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長澤知之

長澤知之 "IN MY ROOM" TOUR 2014 東京キネマ倶楽部 2014.11.15

コンビニ袋をぶら下げた長澤知之は、背負ったギターを降ろして「ただいま。」と言う。それを観ているみんなは、笑顔で「おかえり。」と言う。



今年の4月からスタートした【長澤知之 LIVE ~IN MY ROOM~】(以下:IN MY ROOM)が、11月14日(金)の東京キネマ倶楽部を皮切りに【長澤知之“IN MY ROOM”TOUR 2014】として東京・名古屋・福岡・大阪の4都市5公演で開催され、11月23日(日・祝)大阪・世界館にてファイナルを迎えた。東京キネマ倶楽部では2DAYS開催され、筆者がレポートする15日(土)はSOLDOUT。前回8月にライヴレポートをした【N MY ROOM】ではステージと呼ばずにいたが、今回はあえてステージと呼ぼう。

ステージには2m40cm×2m40cmにも及ぶ長澤のアルバム『SEVEN』の巨大原画や、2007年にリリースしたミニアルバム『PAPER STAR』の人形、『長澤知之』シリーズ3作品などが飾られている。それでも相変わらず…いや、以前にも増して散乱した床の楽譜や、曲や詞を書きかけで丸めたであろう紙くずは、キャンドルの揺らめきやサボテンの生命力と共に、このステージに「長澤の部屋」を想像させる匂いを与えている。

“あんまり素敵じゃない世界”で音楽の幕を開けた。激しく掻き鳴らすギターの音と、伸びあがる長澤の声に耳を傾けるオーディエンス。
「『長澤知之III』という小さい企画アルバムを出しました。その中の1曲目に入っている“只今散歩道”という曲をやります。」そう言うと、自らこの曲のMV監督を手がけた長澤は「すごく楽しかったです。友だちが出てくれて一緒に喧嘩したりして(笑)。」と、笑顔を見せた。 軽快な口笛で始まる“只今散歩道”は、散歩好きな長澤の五感がメロディや歌詞を伝いながら路地のノンビリとした時間や、垣根をくぐる猫のシッポを想像させる。そう、音楽は想像力だ。長澤の楽曲たちにはいつもそれがある。



長澤の部屋にいるような感覚で、お酒でも呑んでリラックスしながら音楽をみんなで楽しみたいという【IN MY ROOM】の趣旨を改めて伝えると共に、来てくれたオーディエンスにどう振る舞えばよいか悩んだ時期もあったと語る。しかしすぐに「自然体で良いんだと最近は思っています。」と落ち着いた表情を見せた。それはオープニングで “あんまり素敵じゃない世界”を歌いながら、オーディエンスの顔を見回していた時の顔に似ていた。

そうこうしていると、ドヴォルザークの「家路」の音が流れ始め、その瞬間多分ここに居る殆どの人が共通に持っている子ども時代の夕方5時の風景を蘇らせだろう。公園の遊具目線で歌う“長い長い五時の公園”は、可愛らしく優しくその郷愁を見守っていた。次に歌った“宛のない手紙たち”は長澤の故郷、福岡にあるライヴ喫茶「照和」のことをテーマにしており、『長澤知之III』に収録されている。8月の【IN MY ROOM】でも、この曲が収録されるか会場から問われた程、ファンの心を揺さぶっていた。

音源では、人間頭部模型(通称ダミーヘッド)の外耳部分にマイクをセッティングすることで、ヘッドフォンなどで聴くと聴感上、長澤が目の前で歌っているような臨場感を感じられる「バイノーラル・レコーディング」という手法を用いられている。そして今、リアルに長澤が目の前で歌う “宛のない手紙たち”を、耳だけでなく、ここでしか感じ得ない空気を取り込むようにオーディエンスは聴き入っている。

また、“黄金の在処”から“バニラ”への展開はあまりにも美しく、ステージ中央に立ちながら歌う長澤が、まるでアクターにも見えた。と同時に、長澤が取材で【IN MY ROOM】の在り方について「空間芸術をしようと思っていた。」と語った言葉を思い出し、目の前の風景がガラリと変わって見えた。簡単に言えば角度というべきだろうか。これはかなり主観的な捉え方だが、それまで「ライヴ」という視点だったものが、蘇る原風景や言葉にすると壊れてしまう“何か”に彩られ、五感そのものが震え、密かなる興奮を覚えた。

