「1…2…3…」
“10th Type Ⅲ” のカウントと共に、耳から血管、細胞、心臓、骨と人間の体内を通過するイメージ映像が流れ、カウント10(Ten)を告げるとビートアレンジされた“ゴールデンタイムラバー”のイントロに12,000人のオーディエンスが沸いた。
8月に初のオールタイムベストアルバム『POPMAN’S WORLD~All Time Best 2003-2013~」をリリースしたスキマスイッチが、10月5日(土)の福岡国際センターを皮切りに、デビュー10周年記念アリーナツアー【 Sukimaswitch 10th Anniversary Arena Tour2013“POPMAN’S WORLD”】をスタート。11月17日(日) さいたまスーパーアリーナにてファイナルを迎えた。
セットリストもスキマスイッチの10年を彩るラインナップで、成る程と納得。
当然でデビュー曲の“view”は欠かせない。
「6年ぶりのアリーナツアー、今日がファイナルです。」
大橋が感慨深げにそう言うと、「長かったツアーもこれで最後ということで…」と表情ひとつ変えることなくボケる常田にすかさず「5本しかやっとらんわ!」とツッコむ。
しょっぱなから和やかムード全開だ。そして「シンタくんと2人でどんなツアーにするか考えて、やっぱりアリーナでしか出来ないことをしたいなと。だから今回、音は勿論ですが視覚的にも楽しんでもらえるような仕掛けを用意してきました。」と続けるも、やはりスキマスイッチのライヴテーマのひとつでもあるアットホームさは大切にしたいので自由に観て欲しいと続けた。
後のMCでも少し語られる“夕凪”はスキマスイッチにとって、なくてはならない曲。
イントロのドラムやギターリフなどTHE BEATLESへのリスペクトを真っ向から表現したこの曲について取材時に「そこはあえて中途半端な表現にしたくなかった。」と語ってくれたことを思い出す。だからこそ生まれる美しいメロディ。個人的にも大好きな1曲だ。
そしてファン投票で収録曲を決めたSelf Cover Best Album『DOUBLES BEST』でも支持率の高かった“藍”、「ドラえもん のび太の恐竜2006」の主題歌として全国区になった“ボクノート”へと続く。
「プライベートは何やってるんですか?」
アリーナツアーは週末が多いため、次の公演までは期間が空く。
互いに顔を合わせないその間は何をしているのかという大橋から常田への質問を皮切りに、以前同じ街に住んでいた時にTSUTAYAで偶然あった話や常田が大好きなサッカーの試合結果を思わぬところから知る話、録画用HDレコーダーの「ゴミ箱」という表現に納得いかない大橋の話(ちなみに大橋は「ゴミ箱」を「良い想い出にする」と表現して欲しいらしい。)など、ユルいトーンのMCタイムへ突入。
しかし更に話し出そうとする大橋に対して一瞬は「まだ喋るのか?」という表情をみせた常田だったが、「いいよ、とことん付き合ってやるよ。ファイナルだから!」と言うと「そうですよ! あなたそうやって10年間僕に付き合ってくれたわけですから、これからも付き合っていただかないと。」と大橋。これにはファンも色々な意味で大拍手だったが、とうとう常田はピアノの前を離れ大橋の横へ。
そして「卓弥でーす、シンタでーす、スキマスイッチでーす!」と1本のスタンドマイクで漫才のよう喋り出す。
これぞスキマスイッチライヴのアットホーム感、ツアーファイナルヴァージョン!!
“ふれて未来を”で大橋は、フロアの左右に延びる花道を歩きながら歌い、一気に自分の近くに大橋が来たことに興奮するオーディエンス達の歓声が沸き上がる。
そして “さいごのひ”では、暗闇の中の一筋の光が大橋を照らす。ゆっくりとした音色は、彗星の尾のように美しく切ない余韻を大橋の力強い声に委ねながら響いた。
みんなへの感謝と、これからもよろしくという気持ちを込めて書いた10周年記念の“Hello Especially”では常田がハーモニカを持ってステージの前方へ。オーディエンスの暖かい気持ちと愛情が拍手となり二人を包み込む。
“SL9”の果てしないその映像世界とサウンドは12,000人の想像力の中に入り込み、無限の時間を与えた。
こうやって色とりどりに変化する音をおしげもなくオーディエンスへ注ぎこみ、その歌声や旋律、ピアノの音色は細胞まで沁み込む。
そう、オープニング映像のように。
ライヴも後半戦、“ユリーカ” の疾走感を“ガラナ”へ繋げ “トラベラーズ・ハイ”で銀テープが勢いよく発射されるとオーディエンスのテンションも急上昇!
