school food punishment 「amp-reflection」releaase tour "Switch"@リキッドルーム
5月21日 名古屋Electric Lady Landを皮切りに、全国7箇所を巡ったschool food punishmentのツアーがファイナルを迎えようとしていた。会場となったリキッドルームはこの日を待ちこがれたオーディエンス達、約1000人を飲み込もうとしていた。
今年4月にリリースした1st Album「amp-reflection」はいきなりのオリコンウィークリーランキングで9位にチャートイン。独創性と創造性がこぼれだしそうな彼らへの注目度は高い。
会場が暗くなり「signal」が響く。モールス信号の音…レーザー光線…メンバーが登場。ライトを背中に浴びたシルエットに会場はエンジンを吹かし始める。
比田井修(Dr)が拳を振り上げ、オーディエンス達は高い位置でのハンドクラップで応える。「goodblue」で内村友美(Vo,G)が登場。
冷静と高揚の間にあるような内村の声は、ぞくぞくする。「future nova」になると、ステージはカラフルなライトで彩られた。エッジが立つリズムと、エフェクトの効いたシンセに、上昇していくようなヴィヴィッドなポップさ。
「東京へ帰ってきました。school food punishment、今日はファイナルです! 」
内村が挨拶する。
ツアーファイナルというのはいつだって、その余力を残さない独特の空気感を生み出す。
内村、耳に手をあてる。
町の雑踏…。電車のアナウンス…。
「電車、滑り落ちる、ヘッドフォン」だ。オー!と、歓喜の声が溢れる。
艶と甘さとクールさを全部持ち合わせた内村の声が「僕」という言葉を発する度、何となくドキリとする。不規則さの美学を美学だけで終わらせない演奏力が、より生声の質感を浮き彫りにする。
流れ込むように 「feedback」のイントロへ演奏が移るとメンバーの背後の4つのライトが、くるくると回転し、アレンジを大胆に施したこの楽曲を押し出す。
「light prayer 」は何度聴いても体中の血が沸騰するような感情に見舞われる。
かっこよすぎだよ!もうレポなんてやめて、前の方でうねりを見せるオーディエンスに混じり、ただただ彼らの世界に神経麻痺するまで暴れたいぞ!
蓮尾がキーボードの上に立てば、もうオーディエンスのボルテージが火を吹く!
現代アートを感じさせるような凄まじさと美しさが交差する。
一気に爆発しそうなオーディエンス達を制するかのように「パーセンテージ」
「 04:59」と、バラードナンバーが続く。色を押さえた照明にメンバーのシルエットが滲む。
輪郭をのぞむ事ができなくなればなるほど、そこには彼らが作りだす音と声、歌詞のもつ情景のみが広がる。その情景を破壊するかのようなインストのコラージュがエキサイティングだ。
曲が終わると内村が静かにステージを離れる。
「ツアーファイナル、こんなに集まっていただきありがとうございました!」
蓮尾が挨拶するとMCを比田井にバトンタッチ。
「ジェフ」コールが巻き起こると、比田井は「ジェフじゃない!」と一言。
この恒例行事(?)にオーディエンスもふと息をぬき、笑い声がこぼれる。
「後ろまで見えるようにしてもらっていいですか。」とお願いすると、会場は明るさをとりもどした。オーディエンス一人一人の顔を確かめようとしているのか、それともこの波の水面をみているのか。感慨深いような面持ちでいる。
ファイナルに、寂しさすら感じるといいながらも「今日はここから!まだいくぞ!」と起爆し、会場を湧かせる。
…かと思うと、「そんな感じで…。」とスティックをみつめながら落としどころがみつからないようなMCでステージ袖の内村へ、お助けモードオーラ全開になる。
たまらなくかっこ良くクールな楽曲の世界観がそのまま反映されないこの感じがいい。
彼らには何となくいつまでもこのまま「こなしてる」感のないMCを続けて欲しいものだ。
「みなさん、エネルギーあまってますか。ノンストップでいきます!」
内村が登場し、ライブは後半戦へ突入。
「 you may crawl」ではレーザー光線が頭上を走り ループが心地いい。
クリエイティビティがCDの中だけでは留まらない、その大胆なアレンジ。
「駆け抜ける」「after laughter」では グルーヴ感むんむんで会場はハウス・ディスコに 変身!ライブなんてものは、兎に角楽しくなきゃ!っていう感じでオーディエンスもノリノリ。
変則的でノイジーな「futuristic imagination」「line」は、感情を解き放とうとしているのだろうか、閉じ込めようとしているのだろうか。表裏一体の世界観が、これでもか!と覆いかぶさり、圧殺寸前!
「fiction nonfiction」は、エレクトロコミックの世界に、内村のタンバリンがキュートだった。
「ツアー中に、自分たちのデビュー日、5月27日がそっと過ぎて…」といいながら、メジャーデビューして1年の思いを内村はぽつりぽつりと語りだした。
辛い思い、悔しい思い、哀しい思い…そんなネガティブな言葉が正直に口をつく。クリエイティブを形にするというのは実に苦しい作業だ。インディーズからメジャーという場へその活躍の場を変えてからこっち、疾走感というのは彼らの生活の中にまで浸透していたろう。1秒というのは、決して同じスピードでは流れない。彼らの体感した1秒1秒は早回しをしたようにこの1年を形作ったろう。
全国まわって “はじめまして” の人と出会い、大変だけど続けていく。歌が好き。という思い、切ないココロのうち、何かに集中している人を見ると泣いてしまう。という感情を次々に吐露した。
「sea-through communication」で、駆け抜けるようなステージ本編はラストをむかえた。
アンコールの幕が開くと、「まだ聴いてくれますか?」といい、東京公演のみの「flow」披露。
「ツアー中は禁酒してたけど、今日はビールを飲める。ここ恵比寿だしね!」と、さっきのシリアスな内村とは別人のように笑顔で話す。
蓮尾の「THE END」と書かれたTシャツをみては、「おいしいところ持って行くよなぁ!」と真剣に、嫉妬さえ感じられそうな表情を浮かべたり、喋りながらマイクのノブを回しすぎちゃう内村は実にキュートだった。
「恋の初期衝動のようにみんなにも何か熱中するものを見 つけて欲しい」と言って「butterfly swimmer」で幕を下ろした。
彼らのステージを初めてみたのはラジオの公開録音ライブで、他に多数のアーティスト達が集結したものだった。
どのバンド達も勢いはあったが、しかし、その中でもひと際異彩を放っていたのが、このschool food punishment。
曲線を描くような内村の声の心地よさを抱きかかえ繊細さと大胆さが音への衝撃となり、浮遊感、疾走感に溢れる。
綿密に計算され、折り重ねられた音たちは、決して宅録チックではなくきちんとライブへのパフォーマンス力へと反映している。こういうクリエイティブ集団が、創造(制作)とアプローチ(ライブ)を両立というのはかなり凄い事だと思う。
この後どんな化学変化を起こしてくれるか、楽しみでしょうがないバンドだ。
カメラマン/エグマレイシ
取材・文/まさやん
<セットリスト>
1.signal
2.goodblue
3.future nova
4.電車、滑り落ちる、ヘッドフォン
5.feedback
6.light prayer
7.パーセンテージ
8.04:59
9.you may crawl
10.駆け抜ける
11.after laughter
12.futuristic imagination
13.line
14.fiction nonfiction
15.sea-through communication
En1.flow
En2.beer trip
En3.butterfly swimmer