昨年、シングル『彼に守ってほしい10のこと』でメジャーデビューし、同年11月には2ndシングル『ザクロの実』をリリース。そして2015年2月25日、メジャー1stアルバム『はなしはそれからだ』をリリース。声の特徴だけでなく、こだわり抜いたサウンドや歌詞で、繊細さやユーモア、パワー、毒など様々な面を見せてくれた。そんな植田真梨恵に、アルバムのことを中心に楽曲への想いを訊いてみました。


ー 2月25日リリースの1stアルバム『はなしはそれからだ』は、メジャーになって初めてのアルバムですね。インディーズ時代と気持ちの面で変わる部分はありますか？

本当に自分の趣味嗜好の近いところ、例えば自分が好きなものや良いと思えるものなど、気持ちの面で「こういう風に作っていきたい」という意味では、変わっていっている部分があると思います。これは後々になって気がついたんですが、インディーズの頃はただただ自分が思っていることや、自分が抱えきれない想いを曲として吐き出している部分が大きかったんですが、最近は偉そうな意味ではなく、毎日頑張っている人に書きたいとか応援したいとか、本当にそういう風に思って書く曲が多くなりました。だから今回のアルバムも、聴いてくださる方のことを考えて作った作品になったと思います。


ー そういう意味では、リスナーとより繋がれるようになってきたのかな？

そう思います。


ー では、技術的な面での変化は？

ヴォーカルに関しては分かりませんが、レコーディングではひとつひとつの録りを一生懸命ディレクションさせていただいたので、今迄分からなかったとこが色々見えるようになってきました。例えば楽器の音作り。スネアやアンプを選ぶところから意見を言わせて頂いて、本当にひとつひとつが勉強でしたね。


ーそのアルバム『はなしはそれからだ』ですが、ほぼ全曲の音源は聴かせていただいていたんですが、“Intro”だけは昨日（取材時）、いただいたばかりのホヤホヤで。

遅くなってスミマセン！！


ー いえいえ（笑）。この曲って、右と左で違う台詞を言っているでしょ。

はい。


ー 思わず、「何って言っているんだろう。」ってヘッドフォンを右、左ってズラしながら聴いちゃいました（笑）。

そうしてくれたんですか！嬉しい！私はそうやってくれている人の姿を考えながら作りました。でも、聴きとれました？


ー いや、音が混ざり合う部分もあるから全部は聴き取れなかった。

そうですよね。


ー でもこのアルバムのラストナンバー“さよならのかわりに記憶を消した”では、似たようなイメージを違うアプローチで表現していたり、タイトルナンバーがないのに対して、“Intro”でタイトルを伝えている。総合的なテーマ性を感じたのですが。

これはインディーズの頃から変わらない想いですが、アルバムはなるべくひとつの本のように、1枚を通してきちんと聴いてもらえるものにしたいと思っているんです。今回、“さよならのかわりに記憶を消した”を最後に収録することは決めていたので、そこに繋がっていくような作品にしようと思っていました。あとCDジャケットのデザインでは部屋をイメージしたんです。マンションって同じ間取りなのに住む人が違うと全然違う部屋になるじゃないですか。


ー 違ってきますね。

その中の一室は真っ白な部屋で、外が全部宇宙みたいな感じ。何もないところからすごく遠くまで繋がるようなイメージで作りたいと思ったんです。まずどんな無謀なことでもそれを想像するところから始めて欲しいと思い『はなしはそれからだ』というタイトルにしました。扉を開くと思いがけないところに繋がっていたりする。どの曲にもそういう想いはあるんですが、物ごとの移り変わりの中でも変わらずに大切にしていることを表現したいと思って作りました。ジャケットは、中を開くとマンションみたいに色々な部屋があるデザインにしているんですよ。


ー それは面白いですね！今作は色々な意味で音楽的にもバリエーションに富んでいるので、本当に小説を読んでいるようでした。

ありがとうございます！


ー 例えば“FRIDAY”。キュートさもありつつ、カッコ良さもある。この曲はすごく好きです！

ほんとに？！良かったー、嬉しい。


ー 耳のためにはあんまり良くないかもしれないけど、この曲は爆音のヘッドフォンで聴い　てほしい（笑）。

はい（笑）。この“FRIDAY”は、本当に無謀と思えるところまで飛び立っていける想像をしました。隣では、超高性能の新型ロケットがビューッて飛んで行くところを「おー！」って見ながら、こっちはこっちで試行錯誤しつつ、引っ張り出してきた古い飛行船のオモチャを「宇宙まで飛べー！」って言っている（笑）。その位手作りで楽しくて希望に溢れながら、でも決してふざけているわけではなく本気で目指している。そういう場面を想像しながら作った一曲です。飛び立つという意味も匂わせたくて“FRIDAY(フライデー)”というタイトルにしたんですが、植田真梨恵としても新しい世界な気がしています。


ー こういうタイプの曲は、ともすると勢い重視になることも多いと思うんだけど、この曲はBPMを上げずにノリを出しているところが凄いですよね。

ありがとうございます。ちゃんと言葉が分かるような曲を作りたかったんです。ワーー！！って勢いで歌っちゃうと、歌詞で何を言っているか分からなくなっちゃうじゃないですか。


ー そうそう（笑）。

私は今、そうやってワーー！！ってテンションが上がる曲というよりは、歌詞を知らない人が聴いても、何を言っているのかがきちんと伝わる曲を書きたかったんです。だから一言一言皆さんに届くように歌いたいと思っています。この曲も今、不安なことがあったり、勝負ごとの前に聴いて「頑張ろう！」と思えるような曲にしたかった。