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クリープハイプ「つま先はその先へ」ツアーファイナルワンマン@赤坂BLITZ 2012年6月9日

クリープハイプ「つま先はその先へ」ツアーファイナルワンマン@赤坂BLITZ 2012年6月9日

今年4月、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビューしたクリープハイプ。
Vo,Gt.の尾崎世界観の高い歌声と、日常の感情を強いコントラストで描く歌詞は以前から気になっていたが、6月9日赤坂BLITZでの「つま先はその先へ」 ツアーファイナルが、彼らのライブ初参戦となった。

5月18日仙台を皮切りにスタートしたこのツアー、全7公演すべてがSOLD OUTというから、注目度だけでなく実人気の高さも伺える。

「今日は世間では6月9日ということで、ROCKの日と言われていますが、そんなの関係ないです。今日はクリープハイプ、ツアーファイナルの日です。忘れられない日にしましょう!」
尾崎世界観の、その挨拶と「愛の標識」で、しょっぱなからオーディエンスのテンションは上がった。


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PCを同期させデジタル音を多用するバンドも多くなった最近では、エフェクターもドラムセットも実にシンプルで、リアルなバンドの音に、逆に新鮮ささえ覚えた。尾崎は時に吐き捨てるように、時に張りつめた糸のように、やはり高い声をオーディエンスにぶつける。



「すごいですね、この景色は。5年前の自分に、真っ先に見せてやりたいと思ってます。」
目の前で自分達の音楽と交わるフロア満員のオーディエンス達の姿と、この風景を夢見たという尾崎は「幸せです!」と、頭を掻きながら笑う。

淡々としたメロに、ラップとはまた違う、語り口調のような歌詞をのせる「バイトバイトバイト」で尾崎は、過去の自分に語るように「僕は今、赤坂BLITZでワンマンライブをしています!」そう言うと、オーディエンスはその言葉さえ掻き消すように湧き上がり、小川幸慈のクリアなギターはそれでも静かに5年前ではなく現在の今の音を響かせる。



DSC_180420120617154615.jpgBaの 長谷川カオナシと歌う「グレーマンのせいにする」「火まつり」は、どこか70年代ニューミュージックのニオイがして、サウンドの展開も他の曲とすこし異なるように聴こえたが、 そこに小泉 拓の力強いドラムが入ると更に面白い表情をみせた。

「もう後半ですからね」
ギターチューニングをしながら言う尾崎の言葉に「エー!!!」と声を上げるオーディエンス。「こいつに言ってよ。」と、小川を指差すとそのブーイングを託された小川は、突然のことで苦笑い。
楽曲の空気を壊さずMCをこなすミュージシャンもいれば、クリープハイプのように、MCになると突然仲間との気兼ねない会話のように空気が溶けるミュージシャンもいる。
しかし尾崎が言ったように、すでに後半戦に入り「左耳」のイントロが流れると、溶けた空気は一気に熱をおび、オーディエンスはまた音の世界へと引きずり込まれる。
しかし、一種の宗教的なカリスマ性というものとは違う、それこそバンドの練習風景や、普段の日常生活が想像できそうな人間臭さというのは、やはり彼らの音楽そのものにあるのかもしれない。


DSC_3061-220120617154657.jpg勿論ツアー全体、最高のライブはやってきたが、東京にこだわっているからこのツアーファイナルは、”帰ってきた”という気持ちだと尾崎は語った。全7公演というのは、決して多くはないし、今後その数は増えていくだろう。しかし、確実にその一歩目という今回のツアー内容が充実したものだったと、その表情から分かった気がする。


「オレンジ」はなかなか曲が出来ずに苦しんでいる時期の作品で、「何回も同じことをいうけど、続けてきて良かった!今日来ている人も、やめないで続けて欲しい。ひねくれているから、なかなか人の言葉を素直に受け止められないけど、これからの3分半位の間はそういう気持ちになってくれ。」と、想いを語り、沢山のところへ連れて行ってくれたという「オレンジ」を熱唱。オレンジに染まったステージとフロアは共鳴し合いながら、確実にその後もクリープハイプをもっと沢山の場所へ連れ立つ予感をはらんでいた。


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「今日は家族が来ているんですよ。だから今日は勘弁していただけないでしょうか。息子のこんな姿を見せられないでしょ。」と、尾崎がいうとオーディエンスは演奏中とは確実に違うテンションで盛り上がる。「絶対に言うなよ!」というそのお約束的展開。
ん?なんだ?この流れは???と、ライブ初参戦の私は妙にワクワクしたが、それはすぐに分かった。ライブの定番曲「HE IS MINE」の、”今度会ったら何をしようか? 今度会ったらキスをしようか? 今度会ったら何をしようか……?”という問いかけ的歌詞に対して、オーディエンスが毎回「セックスしよう!」と大合唱するという。なるほどなるほど。それで親の前ではと言っていたんだな(笑)。

まぁしかしこれはお約束だからこの日も当然「セックスしよう!!!」と叫ぶオーディエンス。これには大盛り上がり!!!
正直言うと、先ほど感動さえ覚えるほど尾崎が想いを語った「オレンジ」だが、私は密かに、セックスする男女の前で演奏するというシュールなあの曲のPVを頭に描いていた。
まぁ、こういう剥き出しの感情や欲求を生々しく描くセンスは嫌いではない。


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アンコール、そしてWアンコールを受け、三たびステージに登場したメンバー。
「偉い人には怒られちゃうかもしれないけど、大きな会場になっても、ずっと小さいところで、お客さんの声が聴こえるところでやってきたから、これからもそういうライブがしたい。」という尾崎の言葉に拍手が沸き、ツアーファイナルラスト曲「蜂蜜と風呂場」では、ハンドクラップが広がった。

「今から、よくツアーファイナルで見るやつをやります!」
そういうと、照れながらメンバー同士が手を取り合い、ステージ中央で一礼。ツアーファイナルは幕を閉じた。

これから彼らが幾度この風景を刻むか分からないが、少なくともこのツアーファイナルで聴くクリープハイプの楽曲達は、更に強く脳裏に刻まれた。


取材・文/まさやん

セットリスト

1、愛の標識
2、愛は
3、NE-TAXI
4、バイトバイトバイト
5、あの嫌いのうた
6、リグレット
7、チロルとポルノ
8、グレーマンのせいにする
9、火まつり
10、風にふかれて
11、ごめんなさい
12、左耳
13、ABCDC
14、SHE IS FINE
15、オレンジ
16、ウワノソラ
17、身も蓋もない水槽
18、HE IS MINE
19、イノチミジカシコイセヨオトメ
20、手と手

(アンコール)
21、欠伸

(Wアンコール)
22、蜂蜜と風呂場

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