まるで物語の世界にいるような時間だった。まさにマザーグースのような世界。
祝日の4月29日、この日会場となった東京グローブ座は、メルヘンとシュールな音の粒で埋め尽くされた。
sleepy.ab 全国ツアー「Mother Goose Tour」は、4月5日（火）新潟 CLUB RIVERSTの対バンツアーでスタート、4月8（金）からは大阪 AKASOにてワンマンツアーがスタートし、4月29日（金・祝）・30日（土）の２DAYS、この東京グローブ座でツアーファイナルを迎えた。

ステージ背景にアルバム「Mother Goose」の赤いジャケットイラストが映し出される。子供達が歌うハンプティ・ダンプティが流れ、sleepy.abのメンバーが登場。 ヨーロッパの古いサーカス小屋を彷彿とさせるように吊り下げられたツリー型の照明がピカピカとセンセーショナルに光り、「マザーグース」でライブはスタート。「アクアリウム」では、 PVと美しくリンクしている背景の映像は、 メリーゴーランドと海底都市を影絵でノスタルジックに描き出している。曲順が前後してしまうが、そういう演出はライブ後半でやった「トラベラー」でも同じだった。21世紀に夢を馳せた時代色を持つSFマンガや、デジタルチックな照明はPVを思い起こさせた。
「街」は初めて音源を聴いた時、そのイントロのギターリフや、ドラムの繊細なロール、逆回転効果に彼らが住む札幌の白い風景を感じたが、会場にもその透明感溢れる白の世界は確実に広がっていた。

「まずはツアーファイナルに来てくれた皆さん、ありがとうございます。 ”Mother Goose” の世界にどっぷりハマって帰ってください。」ベースの田中秀幸が挨拶すると大きな拍手に包まれた。

「インソムニア」は山内憲介の歪むギターと、エフェクトがかかった成山 剛の声が現実感を一切排除し、紫や青、赤の色にゆだねた影が大きく形を変え揺らめく。柔らかく穏やかなだけではないsleepy.abの音は時にこうして攻撃をしかけてくる。
しかし、MCに入るとその攻撃は影を潜め、田中が「前回の新新譜録音経過報告行脚ライブの時は、このタイトルが決まっていなく、山内君はゴジラとか言ってたよね。」というと、その独特な感性をもつ山内に対し成山は「山内君って想像の世界の人でしょ。皆さん見えています？」などと言うものだから、さっきまでsleepy.abワールドに浸かりきっていた会場からも笑いが起きる。
また、”Mother Goose Tour"オフィシャル・グッズのひとつに、PC用デジタルブック（CD-R）があり、そこで山内はオリジナルのサントラを10曲書き下ろしたという。かなり個人的にも興味がある！…が、仮タイトルにいつも不思議性を持つ山内は、これを作っている時、仮タイトルとして「ハム」と呼んでいたらしい。何故ならその時、ハムを食べていたから……あぁ、成山の一言ではないが、聞かなきゃよかった（笑）。

後半、インディーズ時代からのファンには懐かしい「遊泳スローモーション」が終わると、田中は「ツアーファイナルをこういう素晴らしい会場でやらせてもらい感謝します。次の制作に入りますが、”Mother Goose” より、いい作品が出来上がるんじゃないかと思うので、楽しみにしていてください。」そう挨拶すると、本編は「かくれんぼ」で幕をおろす。

アンコールの大きな拍手を受け、メンバーが再び登場すると、田中がこの東京グローブ座の公演をDVDとして発売することを発表。7月27日（水）発売のこの DVDには、この30日の東京グローブ座公演の模様をはじめ、特典ディスクにはメジャーデビュー後の4曲のPV、ツアー・ドキュメント風景な どを収録予定。ライヴ映像を監督するのは大沢昌史、当日のライヴＶＪを担当した映像監督の小嶋貴之、ふたりの映像監督とタッグを組んだ、 sleepy.ab独特の世界を構築した初の映像作品となる。

アンコールでも、本編に負けない程彼らの音は圧倒的だった。この日最後の曲となった「24」で、数字の１から24までを数える成山の声が響き渡り、それまで座って演奏をしていた山内は立ち上がってアグレッシブな音で会場を埋め尽くそうとする。それでも軸をとらえて離さない津波秀樹のドラムと、田中のベースはお腹の深い部分にこの音達をみじんも逃さずに落としこんでくれる。
現実と非現実の狭間で浮遊しながらすっかり私の右脳は、sleepy.abと”Mother Goose”の世界に支配されていた。



取材・文／まさやん


＜セットリスト＞
sleepy.ab Mother Goose Tour 東京グローブ座 2011.4.29

1、マザーグース
２、アクアリウム
３、ドングリ
４、メロウ
５、街
６、四季ウタカタ
７、インソムニア
８、現実の箍
９、Maggot Brain
10、シエスタ
11、君と背景
12、メロディ
13、ダイバー
14、sonar
15、トラベラー
16、flee
17、遊泳スローモーション
18、かくれんぼ

EC1、夢織り唄
EC2、24
 

◉sleepy.ab 公式サイト http://www.musicaallegra.com/sleepy/index.html