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さかいゆう Premium Acoustic Live

さかいゆう Premium Acoustic Live "ONLY YU" #2

スクリーンに大きな影を落とすたった1台のグランドピアノ。まるで絵画のようだ。

5月19日(日)SHIBUYA-AXにて開催された『さかいゆう Premium Acoustic Live ”ONLY YU” #2』はSOLD OUT。
客電が落ちると、先ほどまでピアノの影を映していたスクリーンに、水中の映像が浮かぶ。コポコポと水音を立てながら光を受け輝く水面。程なく大きな拍手を受け、さかいゆうが登場。
 

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オープニング、“music” のメロディが響くと、スクリーンには次々に様々な風景が映し出された。波の荒い海。錆びた椅子。川向こうのビル群。
伸びやかなさかいの歌声は上空へと舞い上がり、観覧車の映像に乗り込む。そうやって声や楽曲のイマジネーションと映像のイマジネーションが絡み合いながら会場を包んだ。
故郷、高知の幡多弁ver.で歌う“Lalalai”で、さかいは珍しくミストーンをするが、「キミの喜ぶ顔 ただただ見たくてわざと失敗した〜♪」と、それすらも歌にしてしまい大盛り上がり! 楽曲をフリースタイルで楽しませる彼らしいライヴにしょっぱなからワクワクする。
しかも曲が終わり大歓声の中、その失敗を蒸し返すように頭を軽くピアノに叩き付けたりメガネを拭いたりピアノに何か文句を言ったり。思わず会場からも笑いが大きくなっていく。それでもどこか不満げな口調で「今日は緊張感あるライヴにしたかったけど、ちょっと違うなぁ。」というさかい。
「緊張」という言葉が これほど似合わない人はいない。あくまでも良い意味で(笑)。
きっとオーディエンスが何万人いようが同じプレイやMCで楽しませてくれるだろう。

小泉今日子さんのアルバムにも楽曲提供した “100% ” 。
イントロの口笛とロマンチックな歌詞は愛らしいメロディに乗り優しくスイング。「よかったら一緒に」というさかいの導きでハミングが広がる。


0519AX0434.jpgMCでは、これから演るスピッツのカヴァー“涙がキラリ☆”のエピソードに。
さかいは高校時代、目覚まし時計代わりにこの曲をステレオから大音量で流して起きていた。そしてもう1曲のカヴァーは、バート・バカラックの“Alfie”。
口でトランペットの音真似を入れ、ジャズミュージシャンのプレイを彷彿とさせる。
「人がいないと自分でジャムりたくなっちゃうんだよね。…静かだね(笑)。多分僕のことを好で観に来てくれている方々は僕と(音楽の聴き方が)似てくるのかもしれない。」と、さかいの音楽に浸るオーディエンスへ笑顔を向けた。


今回はインディーズ時代の楽曲も披露。
「あえて言いましょう!さかいゆうの知られざる名曲集!」と盛り上げるとさかいは突然「あ、ちょっと待って。今思いついた!」と、これから演る“きみなんだ”の最後で「I LOVE ◯◯♪」と、この会場の誰かの名前を入れて歌うことを急遽思いついたと告げ、2文字の名前を募る。…が、当然会場のあちこちから名前が飛ぶのでまったく収集つかない状況になり思わず会場も大爆笑に。
ともあれ目出たく「ゆり」という名前の方に決まり、思いついてはみたものの若干照れ気味に歌う「I LOVE ゆり〜♪」に大歓声!
同じくインディーズ時代の“井の頭公園”では、井の頭公園の噴水や賑わう人々の姿、スワンボートが映し出され、緩やかなサウンドと共に風や緑のニオイ、木漏れ日を感じた。

