長澤知之「Nagasa・Oneman 5」@代官山UNIT 2010.10.22
一番最近、彼の歌声を聴いたのは夏まっただ中の「Augusta Camp 2010」。空が夕暮れに赤く染まる頃、大きなスクリーンに映し出され ”茜ヶ空” を歌う彼が印象的だった。
UNITの前には、会場がぎゅうぎゅう詰めになる事が容易に想像できるほどの人の帯が出来ていた。中へ入るとこの日から発売が始まった、ライブ会場限定シングル『長澤知之II』やグッズを買うファンで溢れ、やはりキャパ600人程の会場はもうすし詰め状態。
客電が落ち、『長澤知之II』に収録されている“消防車” が流れ始めた。この荒削りのロックナンバーの先に、長澤知之の世界がたっぷり待っているかと思うと胸が躍る。
サポートメンバー、そして長澤知之が登場。久しぶりのワンマンという事で期待度の高い拍手と歓声があがった。
今回の『長澤知之II』と同じく非常口をモチーフにしたイラストのジャケットで、今はもう入手不可能となってしまった『長澤知之』に収録されている ”マンドラゴラの花” でライブはスタート。ギターの松江 潤はしょっぱなからジミー・ペイジを彷彿とさせるボウイング奏法! バイオリンの弓で奏でられたギターは長澤のアシッドヴォイスと良く合う。ディレーのかかった長澤の声は観客の頭上を旋回し、全ての音が重なり破壊するような狂気をはらんで、続けざまに曲は進む。
”神様がいるなら” では長澤のアツく歪むギターと、しゃがれながらも突き進む声にオーディエンス達は体を揺らす。
メンバーと呼吸を合わせ曲を終わらせる時、長澤はニコリと笑った。
「みなさん、ようこそ、Nagasa・Oneman 5へ。長澤知之です。」
そういうと、咳をひとつし、ペットボトルの水を口いっぱいにふくませた。
「どうぞみなさん、アルコールを飲んで下さい。」
ある種の緊張感のようなものが演る側にも観る側にもあっただろう。この言葉を発した時にその緊張が一瞬ふわりと解けたような気がした。
長澤の世界に単純な事は何ひとつない。綱渡りのような不確かさと温かさをを持つ “ 明日のラストナイト” や 彼の真骨頂と言っていいような危うさを描く “幻覚” など、次々と空間の表情を変えながら、クルクルと巻いた長澤の髪の毛からは汗が滴り落ちる。” 死神コール” でギターをチェンジする間の「会いたかったよ!」というファンの声に照れた表情をし、” 24時のランドリー” の「本当に瞬きのようだよ」という歌詞の部分ではメロディというより、ささやくように喋る感じで歌い、夜中のコインランドリーから月をのぞきみるように、フロアのライトをそっと見上げた。そういう一瞬一瞬がいちいちドキリとさせる。
ここでメンバーは一旦退場。この日のライブはオフィシャルでUstreamを配信するという事で、ライブに来れなかった人達は凄く楽しみにこの時を待っていたろう。なのに長澤ときたら「USTを観ているみんなに。最低4、5人はいると思うから。」なんて言う。とんでもない。合計視聴数1,361という事で、出入りがあったとしても約1,000人以上の人は観ていた事になる。このUNITのキャパより多いぞ!!
最近Twitterなどで「なう」という言葉がよく使われるがその言葉の面白さをそのままタイトルにつけた “なう” を演奏。
あくまでもUSTを観ている人達へ向けているからここに居る人達は関係ない。なんて事を言って会場中を大ブーイングの嵐にさせる長澤。「うるせー!」そんな軽口に今度は会場中、笑いの渦。「♪お互いにリンクしあう運命…アイデンティティ更新なう」と、強くて弱いネットの関係性を弾き語る。
「ごめんなさい、すみませんでした。」
曲が終わると慌ててそう謝る長澤にオーディエンス達は笑いながらも拍手を送り、” 僕らの輝き” や “マカロニグラタン” などの懐かしいナンバーの弾き語りにも完全に魅了された。
その後またメンバーを引き入れると「段々加速していきます。」という言葉通り、”真夜中のミッドナイト” や “ RED “ で会場はヒートアップ!このレポートを書く為に持っていた小さいノートにもビリビリと振動が伝わる。
そして “三日月の誓い” ではこの曲を待っていた歓声があがる。胸を締め付けられるような強くて切ない想いを叩き付けるように歌い、本編ラストの “ P.S.S.O.S.” へ繋げる。 ガラスを砕いたような鋭さと、泣き出しそうな弱さを、時折みせる笑顔に包み本編は終了。
「アンコールをありがとうございます。」
そういうと、暖色のスポットライトがひとつ、 “回送” を一人で弾き語る長澤を照らす。
温かい拍手の中、メンバーも登場。
「皆さんが普段、どんな音楽を聴いているか分かりませんが…」と言いながら同世代の音楽仲間といい音楽を残せていけたらという思いを語る。そして今日ここに集まった人へ感謝しながら ”茜ヶ空” “君だけだ” を熱唱。
「はりきりすぎて声潰しちゃったけど、ごめんね」
そう言って手を振り、アツく甘く切なく温かい「Nagasa・Oneman 5」の幕は閉じた。
長澤知之 公式サイト
http://www.office-augusta.com/nagasawa/
<セットリスト>
1.マンドラゴラの花
2.EXISTER
3.THE ROLE
4.JUNKLIFE
5.神様がいるなら
6.明日のラストナイト
7.夢先案内人
8.幻覚
9.死神コール
10.24時のランドリー
11.なう。(弾き語り)
12.僕らの輝き(弾き語り)
13.マカロニグラタン(弾き語り)
14.ベテルギウス(弾き語り)
15.真夜中のミッドナイト
16.MEDAMAYAKI
17.零
18.どうせ陽炎
19.RED
20.三日月の誓い
21.P.S.S.O.S.
Encore
22.回送
23.茜ヶ空
24.君だけだ