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ライトが紺碧の粒を会場に降らし、アコースティックギターの音色をバックに、黒の上下の衣装で秦 基博が登場。 2006年、シングル『シンクロ』でデビューしたシンガーソングライター秦 基博の 5th Anniversary LIVE「 HATA MOTOHIRO -LIVE AT BUDOKAN-」が11月5日(土)日本武道館で開催され、福岡・大阪、そしてこの日本武道館もチケッ トは即日完売というからすごい。そしてこのツアー、前半はアコースティックセッション、後半はバンドスタイルと2部構成に別れていて、どちらの面も秦の魅力を十二分に楽ませてくれるステージとなった。 秦は椅子に腰掛け挨拶すると、ふぅっと息を吸い “青い蝶” でライヴはスタート。早朝の空気にも似たような澱みのない秦の声が一気に武道館を秦色に染めあげる。 「5周年ライヴということで…非常にラフな格好でやってまいりました」 相変わらず淡々とした口調で笑いをとると会場から「ネクタイ似合う!」の声。チューニングをしながら「そうでしょうね」と、また淡々と言い会場が爆笑すると、「へへっ」と笑ってみせる。そんな姿が愛らしく映った。 私が全音楽の中でもベスト5に入るほど好きな “ dot” では、今、目の前に広がる現実の景色さえ消し去ろうとしていた。 「デビューして、色々変わりました。一番は見た目が…大人になったというか。もうちょっと可愛かったんですが」の発言に会場大爆笑。しかしその後「ずっとチャレンジし続けたい」と少し真面目にこの5年での変化を語った。「その中で、どうしても譲れないものや変えたいけど変えられない部分があるような気がします。」と続ける秦は自らの原風景だと語る “アゼリアと放課後” を歌い、続いてこの日初めてのアップテンポな “ 最悪の日々”では会場の手拍子が踊った。 バンドが退場し、秦が “アイ” のイントロを奏で始めると拍手が沸き起こり、このメロディの美しさにため息が漏れる。まるでバースデイケーキのろうそくみたいな淡い光が円となって秦を包み込む。もし琴線というのがギターの弦のようなものならば、オーディエンスひとりひとりの胸の中で、なお秦の美しいメロディを共鳴させているようにさえ感じる。 13歳から曲を作り始めた秦はさまざまな表現をみんなに届けられて嬉しいと語り、「あくまでもひとつの完成型がレコーディングだけど、演者やライヴによって表情が違い、それを楽しんでもらえるのが、アコースティックの醍醐味」と、つなげた。 ここでアコースティックセッションは終了。15分の休憩を挟み、秦の世界はバンドスタイルへと色を変える。 休憩時間が終わるとバンドメンバーが登場。ダンサブルなSEにリズムをとるメンバー。先ほどのアコースティックセッションより武道館の鼓動が少し早くなっているのがわかる。 再び登場したTシャツ姿の秦が「ぶどうかーん!」と叫ぶと客席は一気に総立ちとなり、”今日もきっと” のリズムに武道館が揺れた。 「2年ぶりの武道館は、やっぱりいいね。楽しい!みんなも楽しんでください」 秦の笑顔が弾むと、 “色彩” の疾走感にオーディエンスの手拍子も弾み、続く ”赤が沈む” ではダークに切り取ったリズムに揺れる秦の身体が赤く照らし出された。秦のブルースハープはキーボードの音色と絡み合い、その世界観をよりエッジーに映し出す。 「みなさん、のど飴好きですか?のど飴なめていますか?」 秦がそういうと会場からも笑顔がこぼれ、カンロ「健康のど飴」のTVCMに書き下ろした新曲「トラノコ」を披露。最近の秦作品らしいシンプルなメロにストレートな想いを綴っている。直に触れあって感じられることの大切さ・楽しさを改めて見つめながら書いたというこの曲は、まさにこの瞬間、武道館という空間の中で直にオーディエンスと触れ合い、つい私も口ずさんでしまう。 「ここから最高潮いきましょう!! アリーナ、1F、2F、準備いいですかー! 武道館、準備いいですかー!!」 秦の呼びかけにさらにオーディエンスのテンションがあがり、疾走感を連れ立った、”キミ、メグル、ボク” では、ステージの右端のマイクで歌い、今度は左端のマイクへ移動。黄色いライトに照らされたオーディエンスの顔もキラキラと花が咲き乱れる。 秦は頭を振りながらリズムをとり、見事なロングトーンをみせると会場からは大歓声が湧いた。 ふと息を整えるように息継ぎをすると、デビュー曲「シンクロ」を披露。秦、そしてデビューから彼の音楽に触れているオーディエンス達にはどんな景色が広がっているのだろう。 「たった5年ですけど、また武道館のステージに立てて、みんなと会えて本当に嬉しいです!色々な人の力を借りて(シンガーソングライターという一人のスタイルで)やっていることは孤独ではないし、感謝の気持ちでいっぱいです。これからもみんなに届く歌を歌いたいと思います」と語ると大きな熱い拍手が秦の5年間に刻み込まれた。 本編最後の”鱗(うろこ)” では、じっと佇みながら聴いている人も少なくなかった。デビュー曲ではないが、印象強いこの曲で秦を知った人も多いだろうから、色々な想いを巡らせているのだろうと、逆にその姿に想いを巡らせた。 アンコールはツアーTシャツを来て登場した秦。今年12月に3度目の武道館を控えている秦は「次は裸一貫、弾き語りでやります!!」と公表。おーっという歓声と拍手に包まれながら「12月の武道館の予告編です!」といい、 “僕らをつなぐもの” のイントロを奏で始めた。 …なにもノートに記すことができない。身動きさえ邪魔に感じながら、私はとうとうペンを置いてしまった。それが私の想いと感じ取って欲しい。 「本当にみんなに会えて嬉しいです!! ありがとう!また…」 また…といった後、きっと秦は秦なりに何か気の利いたことを言おうとして何も出てこなかったのかもしれない。ちょっと笑いながら、「また…会おうね」と実にシンプルな言葉で続けたが、その少しの沈黙に秦の想いが詰まっている気がした。そして最後は最新シングル “水無月” を秦とオーディエンスが歌い、 5th Anniversary LIVE「 HATA MOTOHIRO -LIVE AT BUDOKAN-」は幕を閉じた。 カメラマン/笹原清明 取材・文/まさやん
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