元気ロケッツ「GENKI ROCKETS II 〜No border between us〜」インタビュー Page2


ー 今作は、今迄のデジタル的要素だけではなく、生ギターやアコースティック・ピアノなどの、生の質感での新たな元気ロケッツの世界を感じました。

玉井:水口さんが、"フューチャー・ネイティブ" という言葉を、ある時ぽろっと言ったんですが、僕はそれにすごく反応したんです。昔、僕らが子供の頃に、21世紀の未来予想図をアニメとかでよく観ていたんですよ。空中タクシーとか。

水口:透明なチューブの中を車が走るみたいなね(笑)

玉井: ああいうのを想像しながら大人になった今、全然そういう風にはなっていないけど、元気ロケッツが一番最初にライヴでやったホログラムや、3Dのように進化しているものも沢山あって、実際の未来をきちんと想像した上で、先ほどのLumi目線というのが出てくるんです。 宇宙で生まれたLumiが、後づけで地球の歴史を知るとして刺激的だと感じるのは、きっと今回取り入れているような生楽器の音だと思うんです。例えばストリングスもそうですし、生ギターの音やアコピの音色が理屈ぬきに気持ちいいと感じる。Lumiは「デジタル」と同じ目線でそういう生楽器や民族楽器を見ているだろうから、その視点から考えて、いいと思える音を取り入れてみたかったんです。

水口:結局デジタルのプロセスで音楽も映像も作っているけれど、僕たち自身、アナログ感のあるものが好きなんですよ。それと、" -No border between us- "ではないですが、ちょうど真ん中にあるフュージョンやハイブリット感を目指しています。だから『元気ロケッツ I -Heavenly Star-』から約3年半経った今の気分や時代背景などが、音楽性にも歌詞にも反映されていると思います。少し先の未来を常に描き続けるのが元気ロケッツの面白さでもありますし、今後も僕らは想像した世界を現実のものにしていきたいです。


ー お二人は、シナスタジア感というものをとても大切にしていらっしゃいますが、そこをテーマに掲げるきっかけというものがなにかあったのでしょうか。

水口:エンターテイメントというのは、夢を見せるのが仕事だと思うんです。そこには音楽と映像とメッセージがあって、気持ちよくポジティブに、何度聴いても観てもやっぱりいいと思える。その感覚が馴染んできたころにメッセージがすっと入ってくるような、生理的な気持ち良さの演出のひとつとしてシナスタジアというのは大切だと考えています。でもこれは別に新しいことでもなく、100年前のアーティストが使っていた言葉なんですが、いかに感覚が交差したような状態になれるか、それって結局想像やイマジネーションをどう引き出して刺激するかということだと思うんです。音をずっと専門でやってきた玉井健二と、映像やインタラクティブな世界でやってきた水口哲也が交差するところで起こるクリエイティブな新しい表現や科学反応みたいなもの、それこそシナスタジアという言葉が引っ張って行ってくれている気がします。

玉井:僕らがシナスタジア感と常に言っているのは、今の時代すべてのエンターテイメントに必要なことだと実感しているからなんです。それをアーティスト個人のパフォーマンスに委ねるか、元気ロケッツみたいにクリエイター目線でイメージを想像して、そこに色々な技術やノウハウを駆使しながら具現化していくかという違いだけ。


ー では改めて曲のことについてお伺いします。「Touch me」では "あなたにそばにいてほしい"  "手と手をつないで歩けたらどんな感じだろう?" というリリックに、Lumiの恋心を感じたのですが。

水口:確かに Lumiには気になっている人がいます。 実は世に出していない、僕と玉井健二しか知らない物語がありまして、すべての歌詞はその物語の中から切り出されているんです。その物語にのっとってお話すると、Lumiは地上に降りたくても降りられない事情があるんです。Lumiのイメージの中ではそれこそハイビジョンや3D映像を通じて地球を知ってはいるけれど、実際に体験はしていない。例えば地上に立って風に吹かれるという僕らにとっては当たり前のことがどういうことなのか分からない。彼女にそういう憧れていることが沢山あるんです。そういう事柄が掛け合わり、この歌詞は出来ました。