ところで、この【IN MY ROOM】では、リストアップした曲の中からオーディエンスに1曲選んでもらうのがすでに恒例となっているが、今回は曲を書いた紙を紙飛行機にして客席に飛ばした。どうやら前日はうまく飛ばなかったらしいが、試作品を含め今回のかなり遠くまで飛び、大歓声&ドヤ顔の長澤。何だかそれだけで楽しい雰囲気だ。

その紙飛行機をキャッチしたオーディエンスは、“カスミソウ”を選曲。ファンの間でも人気の高いこの曲のチョイスに、再び歓声が飛ぶ。更に、このライヴを中継しているニコニコ生放送(以下:ニコ生)を観ている人からはカヴァー曲のリクエストを募った。カーペンターズ、中森明菜、井上陽水、エレファントカシマシの曲達から投票が行われ、エレファントカシマシの“月夜の散歩”に決定。曲中、「やばい、泣ける」「長澤さんには月が似合う」など様々なコメントが流れた。ニコ生中継が終了し、“無条件幸福”を歌い終えるとコンビニ袋からビールを取り出しオーディエンスと悦びの乾杯を交わす。「美味しい!!やばい!」と笑顔。

「デビューして8年目ですが、福岡に居た時はあまりやることがなくて。でもやっぱりやることがあると嬉しいなぁと、ふと思いまして。」と、音楽を通じてこうやってみんなと交流できることに「ありがとう。本当にありがとう。」と何度もありがとうを繰り返した。


「なんか、一人で演っていてもつまらないので…バンドが居ればいいな。」長澤がそう言った瞬間、タナカジュン(Dr)、松田FIRE卓己(Ba)、西川進(Gr)が登場!(しかも西川に至ってはスポットを浴びながら2階の螺旋階段付近から登場したので、更にインパクト大!)

大正時代のダンスホールを設定された会場、もしくは長澤知之の部屋は一気にライヴハウスそのものとなり、“THE ROLE”、“Blue Blue”でオーディエンスも総立ち!その熱狂も覚めやらぬ中、公式サイトでも事前告知されていたように“シャウト”ではオーディエンスが携帯片手に演奏を録画。これは同曲のPVとして使用するもので、ある人は完全にノッた状態で、ある人はじっと動かぬように息を潜めながらと、それぞれの視点から長澤を録り続けた。曲が終わるとある種の一体感の中、長澤はオーディエンスに、オーディエンスは長澤へ拍手を贈り、“誰より愛を込めて”で本編が終了。

再びバンドメンバーと共に登場したアンコールでは、“享楽列車”を披露。「大丈夫だよ 大丈夫」と歌う長澤の声は、都会の喧噪が生み出す暖かな孤独感に似ていてほっとする。そして【長澤知之“IN MY ROOM”TOUR 2014】の2日目は、デビュー曲“僕らの輝き”で幕を閉じた。

text by 秋山昌未


■ 長澤知之NEWアルバム「長澤知之III」11月25日リリース!!
「長澤知之III」の視聴はコチラ

■ 長澤知之III
iTunes
Augusta Family Club
 
■ Official Website:
http://www.office-augusta.com/nagasawa/

 

セットリスト


M01. あんまり素敵じゃない世界
M02. スーパーマーケット・ブルース
M03. 只今散歩道
M04. 茜ヶ空
M05. 長い長い五時の公園
M06. 宛のない手紙たち
M07. 黄金の在処
M08. バニラ
M09. カスミソウ
M10. 月夜の散歩
M11. そのキスひとつで
M12. 風を待つカーテン
M13. そこぬけ
M14. 24時のランドリー
M15. 無条件幸福
M16. いつものとこで待ってるわ
M17. 回送
M18. フラッシュバック瞬き
M19. THE ROLE
M20. Blue Blue
M21. シャウト
M22. 誰より愛を込めて

Encore
En1. 享楽列車
En2. 僕らの輝き

 

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