GENERAL HEAD MOUNTAIN 3.22@代官山UNIT
坂を降りると左手に見える代官山UNITのオレンジ色の看板。夕暮れのライブハウス独特のだるさと賑わいの中、ライブハウスの中に入るとステージの正面には「GENERAL HEAD MOUNTAIN」のロゴが入ったステージバナー。
GENERAL HEAD MOUNTAIN…通称ジェネ。
オーディエンス…というよりは「お客さん」と言ったような大人しそうでお洒落に気を使った若者達が、おしゃべりをしながらスタートを待つ。
SEの「花にカルテット」にのってゆっくりとメンバーが入ってきた。
前にいた観客達が「おー!」という歓声と共に腕を高く突き上げる。
「手紙」で静かに始まったステージ。松尾の叙情的な世界が、スポットライトに照らされた恋人同士であろう2人を歌詞の世界に誘うようだった。
その静寂を切り裂いたのは2曲目の「羽」。
「変貌」という言葉がきっと相応しいだろう。CDで聴くこの曲より数倍パワフルで彼らのライブパフォーマンスの凄さに一瞬、足をとられる。
さっきまで「お客さん」だった人たちが一気にオーディエンスへと変わり、右へ左へ波が揺れる。フラッシュを音速でたいたようなライトが彼らのシルエットを象り、それは片時も動きを止めようとはしない。
オカダのギターはあまりに力強く、海太のドラムはどこまでも速い。
そして松尾はその長い前髪から時折ぎらりと光る目をこちらに向け、高くジャンプし、腕を振り上げ、オーディエンスを煽る。
油を注がれ「火」となったオーディエンスたちの勢いは、もうとどまる事がない。
しかし、ふとその激しさと松尾の持っている “時間” のようなものが交差しながらずれていくのを感じた。
周りが激しければ激しいほど、松尾が止まって見える時があるのだ。それを冷静と呼ぶのだろうか。一番激しい火は青く燃えるが、青の色が持つ冷たさゆえ、それは静かに見える。
それと同じものを松尾にみた。
「 GENERAL HEAD MOUNTAINです」
ぼそっと、バンド名を言うと、それ以上何も説明する事なくチューニングをしながら次の曲へと進む。
面白かったのは、曲の間、もの凄い乗りかたをしていたオーディエンス達は、彼らのチューニングに併せて急に静かになる。メンバーの名前を呼ぶものもない。
しかし曲が始まると、また高波は姿をみせる。
きっと、観客達が望むのはジェネの世界、それだけなのだろう。
すごくシンプルだが、すごく納得させた。
吠え、鳴くギターと、地を這うようなゴリゴリのベース、確実に心臓にアタックするドラム、そしてそれを絶やす事なく、常に挑発しているパフォーマンス。
しかしただパンキッシュなだけでなく、歌詞とメロディの叙情的世界にはフォークソングを彷彿とするものがある。それはやはり松尾の原風景だろう。
激しさの中に刹那の哀しさを感じる。
「逆鱗」の深い歌詞をこの26歳の青年はどう生み出したのだろうと息を飲む。
途中歌詞のとおり、片の目をつぶった松尾。そのつぶった方の目の裏には何が描かれているのだろう。オーディエンス達は変わる事なく熱を帯びている。
しかし「散歩道」ではまるで何も言えないような大人しそうな若者へと変わる。
「…想像力を解放せよ。」
そう、一言いい次の曲へとうつる。
その一瞬の静寂の行間は、ただの静けさではない。
「鳥籠」はやはり名曲だと思う。疾走する海太のドラムがリズムを変え、松尾が紡ぐメロディが切なさを帯びる瞬間のメリハリは、やはりライブではより一層際立つ。
オカダは揺れながら客席をみまわし、汗は飛沫となって舞い散る。
松尾は前髪を振り乱し、見え隠れする目は狂気に満ちあふれている。
そしてやはり何と言っても驚いたのは「いい日旅立ち」だ。
2006年に発表したこのカヴァー、これは昭和の歌謡曲がDNAに組み込まれている世代には、その時代の代表曲と言っても過言ではないはず。(私はこれに近い世代)