玉井:まさに "Touch"という言葉からこの曲のイメージは出来ました。タッチパネルの出現と進化によって、指先で触るだけで色々な世界に行けたり、色々なものが見られる。
洋服を選ぶのも簡単に出来るわけじゃないですか。 でも、実際に触れているのは画面ですよね。


ー 確かに。

玉井:触ってもいない服を買うことが良い悪いではなく、面白いと思うんです。ただ、実際にそのものに触れるという行為が今、実は貴重なことなのかもしれないと感じています。


ー「Curiosity」でも未知なる可能性への憧れを感じながら、今迄にあまりなかった孤独感も感じました。

水口:まさにこの曲は、内包した孤独を書いています。これも今の時代の象徴となっていますが、現代はネット社会の中に意識が入っていき、体が置いてきぼりということが多い気がします。曲も歌詞もポジティブでほぼアップサイドのみのアプローチに徹した前作『元気ロケッツ I -Heavenly Star-』ではそれが大きく占めていましたが、今回の「Curiosity」はそこからもう少し成長したLumiの姿として孤独というテーマを描きました。タイトルの「Curiosity」は "好奇心"という意味なんだけど、好奇心を持ち続けることがいかに大切かということを歌っている曲で、 身体性と意識の中で自分のアイデンティティをどう持つかという部分にポイントがあり、 今迄とは違う角度からの応援歌でもあります。

玉井:今、孤独だと感じていて、それが生きる上で問題になっている人がいるとすれば、それを解消しようとする場合、今迄なら友達を増やすという手段だと思うんですが、実は人と繋がる、コネクトするというのはそれだけじゃないという部分を切り取った作品でもあるんです。


ー 実際、SNSなどの普及で会ったことのない人同士で深い話をしたり、その人の存在が心の支えになったりということはよく聞きます。

玉井:意識って、勝手に結び合うじゃないですか。そこに狙いや計算があるということではなく、単に繋がり、無作為に呼び合う。それがもしあるとしたら、それは決して孤独ではないと思います。


ー「make.believe」でも信じる力や想像力を歌っていますよね。"思考と精神に限界は無いから" というリリックがその象徴のように思えます。

水口:イメージする力に限界はないし、そこから全ては始まりますから。

玉井: 色々な未来や新しい価値観を想像してたいんです。空を飛びたいと思ったから飛行機を作り、家でゲームをしたいと思ったからプレイステーションを作った。そういうのをきっかけに僕らはまた想像して、5.1chや3Dで作品を作るんです。音楽が前後左右から聞こえたら面白いだろうなとか、絵が飛び出てきたら面白いだろうなとか。そういうことを次の未来に向けてやっていくことが元気ロケッツのひとつの役割だと思っているんです。元気ロケッツに触れることでポジティブに感じてもらえると嬉しいと思っています。


ー これは極端な話ですが、もしお二人が今、「発想力や想像力」と「現在あるノウハウや機材」このどちらかを失うとすれば、やはり前者を失う方が怖いですか?

水口:そうですね。 何かが消えても想像力がまた次の何かを生み出しますから。今回の地震や津波もそうですが、気持ちがあればきっと復興や再生も可能だと信じています。僕らの役割はその気持ちを刺激しつづけることだと思うんです。60年代、オノヨーコさんが「ひとりで見る夢はただの夢。みんなで見る夢は現実となる」と言っていたんですが、勿論今はあの時代とは違うと思うんです。でもきっと今の時代のメッセージはすごく必要だと思います。


 

アーティスト情報

元気ロケッツ「GENKI ROCKETS II 〜No border between us〜」インタビュー Page2
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LOUD 200th Issue Anniversary Party-「 WOMBLIVE ONE SPECIAL LIVE×LIVE」

会場:WOMB

日時:2011年9月10日(土)
OPEN 14:00 CLOSE 21:00

料金:前売り ¥2,500 / 当日 ¥3,000
※入場時、別途ドリンク代¥500

アートアクアリウム展 江戸・金魚の涼 「ナイトアクアリウムミュージアムラウンジ」 ナイトアクアリウムミュージアムラウンジ最終日SPECIAL EVENT!!

会場:日本橋コレド室町 三井ホール4F

日時:2011年9月12日(月)
OPEN 21:00 / LIVE START 22:00

料金 : 3,000円 / フライヤーご持参の方:2,500円

■ Link

元気ロケッツ 公式HP:http://www.genkirockets.com/