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2003年東京で活動を始めた毛皮のマリーズは、昨年4月に アルバム『毛皮のマリーズ』でメジャーデビュー。そして今年9月にリリースされた3rd Albumは明かされる情報が少ないまま発売を迎え、タイトルの『THE END』通り、今年いっぱいで解散する。そのラストライヴ<毛皮のマリーズ TOUR 2011 "Who Killed Marie?">が、12月5日(月)、日本武道館にて行われた。 エディット・ピアフが歌い上げる”愛の讃歌” に導かれ、ドラムの富士山富士夫、ベースの栗本ヒロコ、ギターの越川和磨が登場すると、割れんばかりの歓声の中、最後にヴォーカル志磨遼平が登場。 “REBEL SONG” で、ライヴはスタート。 この日の志磨は、アグレッシブなロック野郎だった!4月の渋谷C.C.LEMONホール(現・渋谷公会堂)<CCONCERT FOR “TIN PAN ALLEY”>でみせた美しさというよりは、インディーズから彼らを知っている人達が目にしてきた姿に近いのかもしれない。 足を蹴り上げ、殴りつけるように振りかざす拳、フラフラになりながらステージを駆け抜け、マイクスタンドを振り回しては倒し、自分も倒れ込む。そこにいるのは、ミック・ジャガーでもデビッド・ボウイでもない。まぎれもなく毛皮のマリーズの志磨遼平だ! 長い髪を振り乱しながらジャンプする。そんなロック野郎の志磨は”ボニーとクラウドは今夜も夢中” “人間不信” と、どんどん曲をすすめると、「こんばんは、武道館。俺たち、毛皮のマリーズっていいます。最後まで楽しんでいって。」と、まるで無名の新人バンドのような挨拶をした。 犬の遠吠えをしながらしゃがみ込んで歌う”ガンマン、生きて帰れ” では、越川も前に出てステージギリギリの位置でプレイする。曲が終わり、少しの時間が空くとオーディエンスはメンバーの名前を呼び続ける。 「どうもありがとう。次の曲は僕らの新しいレコードから”ラストワルツ” です」と、志磨はそれまでの空気を変えるように静かに歌った。暖色のライトがメンバーを照らすと、それと反比例するように会場を闇に包む。それでも青いライトが光を放つと、かろうじてアリーナの前列だけが照らし出された。 「アコギ似合うかい?」と、アコギを持った志磨がわざと、てらったような低い声で問いかける。だが、てらいのない”ダンデライオン” は、あまりにも美しく、悲しいような幸福のような…そう、これは取材の時に志磨にも言ったことだが、漫画家・岡崎京子の世界に似ている。私は、志磨と共通して好きなこの漫画家の話を取材時に何度もしたことを思い出し、優しいこの歌に涙してしまった。 栗本は ”すてきなモリー” でヴォーカルをとるが、自分の立ち居値を崩すことなく、お尻まで伸びた長い髪も乱すことなく、淡々と、しかしキュートな歌声を聴かせてくれ、そのかわり志磨は相変わらずステージを動き回っていた。 そして「ヒロT(栗山)にもう一度大きな拍手を!」と言い、メンバーを紹介。越川に対して「僕の古くからの友達を紹介します」と言ったのが印象的だった。 続く”コミック・ジェネレイション” のイントロが流れると、大きな歓声が沸き、合唱になった。志磨はマイクスタンドを叩き付け、歌の世界を手の動きで魅了する。 気がつけば、ほぼMCもないままライヴは中盤戦に。 ”Mary Lou” では「武道館ベイビー!君を…君を愛してるよ!!」とカラフルなライトに染まるオーディエンスへ愛を叫んだ。 「アリガトウ」細々と挨拶する栗山を真似する富士山に笑いが起きるが、越川が「武道館ってちょろいもんなんやね」というと、おー!と歓声が沸いた。 ”ジャーニー” の、まだイントロとも言えない長い長いドラムのリズムとギターの歪みをバックに、志磨は前髪をかきあげ端から端までオーディエンスの姿を目に焼き付けているかのようにじっと見つめ、そのクラッピングに耳を傾け、髪をぐしゃぐしゃっとかき乱す。そして「さらば、青春!こんにちは、僕らの未来ー!」と叫び、曲に入ると激しいパフォーマンスをみせる志磨の手がマイクにあたり、ゴトリと音を立てながらマイクは落ち、志磨も足がもつれたように倒れ込む。それでも歌う!「止まると 俺 死ぬから!!」と歌いながら、最後は絶叫のように「死ぬ!」と繰り返し、オーディエンスの熱量とクラッピングもあがりっぱなしだ。 セットリストに目をやると、そこには “ビューティフル” の文字が刻まれている。 最後の曲だ…。力強いドラムに煽られるように激しく歌う志磨の声。会場を回遊するライトがやはり力強く腕を振り上げるオーディエンスを照らす。曲が進めば進むほど、ライヴが盛り上がれば盛り上がる程、カウントダウンが近づいているという事実をみんなが知っているが、今はとにかく腕を振り上げ、叫び、マリーズと交わる。それしかなかった。曲が終わり、退場際に志磨は投げキッスをして姿を消した。 長いアンコールの後、再びメンバーは登場。 何も言わず、歪んだギターの中でメンバー同士顔を向かい合わせると、富士山のカウントから ”YOUNG LOOSER” が始まる。手を掲げる者、号泣する者、ピクリとも体を動かさずただひたすら聴き入る者、その姿全てが胸をキリキリと締め付ける。 しばしの沈黙の後、これでラストだという想いにオーディエンスはまたメンバーの名前を叫ぶしかなかった。越川は泣いているのだろうか。顔を手で覆う。志磨は踊っていたが、言葉では表現できない感情を抱いているようにも見えた。 毛皮のマリーズ、ラストソングは”ジ・エンド” 。 志磨はオープニングのエディット・ピアフのように妖艶で美しく歌い、リズムが激しさへ表情を変えると、自分のすべてを出すように歌いあげる。やはり泣いているんだろう越川の頭をぎゅっと抱きしめると、それでも声をとぎらせることなく、曲を終えた。 志磨は一瞬マイクを愛おしそうに抱きかかえるが、最後はそのマイクを起き、メンバーも楽器を起き退場。ギターのフィードバックが鳴り響く中、毛皮のマリーズのラストライヴは幕を閉じた。 客電が早々につくと、デビッド・ボウイの”Rock'n roll Suicide” が流れ、それでもその場から動くことないオーディエンスは、毛皮のマリーズという4人のミュージシャンにいつまでも惜しみない拍手を送った。 志磨は結局何もいわなかった。 言わなかったが、すべては歌の中にのみ存在し、ここまで書いたレポでさえ言葉の無力さを感じずにはいられないライヴに、あえて「更に”毛皮のマリーズ” のファンになった」ということを加えてペンを置こう。 カメラマン/有賀幹夫 取材・文/まさやん
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