「みなさん、師走にロックンロールの時間ですよー!」
轟音のような声援が響く「 あれから10周年ツアー ツアーファイナルワンマン!」は平日にも関わらずSOLD OUTで超満員、これ以上入れないだろうという程のファンで溢れかえっていた。
「平日だからって、手抜いてるんじゃねーぞ、このやろー!!!」
サンボマスターは、叫びと愛、ロックンロールで出来ている。しかもとびっきりの「普遍性」で。
水戸黄門や寅さんが何故長く愛されるか?それは変わらぬ普遍性があるからだ!
そして一見ハチャメチャにも思える程のパワーを炸裂させる結成10年のサンボマスターにもその普遍性がある!だから愛されるのだ。
1曲目の ”愛しき日々” から山口 隆(Vo.G)が「僕たちは SHIBUYA-AXに集まった2000人にしか出来ないような宇宙イチのロックをやりたいわけですよー!」と叫べばオーディエンス達も叫び、フロアは波を打ち「ロックンロール!ロックンロール!」と、ロックンロールコールを繰り返しながら、「まだ恥ずかしがってる奴がいる。ロックンロールの時間だっつってんだろー!」と煽る。
しかもあれだけ煽って叫んでギターを掻き鳴らし、バスドラドンドンさせて、ベースうならせているのにトークで「初めて観た方もいらっしゃると思うんですけど、僕らいつもはアコースティックみたいなですね。今日はたまたまワンマンということで事務所の圧力でうるさいことをやっていて。だから親御さんやおじいちゃん、おばあちゃんに聞かれたら、いつもはもっと静からしいって言ってください。」なんて言うから、思わず本気で吹き出してしまうではないか。
「 あれから10周年ツアー ツアーファイナルワンマン! 」と銘打っているだけあって、セットリストも ”夜汽車でやってきたアイツ” から12月1日リリースの最新シングル “きみのキレイに気づいておくれ” まで幅広い。ある意味、レコ発でもあるわけで、この曲では 近藤洋一(Ba.cho)のギターソロがあるというではないか。
「イケメン俳優やイケメン女優が来てもね、君らの方が綺麗だとか君らの方がカッコいいって言いたいじゃないですか。いや、実際来たらそっちの方がカッコいいって言うかもしれませんよ。だけど今位がいいじゃないですか。」と、山口は汗まみれで眉毛がとれちゃったり髪が振り乱れたりしているオーディエンス達に言う。そういう姿の綺麗さに気づいて欲しいと。そしてお約束の近藤ギターソロ!ありました!…ちょびっと(笑)。
早口でまくしたてながら曲へ持って行くやり方もいつもと変わらない。でもお約束事的なことがいつ、どこに来ても存在するというのが普遍性の素晴らしさだ。
近藤洋一(Ba.cho)は大股で動き回り時折、ショーケンのように人差し指を上げオーディエンスを挑発し、木内泰史(Dr.Cho)のアタックの強いドラムや、絶叫にも似た「アー!」というコーラスは脳天の裏を揺さぶる。
火花が散りそうな勢いを繰り返しながらも、すぅっと熱が引いて行くように「俺はいなくなってしまった奴のひとりのところに何かできねぇかなと思って行ったけど、結局何にも出来なかったもんね。お墓の前で拝んでピック2枚置いてくるだけ。だから俺、やり方よく分かんねぇから歌うことにしたんだ…。」と、そんなことをずっと淡々と喋りながら聴かせる ”ラブソング”ではやっぱり溜まらない! ラスト近くの長いブレイクにはこちらも息を止めてしまうほどだ。
でも後半はやっぱりこうだ!「哀しい歌、歌いにきたんじゃねんだ。美しい歌だけ歌いにきたんじゃねんだ。君たちとロックンロールやるっつーか、ぶっちゃけ恋人になりにきたんだ、ここに!ロックンロールやりに来たんだ。」と叫び、 ”歌声よおこれ” “世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”とボルテージは上がりっ放し!
本編ラスト “できっこないを やらなくちゃ”では、もうサンボマスターの勢いも、オーディエンスの勢いも、誰も止めることは出来ない。サークルモッシュ、クラウド・サーフィングでエラいことになっている。
終わってもなお湯気を出しながら、アンコールの代わりに「ロックンロール!」と叫ぶオーディエンス達に引きずられるように山口、そして近藤、木内が続けて登場。「あと2分休みたかった。」と言いながら。でも「最高のライブにしていただいてありがとうございました!…アンコールだからって手を抜くんじゃねぇぞ!SHIBUYA-AXってところはもうちょっとライブハウスじゃない空気だと思っていた。何でぐじゃぐじゃになってあっちで人が飛んで、こっちでぐるぐる回ってるんだ。」と続けるがそれはあなた達がさせてるのですよ!(笑)。しかも山口はこの後に及んで「お父さん、お母さんに言われたら今日みたより3割増しで静かだったと」と言うが本音の「そのかわりここは阿鼻叫喚でよろしくお願いします!」でアンコールを盛り上げる。
”あなたといきたい”ではサンボマスター3人+オーディエンス2000人の大合唱で鼓膜が震え、照明のライトが割れるんじゃないかという程の大音響が炸裂する。
途中、近藤の声はヴォコーダーで地を這うように変化し、ラスト「うるせぇ曲やるぞ!」と言いながら、 ”美しき人間の日々”では、情熱もファイトも何もかもライブスタートの時と変わらぬ熱量のまま、 あれから10周年ツアー ツアーファイナルワンマン!の幕は閉じた。
途中、今度こそ本当に2階席が落ちるのではないかという程揺れたが、そんな時私は密かに思った。もしこの席が一階のオーディエンス達の中へ落ちたなら、私はあのサークルモッシュの輪に加わり汗みどろになってロックンロールしようと…。
取材・文/まさやん
<セットリスト>
1、愛しき日々
2、愛とは 愛とは
3、これで自由になったのだ
4、世界をかえさせておくれよ
5、青春狂騒曲
6、君を守って 君を愛して
7、きみのキレイに気づいておくれ
8、全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
9、夜汽車でやってきたアイツ
10、残像
11、手紙
12、ラブソング
13、歌声よおこれ
14、光のロック
15、新しく光れ
16、そのぬくもりに用がある
17、世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
18、できっこないを やらなくちゃ
Encore
1、あなたといきたい
2、美しき人間の日々
サンボマスター公式サイト
http://www.sambomaster.com/pc/top.jsp