またどうしてもこの「ロッケンロール」を感じたくてやって来た！ ザ・クロマニヨンズ全国ツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアー2010-2011 ウンボボ月へ行く」。前回の東京公演1日目はSHIBUYA-AXだったが、今度は野外だ！日比谷野外音楽堂、野音だ!!

客席中央の高い位置には、惑星をイメージしたバルーン照明が時折風にゆらめく。
オーディエンスの熱狂はあるものの、野外だからだろうか、どこかいつもより開放的に見える。ビール片手にという姿も多いようだ。
それでもやはり、月面に「Oi! Umbobo」と刺繍されたフラッグが掲げられると、一気に野音のテンションは上がった。

 

“高田馬場” とか、”中野ブロードウェイ” とか、自分的に堪らなく懐かしい場所の名前が出てくる『伝書鳩』では、オーディエンスと共に心の中で（さすがにレポ中は声に出して叫べなかった！）「アーモンドチョコレート！」と合唱する。
 

「会いたかったぞ！　昨日じゃないよ。明日じゃないよ。今日会いたかったよ!」
ヒロトはいつもグッとくる言葉を発する。…かと思うと小さな豆電球の下に立ってマラカス演奏をお手伝いしてくれる”しゃぶちゃん”に対し、少し悪戯っぽい口調で「しゃぶちゃんのライトがあんなに小さいのは、節電とかじゃなくて、（彼の）性格です。」なんて言って笑わせる。それでもしゃぶちゃんは『キャデラック』でシャカシャカと一生懸命マラカスを振る。マーシーと小林勝のコーラスも渋い!!

ザ・クロマニヨンズには不朽の名作と言われる曲が何作もあると思うけど、『多摩川ビール』も絶対そのひとつだと思う。黄昏れるような優しいそのフレーズに気持ちを傾けていると、薄暗くなり始めた野音のステージに無数のライトが星を作り、歓喜の声が湧いた。


ヒロトはセットリストをまるでレコードのように「B面はまた後でやろうな」と表現し、B面になった時にはきちんとレコードを変える仕草もする。ファンの間ではお馴染みだが、お馴染みじゃないのはこの長いツアー中に両A面シングルをリリースしたことだ。結成5年間で初めてだろう。その『流線型』『飛び乗れ!!ボニー!!』をたて続けに披露。”金があればリッケンバッカー、金がないから倉庫の整理♪” って、やっぱりロッカーだな。買うならやはり330だろうか？なんて妄想したりして。

流れとしては少し前後するが、「日が暮れるってこういうことか。暮れている方が色んなものが見えてくる。おもしれぇ。」と笑うヒロトは、しっかり野外を楽しんでいるように見え、中盤戦クライマックスの『スピードとナイフ』では「楽しいなー！」と叫ぶ。

4月とはいえ、やはり日が暮れていくと肌寒くなるこの時期、こんなに暖かいのはやはり至近距離でノリまくるオーディエンスの熱のお陰だろう。
コーラスとハイハットの効いた『7月4日の横田基地』の最後の最後、一気に増すスピードに合わせ瞬くストロボライトで轟音の如くオーディエンスのテンションも上がる。


この日、ヒロトは震災のことを何も語らなかった。しかし、その語らない事といつも通りやることが、かえって彼ららしい。でもその分何だか『エイトビート』がいつもより胸にくるじゃないか！後半戦『ギリギリガガンガン』も、やっぱり猛烈に盛り上がり『紙飛行機』でマーシーは足を蹴り上げ客席にかなり近づく。ピックもいつもより多めに振る舞ってる気がした（笑）。

この日はアンコールを含め、どの曲がどうということではなくすべてが、かなり忘れがたかった。髪をクシャクシャしながらオーバーアクションをとったり、歌では格好いいのに、小学生レベルの下ネタを連発したりするのはいつものヒロトらしいし、マーシーの淡々とした「またね」もいつも通りだ。小林のベースも桐田のドラムも相変わらず胸や腹ん中でリズムを刻む。じゃあ、何が違ったんだろう？ライブ終了後に「今日の『タリホー』は、かなり泣きそうになったよ。自分の中では今迄で一番だった！」と言っていたオーディエンスの声を耳にしながら、最高だった理由をずっと考えやっと答えが出た。
多分、普段と変わらないザ・クロマニヨンズがそこにいてくれたことが最高だったのだろう。今更技術、パフォーマンスうんぬん言うバンドではない。多分そういうことだ。


カメラマン／柴田恵理
取材・文／まさやん


※セットリストは4月23日（土）、青森県 青森QUARTERで開催される最終公演の終了後、掲載させていただきます。



ザ・クロマニヨンズ 公式サイト http://www.cro-magnons.net/