—— 初めてのベストアルバムの話をお聞きする前に、ケツメイシの「これまで」を振り返ってもらえればと。たとえば、漢字ひと文字で現すとどんな感じのこれまででしたか?
大蔵:僕がパッとイメージしたのは「遊」でした。ケツメイシって、遊び心から始まったグループのような気がするんですよね。
DJ KOHNO:俺は「欲」。なんか、いろんな欲がモチベーションの根底にあったような気がするから。
RYOJI:いや、「逃」でしょ。ケツメイシと言えば逃げ続けたグループですよ。なにから逃げてきたのかはわからないけど、「走」というよりは「逃」って気がする。パトカーが通ると、なんにも悪いことをしてないのに、なんか逃げちゃうみたいな。
RYO:ってことは、ケツメイシは「遊」んで「欲」深くて、なにかから「逃」げてきたグループだと。……最低ですね(笑)。
3人:ははははは!
DJ KOHNO:そういうRYOさんのイメージは、なんなんですか?
RYO:「緩」。リリースとかに関しても自分たちのペースでやれたし、そういうのが「緩」くて良かった気がする。同時期にデビューした人たちのなかには、ものすごく早いリリースペースで疲弊しちゃってたりもしていたから。たしかにケツメイシは、「遊」であり「欲」であり「逃」だったけど、トータルして「緩」かったのが、いままで続けてこれた理由のような気がする。
——「緩」とはいえ、ケツメイシには名曲がたくさんあるからこそ今回のベストアルバムのリリースとなったと思います。でも、なぜに『春BEST』『夏BEST』『秋BEST』『冬BEST』という、怒濤の4枚同時リリースとなったのか。その経緯を教えてください。
RYOJI:ま、やけくそって言えばやけくそなんですよね(笑)。ただ、季節と共にあるアーティストだとは思うので、単純に年代ごとにまとめるのは魅力がないだろうと。だったら、春夏秋冬の季節ごとにわけて、4枚に収録する曲は自分たちで選んじゃえみたいな。
大蔵:で、メンバーも4人なんだから、各季節ごとの担当制にしてその人が曲順を決めようとなったんですよね。
DJ KOHNO:そうなると、大蔵さんは夏だろうと。RYOさんはなんとなく冬で、RYOJIさんは「秋がいい」つって。「じゃ、僕、余ってるんで春やります」という感じで。
—— では、それぞれが曲順を担当したアルバムごとに、思い出の1曲ってヤツを教えてください。
RYO:僕の担当は『冬BEST』だったんですけど、とくに思い出深いのは『こっちおいで』ですかね。インディーズ時代の初めてのシングル曲なんですけど、プレスしたのがわずか440枚で(笑)。その後、インディーズで2枚のシングルを出すんですけど、プレス枚数が2000、7000と増えていったんですよ。そんなタイミングで、僕以外のメンバーから「メジャーで勝負しよう!なんでRYOさんは会社辞めないんですか!?」とえらい勢いで詰められまして。
大蔵:すげぇ覚えてる! そのあとで、「バカじゃねぇの? 音楽で食えるわけないじゃん」って言われたのも覚えてる。
DJ KOHNO:俺も覚えてるなぁ。渋谷と原宿の中間ぐらいにある居酒屋でしょ?
RYO:違う違う違う。表参道の角のファーストキッチン。……の、一番角の席。
3人:はははははは!
—— ケツメイシそのものが春の来る前の冬だった頃のエピソードですね。では、冬に続く季節である『春BEST』担当のDJ KOHNOさんの場合は?
DJ KOHNO:「幸せをありがとう」ですね。当時、『ケツノポリス3』のアルバム合宿をやってて「この曲はあとまわしね」なんてみんなが言うから、他の曲から作っていったんですよ。で、『幸せをありがとう』のセッションの番になったら、もう曲が完成していて。俺に内緒でいつの間に作ってたんだろうと思ったら「お前の結婚式で歌うつもりだったんだよ。ただ、大蔵の歌詞が間に合わなくて式では歌えなかったんだ」と。嬉しくてビックリするやら、大蔵に「そこは間に合わせてくれよ!」と思うやらで(笑)。
大蔵:僕は『夏BEST』の担当なんですけど、その中での思い出深い1曲はですね……。
DJ KOHNO:スルーかよ!
RYOJI:そうだよ。あの時のお前はひどかったんだから。罰として、思い出深い1曲じゃなくて、なんかおもしろいことを言いなさい。
大蔵:え〜ッ!? ……えっとですね。あ、おもしろいかどうかは別にして、2011年のツアーでやったコントは、プレッシャーでした。コントをやるというのが初めての経験な上に、最初の公演が笑いの本場である大阪だったんですよ。ネタをアンタッチャブルの柴田さんが書いてくれて演出も面倒みてくれたんですね。で、ほかのメンバーは全員ボケなんですけど、僕がツッコミのポジションを任されて。最初に柴田さんがツッコミで、みんながボケるっていうお手本を見せてくれたんですけど、めちゃくちゃおもしろかったんです。ところが、僕がやるとまったくうまくいかない。ほかのメンバーは解散となっても僕だけ残ってツッコミの練習をして。音楽活動では経験したことのない、人生初の居残り練習でしたよ。
3人:ははははは!
—— では、ラスト。『秋BEST』担当のRYOJIさん、お願いします。
RYOJI:1曲だけ選ぶのは、すごく難しいですよね。それぞれの曲が生まれた背景に秘話というか、物語がありますから。自分が担当した曲順で言うなら、「東京」と「街並」という曲の並びにはこだわりました。その2曲はどっちもあって初めて成り立つと思うんですけど、だからこそ、その2曲を続けたくなかったんですよね。あとは……「花鳥風月」も衝撃的でした。僕らは、ヒップホップアーティストだとかラップだとかのジャンルについていろいろと言われたグループなんですけど、そういうことじゃなくて、「自分たちにもこういう作品が創れるんだ!」という衝撃。その後のケツメイシの可能性がみえた曲だったと思いますね。
—— 今回のベストアルバムで、ひとつの区切りがつくからこそ、ケツメイシの今後がさらに楽しみです。で、これからのケツメイシに一番必要なものはなんだと考えますか?
RYO:「若さ」と「躍動感」でしょうね。年齢的なそれはどうしようもないんだけど、いろんな攻め方があると思うんですよ。我々も人生の折り返し地点にきてますから。パッとわかりやすいものではないけど、ジワジワとくる躍動感なら目指せるんじゃないかと思うんです。ジワジワ世代によるジワジワ〜とした躍動感。……いや、違うな。ジュワ〜だな。ジュワジュワ世代によるジュワ〜とした躍動感を目指したいですね。
DJ KOHNO:RYOさん、ジワジワ〜でもジュワ〜でも、どっちでもいいですから(笑)。ただ、俺が思ったのも「やんちゃ」でした。
大蔵:僕も「勢い」と「下心」です。
RYOJI:ってことは、今後のケツメイシに一番必要なのは「合コン」ってことだよね。
3人:……え?
RYOJI:いや、振り返ると、僕らは『ケツノポリス3』までは我の張り合いがすごくて、喧嘩もあり、決して仲のいいグループではなかった。素人の延長線で音楽と向き合っていた時期で、そうすることでしかなにかを生み出せなかったから。でも、最近では喧嘩をしなくてもお互いを高める術を身につけたんだけど、落ち着きすぎるのもどうかなぁと。だから、合コン。メンバー4人で、お目当ての女の子を奪い合うみたいな。というわけで、ケツメイシは合コンしてくれる素敵な4人組の女の子を絶賛募集中です(笑)。
ライター/唐沢和也
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