確かに松尾の持つ叙情<フォークソングを感じさせる>世界はあったとしても、ジェネはやはりそのスピードとパワーで魅せてくれる。
正直、耳が慣れるまでは少し違和感があった。それは先に言った「慣れ」なのだ。あくまでも。アレンジ力は勿論だが、このライブ力ある彼らはすでに彼らの楽曲かのような魅せかたをしてくれるから凄い。
「誰かの声が聞こえた気がした」
と、松尾が言う。
彼の詩の…憶いの言葉をぽつりぽつりと語り、静かに「雨」へと入っていく。
ミラーボールが照らす会場はまるで車のフロントガラスについた雨粒たちのようだった。
何かを求めるように手を伸ばす松尾の吐息がかすかに揺れる。
本編最後の曲は今年の1月20日にリリースしたアルバム名にもなっている「深まる日々に、微笑みを。」
たまにじっと立ち尽くして静かに オーディエンスを挑発する、そんな松尾はエロティックで背筋がぞぞっとするものを持っている。
しかしそんな中、この曲でふと見せる人間らしい笑顔が、さらに魅力的で、ちょっと目を離しにくいものがあった。
アンコールでは、自分がツアー中に感じた事を彼らしい言葉で語った。
「オレ、幸せになりたいんだ。」「未来はこの辺(手を伸ばした辺りを指しながら)なんだ。そう思わなきゃ笑えねーだろ。」
そして、新しいアルバムに対しては「聴く毎に違った表情をみせる、いいアルバムに仕上がったと思います。かわいがってあげてください。」と、伝えた。
素直と歪みの間を行き来している彼のそのままの世界観でアンコールは締めくくられた。
松尾も、オカダも、海太も、すがすがしい笑顔でオーディエンス達を心行くまで観ていた。そしてまた静かに彼らはステージを去る。
しかし、驚いたのはその後も暫くアンコールは絶える事がなかったという事だ。
ぶっちゃけると、観客もアンコールがあるのが分かったうえでライブというのは構成されている。しかし、出てこないと分かっていても更にアンコールをするオーディエンス達は本気で「GENERAL HEAD MOUNTAIN」を求めていた。
そして会場の灯りがついてしまうと、そのアンコールは拍手へと変わっていった。
今日のライブの素晴らしさを伝える熱い熱い拍手。
憧れのバンドやアーティストの全てを、ただなぞっているようなバンドは多い。
「GENERAL HEAD MOUNTAIN」、彼らも影響を受けたアーティストのそれらを少しずつ、彼ら自身の指や足、喉を伝って出てくる事はあるが、圧倒的な格好良さを持っている。
ジェネらしさが日本語にこだわった歌詞や、メロディやパフォーマンスに完璧に現れている。最近、こういうアプローチのバンドは少ないと思う。
全20曲のライブは、まだ観ていたいという欲求を残したまま終了した。
このバンドのライブは是非観て欲しい!
かなり衝撃的に凄いから!カッコいいから。
括りの言葉はもっと丁寧なものにしようと思ったが、これが一番いいような気がする。
兎に角、ライブを観て欲しい!
取材・文/まさやん
<SET LIST>
手紙
羽
硝子
群青
午前四時
紅色
眩暈
感情線
逆鱗
散歩道
鳥籠
青
接吻
いい日旅立ち
雨
走馬燈
砂時計
深まる日々に、微笑みを。
アンコール
傘
追憶
GENERAL HEAD MOUNTAIN
2000年1月Vo.Baの松尾昭彦を中心に結成。2003年5月に現メンバー、Gt.オカダコウキ、Dr.海太にメンバーチェンジし活動を始める。
Vo.Ba. 松尾昭彦(26)
Gt. オカダコウキ(24)
Dr. 海太(24)
- ・GENERAL HEAD MOUNTAIN公式サイト http://www.generalheadmountain.com/
深まる日々に、微笑みを。NOW ON SALE!
Album / COCP-36009 / 2010.1.20 / ¥2,625(tax in)