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ドレスコーズ【More Pricks Than Kicks TOUR】

ドレスコーズ【More Pricks Than Kicks TOUR】

dress_2434.jpgロックの解釈が多様化したことにより、表現方法や求められるアプローチも変わって来た。
しかしドレスコーズはどんなにロックの解釈が変わろうがブレることはない。何故なら彼らはナチュラル・ボーン・ロッカーだからだ。

11月にリリースした2nd Album『バンド・デシネ』を引っさげ、同月21日 新潟GOLDEN PIGS RED STAGEよりツアー【More Pricks Than Kicks TOUR】がスタート。
全9カ所を回る今ツアーも12月7日(日)のSHIBUYA-AXでファイナルを迎えた。

リーゼント姿の丸山康太(Gu)がひとりステージに登場すると、おもむろにギターを弾き始め、菅大智(Dr)、山中治雄(Ba)が続いて登場すると、“どろぼう”のイントロと共に志磨遼平(Vo)が登場。
フラッシュライトがメンバーの顔を捉えることも出来ないほど激しく瞬くが、そんなのはお構いなし!ロックショーの始まりだ!


「アナーキー・イン・ザ・1K ぼくのぼくによるぼくの国家は ただ6畳一間の領土と家賃差し引いて残した国家予算」
トーキングスタイルで始まる“ゴッホ”の冒頭、オーディエンスの歓声が一瞬志磨の声さえ押さえ込む程強烈に響いた。
菅のリズムはオンビート、オフビートを繰り返しながら志磨の言葉と絡み合う。

ロック…といいながらこういう表現はどうかとも思うが、菅のスティックさばきはまるで千手観音のようだ。
スピードと自由度の神業を笑顔でやってのける。恐るべきキース!

「こんばんは、ドレスコーズです!【More Pricks Than Kicks TOUR】へようこそ!」
山中が軽く挨拶をすると、憂いのある“Zombie”に続き“SUPER ENFANT TERRIBLE”へ。
志磨はステージの端から端まで見回し、オーディエンスにもマイクを向ける。

「ただいま東京!こんばんは。僕らがドレスコーズです。今日の僕らはどうだい?良い曲ならいっぱいあるんだよ。最後まで楽しんで帰って。」
志磨のMCはどこか現実離れしていて、それは彼の立ち居振る舞い同様アーティストのオーラに包まれている。
少しだけ到来したボブ・ディランブーム中に作ったという“フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)”はエレアコとブルースハープで聴かせ、“シネマ・シネマ・シネマ”はアクターのようにオーディエンスへ手をかざす。
細かく刻まれるハンドクラップに「カモン、カモン!」と煽る志磨はあまりにも美しい笑顔で「どうもありがとう。」と丁寧なお辞儀をした。

「素晴らしいツアーだった。このツアーに関わった人、全部素晴らしかった。愛してます。」
志磨はそう言うと上着を脱ぎ「青春が終わったらその先真っ暗なんて嘘っぱちだと思うんだ。ジジィになるなら死んだ方がマシなんて嘘っぱちだと思うんだ。青春時代の先には黄金時代があって、それを僕らはハーベストと呼ぶんだ。」と続け、“ハーベスト”を歌う。
志磨の長い手足は 時にバレリーノのように、 時に破壊者のように、時にアクターのようにオーディエンスへ向けられる。

志磨は「終末はこれからだよ!」と言いながらスピーカーの上に登ったかと思えば、あっという間に反対側の端で投げキッスをしている。
加速する菅のリズムに志磨は足をもたつかせ倒れ込む。
しかしそんな志磨になおもドラムソロを浴びせかける菅のプレイにオーディエンスは沸いた。

「ダンスの準備はいいかい。ダンスしたいのは誰だ?じゃあダンスの相手は誰だ?ダンスの相手は僕じゃないよ。ダンスの相手は君の悲しみだ。ロックンロールは悲しみをちっとも忘れさせてくれなかった。でも君と君の悲しみとうまくダンスを踊れるようにしてくれたんだよ。」志磨らしい言葉の数々は “Teddy Boy”の切なくもポップなサウンドへ溶け込む。


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ジリジリとしたギターリフから“トートロジー”のサビへ盛り上がりを見せると志磨はフロアへダイブ。
オーディエンスの海に飲み込まれそうになりながらも「あげろ!」と言うと、その体は海上高く姿を見せた。

「どうもありがとう、渋谷。僕らの2013年ツアー最後の曲です。バイバイ渋谷、バイバイ2013」
ドラムが変則的なリズムを刻む中、志磨は本編最後の挨拶をすると目映い光の中でギターリフが “バンド・デシネ”を奏で、破壊ときらめきのメロディで本編は終了した。


アンコールでは菅と志磨が肩を組みながらおどけて登場し、一瞬の和みをみせた。

しかし、「最後だよ、ムチャクチャやろうよ。」という言葉通り“Automatic Punk”では、目眩がしそうなほどのフラッシュライトと赤く染まったステージ。
バスドラと山中のゴリゴリのベースラインが脳みそを震わせる。
“Silly song, Million lights”で聴かせてくれた深く優しい音色ではない。もっと骨を削るような直接的な挑発。
山中は更にオーディエンスを煽り続けると、菅も負けじとドラムを炸裂、丸山も体をもたげながらギターを歪ませ、オーディエンスは上昇しながらループする音の中で完全なる餌食となっていた。

志磨は倒れたマイクスタンドもお構いなしに踊る。
ひたすら続いた爆音が轟音へと変わる瞬間、全ての音は突然止んだ。
あんなセッションのようなプレイを同時に終わらせるなんてと、一瞬レポをとるペンの動きも止まってしまうほどだった。

圧巻のステージを前に、オーディエンスも半ば放心状態に見える。

静かに時が流れ、志磨は水を飲みその沈黙はどれ位続いたろうか。
「クズ担当の志磨遼平です。誰よりもクズの志磨遼平です。生きててごめんね!クズの志磨遼平です!クズのクズによるクズクズクズクズクズの為の最後の曲です!」と、その沈黙を破るようにクズを連発し、“Trash”を歌いながらも「クズクズクズ」とオーディエンスを指さすと「クズでごめんよー!!!」と叫びながら再びフロアへダイブ。

志磨が放り投げたマイクとギターのフィードバック音が彼らが退場したステージに響き渡り、【More Pricks Than Kicks TOUR】は幕を閉じた。




静かに流れる最後のBGMにはフレッド・アステア。



拍手を 拍手を。



カメラマン:松本時代
TEXT:秋山昌未

セットリスト

01.どろぼう
02. ゴッホ

03.Lolita
04. Zombie

05.SUPER ENFANT TERRIBLE
06. リリー・アン

07. フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)

08. Silly song, Million lights

09. シネマ・シネマ・シネマ

10. ベルエポックマン

11. We are

12. ハーベスト

13.Teddy Boy
14.(This Is Not A)Sad Song

15. トートロジー

16.バンド・デシネ

ENCORE

EN1. Automatic Punk
EN2. Trash

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