ー 歌とともに、ギターもゆずの個性のひとつとなっています。
岩沢:ギターももちろん大事な楽器だし、大事な音のひとつではありますね。譜面に起こして、同じに弾くことは出来ると思うんですが、それだけじゃない部分がある。歌を歌うようにギターを弾くというか、ゆずの歌を生かす弾き方というか。ゆずよりも上手いプレイヤーはたくさんいますけど、ゆずの歌を深く理解しているからこそのプレイというのがまた別の次元としてある。音色にしてもカッティングにしても、ゆずがこの歌でやるなら、こういうのが合うなっていう独自の感覚があるんですよ。その曲に合わせた上で、さらに自分の好きな音だったら最高にいいなって。そういうところにもより気を使うようになってきましたね。
北川:結局、時間なんだと思います。音楽に費やしてる時間が10周年までと全然違いますから。10周年まではもうちょっと俗にいうミュージシャンらしいミュージシャンだった気がする(笑)3か月ツアーをやって、オフが2か月ぐらいあって、そろそろやるかって始まって、3か月ぐらい集中してアルバム作って、3か月ぐらいツアーに回るというシンプルなサイクルだった。でも自分たちで自分たちをプロデュースするようになってからは、ずっと繋がっているし、ひとつひとつのことをより丁寧にやるようになった気がします。
ー より音楽を作る責任感、使命感が強くなっているということでもあるのでは?
北川:よりゆずを信じてる感じはありますよね。ゆずならもっといいものを作れるはずだろう、もっと人のやっていないことが出来るだろうって。
ー 聴く人に対する意識として、変わってきたことはあります?
北川:そこは路上をやってた時からあまり変わらないのかなって思いますね。自分達の歌って、聴いてくれる人の中で生きて初めて完成という感覚があるんです。その根本的な所は変わっていない。より色濃くなったということなんじゃないかな。それとそこで大事になってくるのが時代性なんじゃないかなって思うようになってきた。自分が伝えたい想いは変わってないけれど、時代の移り変わりに伴って、サウンドは刻一刻と変化していくものだろうなって。そこを無視していた時期があって、自分はこういう感じでいいんだって思ってたんだけど、10周年を越えたあたりから、色んな人にゆずの音楽を聴いてもらいたいという思いが強くなってきて、時代はどういう方向に進んでいるんだろう、カルチャーはどう動いてるんだろう、世界はどうなってるんだろうってことを考えるようにはなってきました。
ー 東日本大震災が起こって、「ゆずの音楽が支えになりました」というリスナーの声も耳に届いたと思います。ゆずの音楽の果たしている役割の大きさをより自覚するようにな ったという部分はありますか?
北川:「栄光の架橋」や「Hey和」で救われましたって言ってもらったりしたんですが、そういう思いがさらに自分の背中を押してくれるっていうか。純粋に音楽に触れることが自分の喜びでもあるんだけど、自分たちの音楽を楽しみにしてくれてる人達の思いが自分を駆り立てるところはありますね。以前よりもリスナーの人と向き合えている気はします。いいものを作れば、届くと信じているので、いいものをという気持ちはより強くなっていますね。
岩沢:聴き手がいないことには僕らの音楽は成り立たないので、いてくれてありがとうっていうか。“楽しいライブをやれて、楽しい”ということも、元はと言えば、来てくれた人が喜んでくれてなんぼなんだなって実感してますね。震災以降、色々な場所で歌う機会が増えたんですが、歌わなきゃという使命感みたいなものの裏側には聴いてくれる人の存在があるわけで。「聴かせてくれ」っていう人がいるからこそ、「じゃあ歌わせてくれ」っていうことになって、ライブが成立する。去年はそんなことを教わった気がします。
ー ベストアルバム『YUZU YOU[2006-2011]』基本的にはシングル曲で構成されていますが、今回収録されていない曲もあります。また新録で「栄光の架橋」と「T.W.L」も収録されています。選曲、曲順の基準は?
北川:雰囲気を重視したというか。どの曲も大事だし、意義深いので、正直かなり悩んだんですよ。1曲1曲が明確なテーマを持っているんですけど、作品として気持ち良く聴いてもらえるものがいいなって。「栄光の架橋」が入ったことに関しては、2004年の作品なんですが、何かあるたびにそばにいる曲、人の中で生きているという印象のある曲だし、震災が起こったことで、また違う形に生まれ変わった気がしていたので、バージョンを変えて入れさせてもらいました。「 T.W.L」はおまけです。聴く人が手にとった時にワクワクしてほしかったので、新鮮さのスパイスとして入れました。15年という区切りの先を見据えて活動しているので、今回入らなかった曲に関しては、次のアルバムの中で生きてくるんじゃないでしょうか。
ー 岩沢さんは曲が並んでみて、どう思いましたか?
岩沢:時期的にもこの5年間で制作したものが多いんですよ。ついこの間、レコーディングしていたよなっていう印象の曲がたくさんあって、新鮮な感じがします。最近の曲でもベスト盤を作れるぐらいの曲数あるんだということが驚きという。
ー サウンドの幅も広くて、多彩ですよね。
北川:どれも色がすごくあって、改めて見てみると、おもしろいですね。新たなゆずスタンダードがいっぱい入って良かったなと思います。
岩沢:テレビに出始めた頃からの選曲なんですよ。曲名を見てみると、ほとんどテレビで歌ったなって。そういう意味では、華やかな世界を経験した新曲達です ね(笑)。
ー テレビで歌うのは、路上で歌うのとちょっと近いところがあるかもしれないですよね。たまたま、そこで出会った人が聴くという点では。
岩沢:そうですね。耳にして、お好きだと思ったら、立ち止まるというのに似ていますね。リモコン回されちゃったら、終わりですし。
北川:僕らはデビューして10年ぐらいはテレビにほとんど出なかったんですよ。というのはテレビで僕らの曲の良さを伝えるのは難しいことだと思っていたから 。どうやったら、ちゃんと伝わるのか、わからなかったんですよ。でも10周年くらいから腹を括れたというか。もっと多くの人に聴いてもらうにはどうしたらいいんだろうって突き詰めていく中で、テレビでもちゃんと伝えていくやり方を見つけていきたいと思ったんですよ。
ー 新録の2曲についてもうかがいたいのですが、「栄光の架橋」は中国国立交響楽団との共演が実現してます。どうして中国のオーケストラだったのですか?
北川:今回、マエストロをしてくれた方とはとあるイベントで知り合って、「栄光の架橋」をオーケストラアレンジしていただいたんですが、それが素晴らしくて、お願いしたという流れがあって。その方から「今、中国のオーケストラが熱い!」と勧められて、やらせていただきました。