ー 今、メインストリートというお話がありましたが、それでもLOVE PSYCHEDELICOがデビューした11年前頃は、それこそ洋楽テイストなものや、まして英詞というのは、かなりの挑戦だったじゃないですか。
KUMI:あんまりなかったね。
ー でも今はTHE BAWDIESさんもそうですが、自分のルーツミュージックを前面に出しながら、きっちり昇華しているバンドが増えてきましたよね。
NAOKI:うん。よかった、よかった!
KUMI:私達がデビューした頃よりは聴かれている音楽のジャンルも幅広くなってきているし。
NAOKI:そうだよね。俺たちデビューした頃、完全に異端児だったからね(笑)
ー 異端児って(笑)
NAOKI:レコード会社の人にも「これ、このまま英語でいくの?」って聞かれたりしましたもん(笑)
KUMI:でも今は色々ある。R&BだったりHIPHOPだったり。レゲェっぽいのもあるし。
ー そういう意味では、聴く側もアーティストも洋楽や邦楽の隔たりがなくなりましたね。
KUMI:うん、全くないですね。言葉も、日本語英語関係ないし。
ー さて、今作「It’s You」はフジテレビ系 火曜よる9時ドラマ「絶対零度〜特殊犯罪潜入捜査〜」のメインテーマですが、シングルとしては5年ぶりの書き下ろし。タイアップをつけての書き下ろしというのは珍しいですよね。
KUMI:そうですね。
ー しかもシングルカットという形ですし。
NAOKI:ほんと、LOVE PSYCHEDELICOと、コーネリアスは全然シングルカットしない(笑)
ー あはははは
NAOKI:小山田君、シングルは20年位出してないって(笑)
KUMI:(笑)まぁ、今回はファーストシーズン(「絶対零度〜未解決事件特命捜査〜」)の流れでというのは勿論ありました。もともと自分達の「dry town(アルバム LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA収録)という曲を是非ドラマに使いたいというお話からスタートしていて。
NAOKI:あの時は、一度出ている曲なので「2010年ヴァージョンとしてリミックスできないか?」という話だったんですよ。
KUMI:そうだったね。
NAOKI:でも、リミックスはやらないという自分達のポリシーなので、それだったら映像作品に合う新しい「dry town」をもう一度編曲し直して、イチからレコーディングをし直しますということで、リテイクというかセルフカヴァーという形で「Dry Town 〜Theme of Zero〜/Shadow behind」をリリースしたんです。
ー リミックスをやらない理由は?
KUMI:基本的に作った楽曲に対してミックスは一通りしかないと思ってるから。
ー じゃあ、そこに当てはめた音がそこから外れること自体が、もう違うこと?
NAOKI:違うね。
KUMI:でもそういう中でもプロデューサーさんは、ドラマの為に書き下ろしてほしいというより「一緒に何かを作ろう」という意識が強い方なんですよ。
NAOKI:コラボレーションだね。だから「こういう風にしてほしい」という要望は一切なかった。ただ、震災もあった中でプロデューサーさんに「前回はシリアスなドラマが作りたかったんだけど、それに比べて今の時代は夢と希望がある話にしなきゃいけないと思うんですよ。」って言われたんですよ。その時、僕らはレコーディングに入っていて、何曲か作っていたところだったんですが「僕らも今そういう気分です。やっぱりこういう時にエンターテイメントが出来ることとして、少しでも元気になって欲しいという想いを作品で示した方がいいと思うし」という話から色々話して、それなら、そういう曲を作りますということになったんです。
ー それは確かにコラボレーションですね。そういう作り方だとドラマを離れても楽曲としてのパワーがある気がします。
NAOKI:そう! ドラマだけではなくて、震災もあったので全ての人に向けたエールなんです。それも「頑張って!」ではなく「一緒に頑張ろう」っていうね。勿論ドラマの主人公に対してのエールでもあるし、震災で今歯を食いしばって頑張っている人たちへのエールでもあるし。でもそれとは全く違う場所、違う問題で苦しんでいる人へも届くような歌詞のバランスは考えました。そういう意味では聴く場所を限定しない聴き方ができるんじゃないかな。きっと10年後に聴いたら10年後の応援歌になっているだろうし。
ー 確かに、今はどうしても震災にのみ目が向きがちで、それは大切なことではあるんだけれど、生きている中での苦しいシチュエーションって色々ありますからね。
NAOKI:うんうん!
ー だからなのか分からないのですが、今迄は英詞と日本語詞の境界線の曖昧さを楽しむような心地よさというのを感じていたんですが、「It’s You」はもっと日本語詞が浮き彫りにされている感じがしました。
KUMI:それは意識しました。伝わりやすさとストレートさ、シンプルであることというのはメロディラインも含め意識しました。日本語の歌詞もそうですが、英語の歌詞も分かり易くしたいと思ったし。
ー 歌詞の、”You and I 一人じゃない” というダイレクトなアプローチを経ての” Look up the sky ” に、この曲が言わんとしている全てを感じたんですが。
KUMI:まさにそうだね。
NAOKI:みんな同じ空の下で生きているから、例えば震災にしたって「頑張って」じゃなく「同じ空の下で僕たちも頑張っているから頑張ろうよ」っていう感じ。
LOVE PSYCHEDELICOオフィシャルHP:http://www.lovepsychedelico.net/