スガ シカオ JAPAN-UK cercuit at Zepp Tokyo
「帰ってきたぜ、TOKYO!」スガの第一声にオーディエンスが熱い「おかえりー」で応える。昨年に続き行われた、ロンドンから東京、大阪をつなぐ「JAPAN-UK cercuit」ツアー。「ロンドンキッズを踊らせてやったぜ」スガが意気揚々と語るようにLondon O2 Academy Islingtonで行われたライブは、好評を博した前回の公演をさらに上回る盛り上がりとなり、現地でも「日本人アーティストの中で一番タイトだった」と絶賛されるなど、ファンク番長日本代表の存在感を見せつけたツアーとなった。
その内容は本人曰く「スガ シカオぜんぶ盛り」。ファンクあり、エレクトロあり、アコースティックあり、スガ シカオをめいっぱい味わい尽くせるゴージャスなメニュー。オープニングは、リズムトラックのループからアコースティックギター1本で歌いあげる「前人未到のハイジャンプ」。そのクールで骨太なアレンジと、ライブではレアな選曲であることから、会場から「おおっ」とどよめきが起こる。そしてお馴染みのバンドメンバーが登場し「カラッポ」から「黄金の月」まで、新旧とりまぜた、これぞスガ シカオ的ナンバーがノンストップで披露され、会場は前半とは思えない怒涛の盛り上がりへ。お馴染みのナンバーも今回のツアー仕様にいくつかリアレンジされていて、個人的には「あまい果実」のディストーションを効かせたギターアレンジが、曲の世界観をさらにどろりと濃密にしていて、かなりツボだった。
今回、ステージの両サイドに設置されたLEDディスプレイで、英訳した歌詞をテロップ表示するという新しい試みがなされた。ロンドンのオーディエンスにスガ シカオの楽曲の世界観を言葉でも伝えるためだ。これは後日、大阪公演で語っていたことだが、スガの歌詞は日本語にしかないニュアンスを含む言葉が多く使われているため、英訳すると歌詞のボリュームが1/3程 になってしまうらしい。世界的人気を誇る日本人作家も絶賛する、エッジの効いたリアリティのある表現、独特の文体、その完全翻訳が不可能とは少々残念ではあるが、日本語の表現力の豊かさをスガ シカオの歌詞が証明したようで、それはちょっと嬉しい発見だった。
中盤は、ベースとドラムとアコギの3ピース編成という、またしても新しい試みを披露。スガの唯一無二の歌声をじっくり聴きこめるシンプルにして贅沢な編成。しかし感動的な「サヨナラホームラン」に続いたMCが「ムール貝にあたってさー、ひと晩中トイレで泣いてたんだ。オレの全部が出るかと思った」。え、これだけじんわりさせた後にその話?ま、爆笑MCもスガのライブパフォーマンスのひとつ。次回のツアーでは、ぜひロンドンキッズも爆笑のグルーブで揺らせて欲しい。
そして後半ではブラスセクションも入れ(その名も、ファイヤーホーンズ!)ファンキーチューン炸裂。躍れ、叫べ、今を楽しめ、これがファンクだ!と言わんばかりのパフォーマンスに、オーディエンスも負けじとばかり応酬。もうフロアまるごとモッシュ状態。ダブルアンコールの「FUNKAHOLiC」まで、会場のボルテージは一度も下がることなくハイテンションで突っ走った、熱い熱いライブだった。
最後のMCでスガは、ロンドンでライブを行う意味を語った。「海外へ行くと必ず日本人のアイデンティティが問われる。だからって、和太鼓や三味線できるわけないし。オレはオレのアイデンティティで勝負するって決めてロンドンへ行った。オレのファンクを届けるために行ったんだ」。ファンクは世界の共通語、とスガは言った。しかしこれほど多彩な表現力をもち、つねに挑戦と進化を続けるファンクは世界中探したってない。どうだロンドン、日本にはスガシカオという最高のファンクがあるんだ。そんな誇らしい気持ちになった。
ロンドン公演に先駆け、3枚のアルバムの楽曲配信がイギリス、アメリカでスタート。
「スガファンク」が世界の共通語になる日がやって来るかも知れない。
取材・文/白石フミ子
カメラマン/岩佐篤樹
〈セットリスト〉
M01 前人未到のハイジャンプ
M02 カラッポ
M03 Party People
M04 ストーリー
M05 黄金の月
M06 あまい果実
M07 Loveless
M08 はじまりの日
M09 13階のエレベーター
M10 サヨナラホームラン
M11 ホームにて
M12 宇宙
M13 真夏の夜のユメ
M14 午後のパレード
M15 正義の味方
M16 俺たちFUNK FIRE
M17 19才
M18 奇跡
M19 イジメテミタイ
Encore 1
M20 91時91分
M21 コノユビトマレ
Encore 2
M22 FUNKAHOLiC