秦 基博「GREEN MIND2010」@ 河口湖ステラシアター
5月というのは、1年で一番空気が濃いらしい。きっとそれは太陽を目指しながら成長を止めようとはしない新緑のおかげだろう。
キラキラと光を浴びた緑に包まれた富士山の麓にあるこの河口湖ステラシアターでは、今年3月に待望の弾き語りアルバム「BEST OF GREEN MIND ’09」を発売した秦 基博の野外アコースティックツアー「GREEN MIND2010」の最終公演が行われた。
野外ライブにはうってつけの晴天。
「GREEN MIND」は2008年からスタートした秦 基博による自主企画のアコースティックライブ。
3年目の今回は札幌、長崎、奈良、山梨と全4公演を野外会場で開催し、計15000人を動員する一大イベントへと発展した。アコースティック編成のバンドサウンドに、サポートギタリスト・久保田光太郎を迎えての二人のアンサンブルによるセッションなど、様々な形態で響かせた。
会場となった「河口湖ステラシアター」は、古代ローマ劇場を思わせる半円形の作りで、客席はすり鉢状になっている。ステージの上からは切り取られた外の緑が顔を出す。
そして、まさにガーデンといったように植物たちが緑色のステージを作り出し、客席は半円をなぞるように「Green Mind 2010」と織られたツアータオルをみな、首からさげていた。
穏やかな風に乗って、 弾き語りアルバム「BEST OF GREEN MIND ’09」の自身初、インスト曲「Theme of GREEN MIND」で、ライブは始まった。
柔らかく、でもどこかピンッと芯がある秦の鳴りのよいギターの音色は心地よい。
「休日」では、バンドメンバーも加わった。秦の第一声が響くと、体の中心がざわめく。
これは以前、ラジオ番組の公開録音ライブレポでも書いた事だが、秦のまず第一声…これは何度聴いてもぞくぞくする。彼が奏でるギターと一緒で、伸びやかで柔らかく包まれるが、ブレがない。ライブでは同様の思いをしているであろう観客達の表情に何度となく出くわしているが、今回も多くの観客達にその表情をみた。
低いウッドベースと細かく刻むマンドリンの音色が 伸びやかな秦の声と絡み合う。
「GREEN MIND 2010ファイナルへよこうそ!遂にファイナルを迎えました。ゆったりと音楽に浸って帰って下さい!!」
その秦の挨拶に観客達はファイナルという言葉の持つ安堵感と、少しの寂しさを感じながらも、これから始まるライブへ期待を運んでいただろう。
「花咲きポプラ」でリズミカルに会場が盛り上がると、弾き語りコーナーへと入る。
これはツアーごとに、その日の天候だったり観客の顔だったり、自分の思いだったりによってその場で決めるという。「新しい歌」や「 やわらかな午後に遅い朝食を」などを披露。
アコースティックというシンプルな形態だとその楽曲の色彩の輪郭は鮮やかになる。
そんな中、なんとこのツアーファイナルの3日前に出来たという「たまには街に出てみよう」を披露。
「ひとりじゃ不安なので…」と、サポートギタリストの久保田光太郎を突然呼ぶ。
このコーナーでは秦が演奏する曲を突然決めるので、当然突然呼ばれた久保田は大慌てで出てくる。このサプライズはなんとも嬉しいものだ。
日常の風景を歌った、奇をてらわない秦らしいナンバーで、リリースがとても楽しみだ。
「風景」では、秦のバックにある緑色に光るライトが秦の輪郭を溶かしていく。
鳥が鳴いていたり、陽が傾いていったりする事を感じながら演奏するといった秦の言葉どおり、ホールライブと違う、自然の一部におじゃまする形の野外ライブはどう変化するかわからない。それだけに、観客の神経もホールライブより、色々なものに流れ易いものだが、みな秦の世界に吸い込まれていた。
秦の声は風にのり、ギターの音色は新緑の葉を揺らす。
ライブも終盤の「色彩」の時、突然ステージのバックが左右に開いた!
開いた先に広がるのは、山の段差とどこまでも広がる木々たち。その緑色の海の中心には見事な富士山が鎮座している。 おぉっ!という観客はどよめき、次の「 鱗(うろこ) 」で、テンションも最高潮に!
無限の可能性を秘めたこのステージングはなんと贅沢なのだろう。
「まさか、富士山を背負って歌うとは思いませんでした。」
曲が終わると、秦は観客に背を向け、富士山を仰ぎながらドリンクを飲む。
そんな姿を皆、笑いながらみているがきっと自分がステージに立っていたらあれは絶対やるだろう!ときっと観客の多くが(いや、全員かな?)思ったに違いない。
淡々としたトークと、その「間」でほのぼのとした笑いを誘う秦のキャラクターは、女性だけでなく男性にも好まれている。
でも一旦楽曲に入ると、その世界観は他の追随を許さない。
かといって、高圧的でも攻撃的でもない。ココロの軸のような部分にポトリと雫をたらしながらゆっくりと満ちていくような温かいもの。
このライブはまさにそういう秦そのものが出ていた。
8月4日のリリースを発表した、この日2曲目の新曲「透明だった世界」は、記念すべき10枚目のシングルであり「NARUTO-疾風伝-」のオープニングテーマ。
駆け出したくなるようなポップチューンだが、少しのマイナーコードが入るあたりもカッコいい!