…が、ここで大橋が突然花道を降りスタンド席へ走り出した。
これにはオーディエンスも色目気立ち、会場は騒然となった。
大橋が花道へ戻ると、しばしの興奮状態がシンガロングへと変わり「いいね、いいね!」と大橋も笑顔。
ロングトーン対決でも「頑張って!」と嬉しそうにオーディエンスと音楽を楽しむ。
「ありがとうございます!! 本当に楽しかった。10年こうやって音楽をやらせてもらってステージに立たせてもらっていることが本当に嬉しい。10年間支えてくれたのは皆さんだと思います。僕たちが曲を書いても受け取ってくれる人がいなければ、やっぱり10年間はやってこれなかったと思います。本当に本当に言葉にしきれない程の感謝をしています。」 10年経ってファンの愛情を感じられることへの喜びと感謝を語った大橋に大きな拍手がおくられた。
更に「スキマスイッチ10年迎えさせてもらってここからもう一度、リセットするわけではないですが、でもまたシンタくんと一緒に一歩一歩前に進んでいきます。」と続けると、旅立ちをテーマにした“スカーレット”に想いをのせて本編は終了。
アンコールを受け、鮮やかなピンク色のツアーTシャツに着替えた大橋と常田はバンドメンバーと共に再び登場。
ベースの低いバウンスとクールなシンセがアーバンポップな“デザイナーズマンション”のイントロを奏で、トランペットは大人ムードを醸し出していた。
曲が終わり、改めてメンバー紹介するが、大橋は今歌ったばかりの“デザイナーズマンション” をアカペラで再び歌い出した。
もしかしたらそれは突然の思いつきだったのかもしれない。
シンセ、パーカッション、ドラム…とセッションのように次々、大橋の歌声に合わせ始めた。
「ファイナルということで、ちょっと調子にのっちゃいましたね。」
曲が終わると大橋は笑顔でそう言うと「そちらのステージでシンタくんと一緒に一曲やってみたいと思います。」と、花道を結ぶアリーナ中央に作られたサブステージへ移動。
「たまにはシンタくんからも。」とトークを促された常田は、スキマスイッチが結成するきっかけにもなった“夕凪”を12,000人の前で演奏したことに対し「もし曲に人格があるとすれば、“え、オレ?12,000人の前で演ってるの?だってあの時のオレだよ!”って言うと思う。」と冗談めかしに言う。ユーモラスではあるが、驚きと感動をかなり素直に表現していると思う。
更に、天文部に入りたいけど部活の掛け持ちをしていて入れなかった、空に想いを馳せる高校時代の常田を歌った “SL9”に対しても「その曲をこうやって皆さんに聴いてもらえて、そういうことを考えると(鍵盤を)弾いていても弾けなくなる位の気持ちになってくるんですよ。涙が出てきて。そういうことを考える位にすごく長く活動しているんだなと。10年一昔と言いますが、自分でも10年間何かを続けたことがないので、続けてこれたことに対しては自分の中で自信として持っていて良いのかな、とも思います。」と話し、これから11年、12年、その後も続くスキマスイッチの存在と歌をみんなの中にも置いておいてもらえれば嬉しいと語り、大きな感動の拍手で満ちあふれた。
サブステージには二人しかいない。常田はグランドピアノで“奏(かなで)”のメロディを弾き、大橋は椅子に座ってゆったりと、しかし丁寧に歌い上げる。その歌を12,000人のオーディエンスは微動だにせず聴き入っていた。大橋の歌声、常田のピアノにのみ心傾けているのがわかる。
そして最後、「じゃあもうちょっと騒ぎますか!!」と二人はメインステージに戻り、再びバンドと一緒に “虹のレシピ” で締めくくった。オーディエンスのコーラスとブライト感溢れる開放感、達成感の中、『Sukimaswitch 10th Anniversary Arena Tour2013“POPMAN’S WORLD”』ツアーファイナルの幕はおりた。
TEXT:秋山昌未
M0.SE “10th Type Ⅲ”
M1.ゴールデンタイムラバー
M2.view
M3.螺旋
M4.LとR
M5.夕凪
M6.藍
M7.ボクノート
M8.ふれて未来を
M9.アカツキの詩
M10.晴ときどき曇
M11.マリンスノウ
M12.さいごのひ
M13.Hello Especially
M14.SL9
M15.ユリーカ
M16.ガラナ
M17.トラベラーズ・ハイ
M18.全力少年
M19.スカーレット
ENCORE
M20.デザイナーズマンション
M21.奏(かなで)
M22.虹のレシピ