ー ドラムが詞を書くのは、バンドでは珍しいですよね?
河邉:そうですね(笑)
奥野:高校生の頃は河邉だけじゃなくて、僕も杉本もそれぞれ歌詞を書いていたんですが、自然に河邉が歌詞を担当するようになってきて。多分、性に合っているんでしょうし、それがWEAVERのカラーを作っている要素のひとつになっていることは間違いないと思います。
ー じゃあ、これからも歌詞は河邉くんが担当で…。
杉本:そんなことないですよ(笑)
奥野:お!(笑)
杉本:今迄は良い意味で役割分担が出来ていましたし、河邉は言葉で世界を作ったり会話するのがすごく好きだし、歌詞でもそういう世界を作るのが本当に得意だと思います。それに対して、僕と奥野は音楽、音を作っていくのが大好きでここまでやってきたんですが、今回ひとつのテーマとして自分達の中にあるものをさらけ出したことで一皮剥けたと思うので、これからどんどん壁をぶち破っていかなければいけない気がするんです。そういう時に新しいことをやっていくというのはとても大切なことで、それは例えば僕や奥野が歌詞を書くことであったり、河邉が曲を作ることであったり。それはひとつの要素だと思うので、これからどんどん挑戦していきたいと思っています。
ー 目映いスポットを浴びながらも孤独を感じることを歌った「アーティスト」は、WAVERの活動を経て出て来た歌詞なのでしょうか?
河邉:デビュー後3人で活動していく中で、大きなステージも経験させてもらったし、WEAVERを観に来てくれた人だけの前での演奏も経験させてもらいました。僕らは音楽が好きだし、ファンの皆さんの温かい声援に包まれているというのは本当にありがたいことです。でも、そういうのもいつかなくなってしまうんだろうなと考えることがあって、全てを失ってしまう感覚を歌に出来ないかなと思い、作りました。どんなに「凄いね!」って言ってもらっても、何かのきっかけでそれはなくなってしまうかもしれない。例えば僕らが病気や怪我で活動が出来なくなったとしたら、僕らの音楽を聴きに来てくれていた人も離れてしまう。そういう孤独感を歌詞に込めました。
奥野:「アーティスト」や「偽善者の声」のようなテーマって、今迄ならオブラートに包んでいた、人間の汚い部分や毒気だと思うんです。それを今回のアルバムの歌詞では出せているし、各曲に対しての歌詞を見て「あぁ、僕らはこういうことを歌いたいんやな。」って自分が思えると、盛り上がるというか。僕は孤独ということをいつも考えているわけではないけれど、でもやっぱり自分の気持ちを代弁してくれている気持ちにはなれますね。
杉本:特にサビはもっとシンプルで感情的な言葉の方が良いのかなという想いもありました。でも河邉がすごくドラマチックな歌詞を乗せてくれて、最初はきちんとその言葉を歌えるか心配もあったんですが、歌っていくとどんどん馴染んできました。
ー 今、話にも出た「偽善者の声」は昨年8月に配信限定リリースした楽曲ですが、MVを観させていただきました。全体的にアグレッシブですよね。
メンバー:ありがとうございます!
ー ピアノもクラシカルで美しいというより、ベースとの音の絡みがまさにバンドらしいですし、ファンからもWEAVERの新しい面が出た曲だと絶賛の声を多く耳にしました。先ほどからよく話に出ていた3月〜5月までの2ヶ月にも及ぶツアー<Piano Trio Philosophy ~do YOU ride on No.66?~>での経験は自分達にとって、こういう新しい面を見せる力になりましたか?
杉本:間違いなく、力になりました。新しい面を模索する上で大きな意味を持つライブでしたし、ピアノロックとは何だろうと見つめ直したのも大きかった。その中で観に来てくれる人に、歌だけでなくて音の部分もしっかり届けたいと思う中で、インスト的なセッションもやって、それが自分達の中でもすごく手応えがあったんです。今回のアルバムでもそういう要素は生かしていきたいと思いましたし、この曲が持っているようなアグレッシブな部分をセットリストでも意識して作っていました。
ー「The sun and clouds」はストリングスなども入ってアレンジがダイナミックですが、このアレンジイメージは最初から抱いていましたか?
杉本:このアルバムの中で一番最後に形が出来た曲ですが、言ってしまえばすごく王道だしメロディが伝わる曲だと思うんです。でも、『Handmade』を作り始めた当初の気持ちとしては、どこか今迄のWEAVERと一緒だし、なかなかこの曲のキャラクターのというか、立ち位置をきちんと持たせることが出来るか不安でした。だから前半はこういう曲を作れなくて。
ー その気持ちを切り替えるきっかけは?
杉本:「Shall we dance」や「風の船 ~Bug's ship~」「Reach out」などで色々挑戦したことです。自分達でそういうことが出来るという自信がついたからこそ最終的に「The sun and clouds」のキャラクターもちゃんと見いだすことが出来てきたんです。自分達の好きなのは、聴いていて感動できるメロディや歌詞のある曲なので、やっぱりこういう曲が作りたいなと自分から気持ちを持っていけたのがこの曲に関しては大きかったです。
ー 確かに王道なメロディではあるけれど、聴いた時に何かしらのフックを感じられるというはリズムやアレンジに工夫があるからでしょうか。
杉本:あとはストリングスも大きいですね。このアルバムでは、一音一音意味を持たせることの大切さに気づかされました。だからこの「The sun and clouds」も、ただメロディを聴かすだけではなく、それを彩るストリングスやピアノも、もう一度自分で構築していって、ちゃんと全てに意味を持たせることが出来たからこそ、音の強さが出たんじゃないかなと思います。
ー 曲や歌詞に関して、お互いかなり意見をぶつけ合ったりはしますか?
杉本:今回は特にしました!
河邉:お互い考えていることも違えば、曲に対しての想いも違う。例えば奥野が作った曲に僕が歌詞を書く。僕と奥野はそれでいいと思っても、実際に歌う杉本が納得いかない場合もありますし。そこは今回とても大変だったけど練りました。
ー これぞ渾身の1枚ですね!
河邉:胸を張って聴いてもらえるアルバムが出来たと思います!今迄も色々な人の力を借りてやってきたけれど、でも自分達でひとつのものを作らないと胸は張れないし周りの人達にも信頼されないと思うんです。そういうものが今回ひとつ出来たんじゃないかと。だからこのアルバムを早くみんなに聴いてもらいたいし、自分がもし「WEAVERのアルバムを何か1枚聴かせて」って友達に言われたらこのアルバムを聴かせると思います。
杉本:春のライブハウスツアーを3人でやりきった上での自信というのはすごく大きかったですし、今回のアルバムでもセルフプロデュースでも、色々悩んだり言い合いながらも最後までちゃんと自分達で責任を持って形に出来たことが、自分達の次のステップへの自信にもなったと思います。今迄はどこか不安を背負いながら進んでた部分があって。今も勿論不安はあるんですが、でもこの作品に対しては今の自分達の100%を詰め込めたという自信が今迄以上にあるので、河邉同様「今、一番聴かせたいアルバム」は、この『Handmade』だし、今のWEAVERを象徴するアルバムになりました。
奥野:出来上がったアルバムを聴いて、改めて「WEAVERっていいバンドやん!」って自分で思えるようなものが仕上がりました。そういうことを自分達で言えてなんぼというか。そういうことを思えるようなアルバムに仕上げることが出来たということが一番嬉しいです。