「いよいよ後半戦です!折角だから盛り上がりますか!!」
さかいのヒューマンビートボックスとオーディエンスのハンドクラップがひとつのリズムを生み、4月にリリースされたニューシングル“僕たちの不確かな前途”へと繋がり、盛り上がりを見せる。
「やっとこのスタンウェイ君と仲良くなれた頃にみなさんとお別れです。」と、この日のもう一人の主役であるピアノ、スタインウェイ・アンド・サンズをポロンと鳴らすと当然会場からは残念がる「えー!」が広がる。
実際、13曲を終えたここまであっという間で、私は曲が終わる毎に呼吸するのを忘れていたことを思い出し、都度深呼吸していた。
「またやりたいな。」さかいのその一言は決まりきったMCのそれとは全く違うニュアンスを感じ、オーディエンスからも同じヴァイブスで大歓声が湧いた。
しかし「次やる時はもっと盛り上がる曲をやろうかな。でも知ってるんだ。僕の曲、ちゃんと聴いてくれてるんでしょ?」と、ノリ一発というより、しっかり聴き入っていたオーディエンスの反応へ対し、さかいらしい一言。
更に「“ライヴ良かったね!”と言われる前に自分から言っちゃうところが駄目だって68回位言われてるんだよな。」とオチをつけると大爆笑。とはいえ、さかいが言う「ライヴが良かった」というのはさかいの力だけでなく、この日この会場に来ている人が一人でも欠けると成立しないことだと話を続けると「まだまだやるので、これからも来て下さい!」と改めて感謝を述べた。

本編最後はさかいの亡くなった友人へあてた楽曲“君と僕の挽歌”。
「ここにいるそれぞれ、大切な方がいらっしゃると思います。そういう人を思い浮かべて聴いてくれたらと思います。」と気持ちを告げると、まさに天を突き抜ける程の声量に想いをのせて歌い出す。時折マイクの存在に捕われず歌う姿はゴスペルがそうであるようにSOUL(魂)そのものだった。ある種ポップシーンの枠を越えるような神聖ささえ感じ、会場のあちこちで涙するシーンを目にした。

0519AX1097A.jpgアンコールで再び登場したさかいは、拍手の行方が自分なのかピアノなのかとジェスチャーを見せる。
さかいへの拍手が大きいと「いやいや自分なんて」とわざと大げさな仕草で笑わせた。
そしてインディーズ時代の“Midnight U…”のイントロでは、HIPHOPのDJスクラッチのようなエッジあるアレンジを効かし熱狂の坩堝に。
曲が終わり、身体が二つ折りになるほどのお辞儀に拍手喝采は鳴り止まない。さかいは、後ろ歩きでどんどんピアノから遠のきながらも未練を感じさせるようにピアノへ手を伸ばし近づくと、人差し指で「もう1曲」と示す。
今回は演奏以外のこういうエンターティナー性も随所に溢れている。
「僕の好きな曲でいい?」とライヴ最後は “train”を選曲。

さかいが「渋谷発どこ行きにする?」と問いかけるとオーディエンスからは「高知!」とレスポンス。
それに対し「何時間かかると思ってるんだよ。」と突っ込むさかい。
あまりのリアルなツッコミに笑いが広がる。
そして結局各々の線路をイメージしながらと言いながら「ガタンゴトン ガタンゴトン♪」とシンガロングが響き渡り『さかいゆう Premium Acoustic Live ”ONLY YU” #2』の幕は閉じた。
さかいは退場するが、会場アナウンスが流れるまでの長い間、拍手は鳴り止まなかった。

繊細な声の美しさは勿論だが、緩急の付け方が織りなす空気感の素晴らしさ、インスピレーションの数々。
この人は天才だ!と、ライヴ中何度思ったかしれない。
そしてこのライヴ会場に来ていた全てのオーディエンスが、さかいのライヴに恋をしているようだった。

カメラマン:岩佐篤樹
TEXT:秋山昌未

セットリスト

M1.music
M2.ストーリー 
M3.Lalalai
M4.ONE WOMAN
M5.100% 
M6.Room
M7.It's YOU
M8.涙がキラリ☆ ※オリジナル:スピッツ
M9.Alfie ※オリジナル:Burt Bacharach
M10.きみなんだ ※信近エリ提供曲セルフカバー
M11.みち
M12.井の頭公園
M13.僕たちの不確かな前途
M14.君と僕の挽歌

Encore
M15.Midnight U...
M16.train

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