ー c/wの“東京”ですが、ギターの弦を擦る音など質感の生々しい感じとパーソナルな歌詞の世界観が個人的にも好きな曲です。

ありがとうございます！僕の歌は大きな世界観の歌詞が多いので、もっとちっちゃいことばかり歌いたいと思っていたんです。でもそれがなかなか出来なくて。だから東京へ来て自分の部屋から見えるものだけを歌にしたいなと思い、本当に15秒くらいの間に感じたことを歌にしてみました。楽曲としては、上京してきた主人公のように感じるけれど、実は友だちが上京してしまって、地方にまだ残っている主人公が東京へ行っちゃった人のことを想っている歌でも良いんです。


ー 確かにそう言われると、どちら側の立場でも感じられる歌詞ですね。

そう。だからどうとでも捉えてもらえるんじゃないかな。タイトルは“東京”だけど、歌詞の中には何ひとつ東京らしいワードは出てこないし。まぁ僕自身は京都出身ですが、ライヴで東京には何度も来ていますし、場所がどうこうというよりは地元を離れてこっちに来た記念というか、来たんだからこういう歌が書けるようになりたい！そしてギターも、もっと頑張りたい！という部分もあります（笑）。


ー なるほど（笑）。この曲の「遠い遠いどこかで暮らす君が ちゃんと泣いていれば いい」という歌詞の「ちゃんと泣いて」という部分がとても気になりました。

僕が関西にいる間、先に上京した人たちが沢山いるんです。それはミュージシャンだけでなく、アイドルだったり俳優だったり。でもそういう人たちが色々我慢しているって言うんです。僕は我慢が得意ではないので、すぐ文句言ったりしちゃうけど（笑）、久しぶりに関西に帰って仲間と飲みに行ったら、「しんどい。」って言って、ボロボロ泣いているようなやつもいて。でも「そういう気持ちも堪えない方がいいんじゃないの？」という気持ちも含めて「ちゃんと泣いていればいい」という歌詞を書きました。


ー すごく腑に落ちました。いいですね。「ちゃんと泣いていればいい」って。浜端さんは我慢しない方なんですね（笑）。

特に出来ない方です！すぐ泣くしね（笑）。


ー そうなんだ（笑）。そして、“むかしのはなし”と “ハレルヤは、共にインディーズでの既発曲ではありますが、何故今回この2曲を入れようと思ったんですか？

知らないです。


ー えー！

いやいや（笑）。実は収録曲を決める時にマネージャーに「ラインナップはこの曲たちで良いと思うんだけど。」と言われたんです。でも年代的にも散りばめられていて嬉しかったです。“結-yui-”や“東京”は最近出来た曲だし、“むかしのはなし”と“ハレルヤ”はライヴでも毎回歌っている曲なので、むかしから聴いてくれている人たちへ対しての気持ちもある。今の僕のレパートリーとしてもピアノの曲とファンクな曲、ポップ以外のもっとルーツ的な部分のチョイスであれば、あってしかるべきなのかなと思いました。


ー “むかしのはなし”は、「思い出しただけ」と言っている言葉が、その通りにも感じられるけど、どうも負け惜しみとも感じて（笑）。

最後繰り返してるところが嘘臭いですよね（笑）。


ー そうそう（笑）。ちなみに浜端さん自身は、恋愛だけでなく何かあると引きずるタイプですか？それとも、「はい次、次！」っていくタイプですか？

「はい次、次！」っていくタイプです。


ー それはちょっと意外でした。色々な楽曲の歌詞を観ていると、もう少し…

粘着質？


ー 粘着質って！（笑）。例えば想い出とかに浸って、写真とかも捨てられないタイプなのかと勝手なイメージを持っていました。

めっちゃ捨てます（笑）。服とか車とかも何も拘らないです。でもそれは冷たいとかいうことではなくてね。


ー はいはい。

この間も、ちょうどギターケースの肩ひもがちぎれてしまって買い替えたんです。あれを背負って日本中を回るわけじゃないですか。だから仲間の中にはすごく想い出を持っている人もいるんですが、「あ、切れた！替えよう。」って新しいの買って、そのお店で古いのを処分してもらいましたもん。


ー えー！！！

逆にうちの母親はすごく拘るので、全部取ってあるんですよ。でも僕は、新しく買い替えるものに対して、今迄使ったものが進化してこうなったんだから、僕はこれからこいつを愛すねん！というだけで良いと思っているんです。でも大切にしないわけではないんです。例えば車だったら、車中で寝たこととか色々想い出もあるし。でも想い出は想い出としてあれば、それが新車となって進化したと思えばいいのかなと。しかも新しいものの方が便利だし（笑）。


ー まぁ確かにそれは（笑）。私は “むかしのはなし”の主人公のような感じかと思っていました。

この人は引きずっている人ね（笑）。まぁ昔はこうだったかもしれないけれど、昨年あたりは本当に目紛しかったので、色々なものを引きずっていたら邪魔になるから。


ー 生活環境が変わると考え方も変わったりしますよね。

変わりますね。

ー サウンド面ではカウントから始まり、ゲンタさんのパーカッションとのセッション的なライヴ感がいいですね。

これ実際にゲンタさんと向かい合わせで、せーの録りして歌まで一緒に録っちゃったんです。


ー まさにライヴだ！だから一番最後の息を抜く声も入っているんだ！

よく聴いてくれてますね（笑）。あの「はぁ〜」っていう部分はカットして下さいって言ったんですが、「あれは入れよう、入れよう！」ってなっちゃって（笑）。


ー あれは絶対あった方がいいですよ！あの、息が漏れる間のほんの数秒間の沈黙が、呼吸を止めてるような緊張感を感じるというか。

そう言ってもらえて良かったです。この曲は2回くらいで録り終わったんです。“ハレルヤ”も、一度サウンドチェックして本番録ったらそれで終わりでしたし。

＜スタッフ＞“結-yui-”以外の3曲は1日で録り終えたんです。


ー 早い！ちなみに既発されている“ハレルヤ”の音源は、オルガンをメインにしたバンドサウンドで、ブルースというかゴスペル色が強かったですが、今回ピアノのみでの弾き語りにした理由は何かあったんですか？

リードトラックはしっかりと作り込んで、c/w曲は弾き語りにどんどん近づけていく。そうやって音の対比を設けようという感じでした。聴いてもらう人にとっても、弾き語りが一番歌に集中してもらえると思いますし。確かにこの曲はゴスペルっぽいアレンジにしたい曲ではあるので“ハレルヤ”というタイトルでもあるのですが、それは後々みんながこの曲をもっと知ってくれて、「この曲いいね。」ってなれば、また違うアレンジもあるかもしれません。


ー 最後にmFound読者のみなさんへ一言お願いします。

僕はずっと読んでいる側の人間だったんですが、この度このような運びになりましたので「なんじゃこいつは？」というところからお読みいただき、歌も是非聴いて下さい。よろしくお願いします！


ー ありがとうございました！


取材・文・写真：秋山昌未


■ 結-yui- MV
前編
http://www.youtube.com/watch?v=
ePUn6x6HCD0&list=RDePUn6x6HCD0#t=0
後編
http://www.youtube.com/watch?v=
hl4tVtZbaA0&index=2&list=RDePUn6x6HCD0

■ 公式ウェブサイト
http://www.office-augusta.com/yohei/