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会場に流れているクラシックが止むと、 コツコツコツと響く足音に、重い扉をゆっくりと開ける音。ドクンドクンと高まる鼓動の音はこれから始まる【スキマスイッチTOUR2012 “musium”】への期待感の予感だろうか。 ツアータイトルが書かれた幕はまるでオーガンジーのように薄く、少しだけステージを映し出した。 昨年10月にリリースしたアルバム『musium』をひっさげてのツアー全33公演も、鹿児島と沖縄公演を残すのみになった東京2日目、追加公演の4月13日。 常田真太郎と大橋卓弥の登場を、その薄い幕はシルエットとしてとらえた。 1曲目は「時間の止め方」しか考えられないだろう。 幕がひらりと落ちると、 “ 準備はどうだい? そろそろいいかい?さあいこう! ”と、大橋は歌い、アルバムに描かれた直線的線で描かれたフクロウがステージに登場。 途中MCで大橋も言っていたが、このライブは楽曲だけでなく、照明、舞台装置に至るまでまるでミュージアムのように素晴らしかった! 大橋はステージの端から端まで手を振りながら「ようこそ!」と笑顔を見せた。 アップテンポな「ふれて未来を」で咲いた手拍子の花は「アイスクリーム シンドローム」へと繋げ、ふくろうの目にはジャケットに描かれていたような青空が広がる。 2人は上着を脱ぎ、「今日もすごい盛り上がり方ですね。」と、MCで大橋は再び笑顔をみせ、「汗だくですよ」と、常田も言う。 確かに、前半戦だというのに、もの凄い盛り上がり方をみせ、この日はオーディエンスのテンションが下がることが一切なかった。 「新曲ばかりでなく古い曲も持ってきてます。」という大橋の言葉通り、前半には「キミドリ色の世界」や「太陽」「願い言」など懐かしいナンバーも繰り広げられ、「螺旋」では紫と青の世界がステージからオーディエンスに光を降り注ぎ、パーカッションと常田のピアノは強く絡み合う。スクリーンには螺旋を描く繊細な線が映し出され、気だるさを孕んだ(はらんだ)大人の空気があった。 「今のコーナーは昔の曲をリアレンジして、テーマはアーバンです。」 今迄はニューヨークっぽいイメージだったと大橋は続けるが、この日の前日のライブでニューヨークから来ているファンがいて、ニューヨークはこんな感じではない。と言われたらしく「今日からは六本木」と訂正すると、会場からは笑いが起きた。 「東京2日目ということで、特には……」 大橋のこの「特に何もない」発言に「えー!」という声が響く。 そのブーイングに笑いながら大橋は、18歳で上京したての頃、最初に東京に出て来ていた常田を訪ね、三軒茶屋のマクドナルドで大橋と大橋の母親と常田で会った話をし、それを皮切りに東京のご当地話(今では2人の拠点が東京なので、ご当地というのも変だが)が始まった。 常田は東京タワーに行ったことがないらしく蝋人形館に興味を持っていた。 大橋は修学旅行で原宿の竹下通りへ行き、ビートルズショップで下敷きを3枚も買ったらしい。 ピアノにもたれかかりながら話す大橋の口調も仕草も実にリラックスしていて、大勢の観客を前に話すというより、まるで友人達と他愛ない会話に笑顔するようにみえ、それはオーディエンス達をも和ませた。リラックスし過ぎというべきか、最終的にリップクリームをポケットに入れておくと、何故少しリップ部分が出てきているのだろうという、友達同志でもなかなか出てこない程の究極の他愛ない話にまで発展(笑)。きちんと用意された話も楽しみだが、これはこれで面白く、ある意味東京ならではのスキマスイッチの姿かもしれない。 雨音と、においまで感じられそうな雨の映像。「雨は止まない」のメロディを常田の鍵盤が柔らかく先導したかと思えば、バスドラの音と明藍色の光、大橋の伸びやかな声は会場の隅々まで存在感を露にする。絡み合う全ての楽器の音がアスファルトに叩き付ける雨粒のように激しい。そんな雨が静かになると「さいごのひ」で大橋はそっと大切に歌う。 その静の力が体内に歌の世界を溜め込み今にも爆発しそうだが、ふと常田のピアノで息をはきだすと、徐々に想いを放出させる。思わず聴いているこちらが呼吸を忘れてしまいそうな圧倒感。 ミュージシャンという自分達を卑下しているのか愛おしんでいるのか、「ソングライアー」ではダークなリズムと大橋のブルースハープがどこか斜に構えているような音色に聴こえる。アルバム『musium』での取材の際、大橋が「こういう皮肉を歌ってみたくなる」と言った言葉を思い出した。そんな、ストレートでない部分もスキマスイッチの大いなる魅力だろう。 「 スモーキンレイニーブルー」は、やはり格好よい!! ジャズ、ファンクの要素を惜しげもなく盛り込み、彼らが単なるJ-POPでないことを証明する。 しかし、マニアックのみに偏らないのもやはりバランス感覚。「全力少年」ではテンションマックスに盛り上がり、「みんなで一緒に声を出しましょう!」と、大橋はWooとメロディを先導するとオーディエンスはそれに続いたが、どんどんと難易度を上げる。上がったかと思えば下がり、すぐ上がるメロディに音を崩すオーディエンス。「今日は全然駄目だなぁ!」と大橋は嬉しそう。しかし、それはオーディエンスとの関係性が深い証拠であり、本気になるフロアのムードに大橋は最高に嬉しそうな笑顔をみせた。 そう、音で、音楽で繋がっているのだ。それがこの2人にとっては最高の喜びなのだろう。 ライブ1曲目の「時間の止め方」の歌詞をエンディングバージョンにアレンジし、”音と光で満たされた世界” と大橋は歌い、本編は終了。 「昨日も異様な盛り上がりだったけど、今日もすごい!!」 アンコールで再び登場し、大橋はそう言った。メンバーは悪のり(?)し、手でもっともっととオーディエンスを煽ると、怒濤のような歓声にとうとう大橋は「うるさーい!!!」と叫び、会場は大爆笑。 「あと2公演だけど、発射台に乗った感じ」と常田は言い、「またエネルギーをもらった」と大橋も今の想いを伝えた。 “遊んでる感”が出ればいいと以前の取材で大橋が言っていた通り、インスト曲「ガレポンク」ではそのセッション感とグルーヴ感を見せつけてくれた。 「またここに歌いにきますから!」 大橋は力強く感謝と共にそう言うと、この日のライブ最後の曲となった「惑星タイマー」ではキラキラしたオーディエンスの笑顔と合唱に包まれ、しっかりと音楽で結ばれたスキマスイッチとオーディエンスが作り上げたmusiumは閉館の時間となった。 カメラマン/堀 清英 TEXT/まさやん ◎スキマスイッチ 公式サイト http://www.office-augusta.com/sukimaswitch/
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