「ここらでもう一度シフトアップしませんか!富士山を驚かせてみませんか!?」
と観客を煽ると、「キミ、メグル、ボク」を熱唱。観客の手拍子が、ぐんと一段音があがるのがわかる。
「河口湖ー!!!」
と、秦が叫べば観客のテンションもあがりまくる!
再びバンドメンバーが登場。「夜が明ける」では久保田の見事なトーキングモジュレーター(楽器が人の声のように聴こえるエフェクター)と、秦の歌が最高のコラボを魅せる。ウッドベースの深い音色は、まるで夕暮れが来るのを誘うよう。
秦は今回の野外ライブツアーでのアコースティックへの思いや、風やにおいを感じながらやりたいという思い、それを感じてほしいという気持ちを語った。
「アイ」は、この上ないと言っても過言ではない上質なバラードだと思う。
陽が落ち始め、もうこのライブが終わってしまうであろうという予感をはらみながらその歌詞の一言一言、メロディの一音一音を観客たちは大切に刻んでいるであろう。
アンコールでは 11枚目のシングルを9月に、10月には約2年ぶりとなる待望の3rdアルバムをリリースする事をこの日集まった3000人のファンに報告した。
先に歌った「透明だった世界」を含め、3ヵ月連続リリースとなるわけだ。
観客もこの報告には大興奮で、この夏は秦の動向から目が離せなくなる。
「 フォーエバーソング」でアンコールは一度終了した。
…そう、一度。
こんな特別な日にアンコール一度では観客は許してくれない。
なんとダブルアンコールがおこったのだ。
再び出て来た秦は心地よく疲労した感じに見えた。
それでも観客に感謝しながら「フォーエバーソングで、もうパワー使い果たしたので、みんなで歌おう」といい、「シンクロ」を熱唱。
河口湖ステラシアターを中心に、周りの風景、秦の歌声、観客の歌声を全部吸い込み、シンクロさせながら、ライブは終了した。
この日のライブは秦が何度か言っていた、風やにおいを感じながらの壮大で、かつ和やかという何とも贅沢な時間となった。きっと観客達は、秦の歌声に酔いしれながらも、周りの風景も楽しんだ事だろう。
ライブ終了後に秦と少し話す機会があったので聞いて見ると、やはり音のまわりがホールとはまったく違うし、野外だとしても、このツアー4カ所ともまるで違ったという。
そういう意味ではきっと秦にとっても特別なツアーだったのではないだろうか。
カメラマン/笹原清明
取材・文/まさやん
※このライブの模様は7月29日にWOWOWで放送されることも決定しているので、ライブに参加した人もそうでない人も是非チェックしてほしい!
◆セットリスト
M1 Theme of GREEN MIND
M2 休日
M3 季節が笑う
M4 花咲きポプラ
− mc −
M5 新しい歌
M6 トブタメニ
M7 つたえたいコトバ
M8 たまには街に出てみよう(新曲)
M9 風景
M10 dot
M11 やわらかな午後に遅い朝食を
− mc −
M12 色彩
M13 鱗(うろこ)
M14 透明だった世界 (新曲)
M15 キミ、メグル、ボク
M16 夜が明ける
M17 青い蝶
M18 虹が消えた日
M19 アイ
Encore
M20 今日もきっと(新曲)
M21 フォーエバーソング
Encore 2
シンクロ
□最新リリース情報
アイ Premium Package 2010年6月9日リリース
AUCL-29/30¥1,575(tax incl.)
■CD収録曲
1. アイ
2. アイ(弾き語りVersion)〜Panasonic LUMIX GシリーズCMタイアップソング〜
3. アイ<backing track>
■DVD収録曲
1. アイ-MUSIC VIDEO-
2. アイ(弾き語りVersion)-MUSIC VIDEO-
3. アイ-from「AND 秦@F.A.D YOKOHAMA」-
※上記DVD内容は全て初収録
3ヶ月連続リリース決定!
New Single 「透明だった世界」 2010年8月4日
(テレビ東京系アニメーション「NARUTO-ナルト- 疾風伝」オープニングテーマ)
①DVD付き初回限定盤 AUCL-39/40 ¥1,575(tax incl.)
②通常盤 AUCL-41 ¥1,223(tax incl.)
③アニメ絵柄書下ろし期間限定生産盤(スペシャル特典付き/デジパック仕様) AUCL-42 ¥1,575(tax incl.)
<収録曲>
M1.透明だった世界
M2.新曲(タイトル未定)
M3.新曲(タイトル未定)
M4.透明だった世界(backing track)
<初回限定盤特典DVD>
「透明だった世界」MUSIC VIDEO/making of「透明だった世界」MUSIC VIDEO 他
■2010年9月 11th Single
■2010年10月 3rd Album