいたんですが、一昨年くらいからコワーキングツアーをしようという話があがり、色々なところでライヴをしました。でもやはりスペースの広さや音出しの問題など、オフィススペースならではの難しさもありました。
ー 沢山のクリエイターの人たちと知り合いたいとおっしゃられていましたが、どういう理由で繋がりを持ちたかったんですか?
Yuqi:僕ら音楽をやる人間…それはこれから音楽の世界を目指す人も、目下活動中の人も含めてですが、未来が明るく見える時代じゃないじゃないですか。でも、ロックスターになってCDを何百万枚売って幸せになるという目標で音楽に向き合おうとすると、おそらく100%に近い確立で不幸になる気がしていて(笑)。だから、ちょっと違う方法で音楽をやる人間が幸せになれるモデルってあるんじゃないかなと考えたんです。今迄は音楽が沢山のお金を生んでいた。クリエイターの人にお金を払ってPVやジャケットデザイン、その他を制作していた。でもそうではなくて、音楽自体がひとつの「場」になるというか。ゲームで言うと、プレステが音楽でそこにささるゲームソフトがクリエイターの人たちだったり、その人たちが作る映像だったり。音楽はそういう「場」になりえるんじゃないかと思ったんです。僕らは何のコネクションもないし、父親が有名ロックミュージシャンでもない。そういう中でデモテープをレコード会社やレーベルに送っても、日々沢山送られてくる中に埋もれてしまうのではないかと考えたんです。だから様々なクリエイターや映画監督などに手当たり次第に送ってみました。その中で2、3人から「面白いですね。今度何か絡めることがあったらやりましょう」という返事が来たんです。勿論返事が来たことはすごく嬉しかったんですが、そうはいっても何も起こらないんだろうと思ってもいたんです(笑)。でもそこから一緒にPVを作ることになって。
ー "At the Starcamp"ですね!
Phantao:そうです!
Yuqi:あれも僕らがゲリラ的にデモテープを送ったら、TWOTONEの方からご連絡があって、そこから一緒にやろうということであんな素晴らしい作品を作ってくださったんです。「いいんですか!?僕たち何にもお返し出来ませんが」って思いましたよ(笑)。だってスタジオに行ったらすごい人数居てクレーンもあったから。
Phantao:そうそう。びっくりした(笑)。
Yuqi:でもアクションしてみると何かが起こるですよね。そういう中で、僕らの音楽がクリエイターの人たちからTwitterとかで、「いいね」と言われることが多くなってきて、僕らの音楽とクリエイターの人たちは相性が良いんじゃないかと感じ始めたんです。だからクリエイターの方々とコラボすることで、一緒に作ってくれるみなさんにとって何かの価値があるのなら、そういう形もありなんじゃないかと思ったんです。そこにお金は生まれないかもしれないけれど、一緒に作るということはそこで出来上がったコンテンツに価値があるのかなと。そこでお互いが少しでも生活出来るようになって、面白いものを作ったり考えたりしていけばそれはそれで幸せな人生になるんじゃないかと今は思っています。