SEKAI NO OWARI『SEKAI NO OWARI at 武道館』11月22日
SEKAI NO OWARI初の日本武道館ワンマン公演『SEKAI NO OWARI at 武道館』が11月22日、大きな歓声と興奮で幕を閉じた。
昨年7月、渋谷O-WESTで『Heart the eartH Tour』を観て以来のセカオワだったので、どうしても武道館のイメージというのがうまく想像できなかった。
しかしそこには実にバランスのよいエンターテイメント性と、「生」に対して向き合う彼らの独自の世界観が描かれていた。
ステージ左右に大きなゴシック体で浮き彫りになった「CAN'T SLEEP」「FANTASY NIGHT」の文字とコミカルで軽快なSE。「ご来場のみなさま! いよいよロック・ショウの始まりです!」という声と共にステージ背後のスクリーンにはカウントダウンの文字と、それを読み上げるオーディエンスの声が響く。その声がゼロを発するとMC担当ロボット「OMC-1」が登場。『スター・ウォーズ』のR2-D2っぽい愛嬌ある出で立ち(声は山寺宏一氏)の彼がセカオワの登場を煽り、退場すると一瞬の静寂の後、星空を思わせるライトがステージを包み、メンバーが登場。 11月23日に発売のニュー・シングル “スターライトパレード” でライヴはスタート!
高揚するPOP感とLOVE(DJ)の手拍子に煽られ1曲目からテンションあがりっぱなしのオーディエンス達の顔を、回遊するライトが照らし出す。
2010年に限定シングル「幻の命」をインディーズでリリースしてから、その独自性の強いセカオワワールドはいつも話題を作っていた。そしてメジャーデビューしたのが今年の8月。それなのにもうこの武道館を興奮で熱狂させている。 その熱狂は、”天使と悪魔” でステージ前方から吹き出したシャボン玉と共にキラキラと光り、上空へと舞い上げ、深瀬 慧 (Vo,Gt) はマジョリティーに惑わされた「正義」をどこまでもポップに歌い上げる。
8月にメジャーリリースしたトリプルリードシングル『INORI』に収録の “Never Ending World” でみせる荘厳なイントロと藤崎 彩織のピアノはあまりにも美しく、切ない。深瀬 は若き指導者のように歌を伝え、さっきまでの盛り上がりが嘘のように静まり、オーディエンスはその声に耳を傾ける。
「こんばんは! 初めてライヴで喋ります。初喋りが一発目のMCとは…」
そう言ったのはLOVE。ピエロのマスクに身を包む彼の初MCに会場も湧く。
「アリーナー、楽しんでるかーい!スタンドー!」と叫びながら「これ、すごく楽しいから、なかじん(中島 真一/G)もやった方がいいよ!!」とLOVEが言うと、会場から なかじんコールが飛ぶ。歌の世界では、時には他の何者も寄せ付けないような鋭ささえ持つ彼らなのに、MCではふっと和ませてくれる。しかしきっと、本人達が一番気持ちが和らいでいるのかもしれないと思わせてくれる笑顔が弾けていた。
「あらゆる生あるものの目指すところは死である。/フロイト」「人間は一度しか死ぬことはできない。/ウィリアム・シェイクスピア」から始まり、スティーブ・ジョブズ、北野武、甲本ヒロト、『ONE PIECE』のDr.ヒルルクと、「生と死」にまつわる名言がスクリーンに映し出されると、”不死鳥” へと繋がる。 中島のクリアなギターが軽快なリズムとリフを刻み、深瀬はロボットという愛しい者への永遠を歌う。
「この武道館ライヴの為に新しい曲を作ってきました。人生で初めて詞を書き、今この瞬間を想像して作りました」
メンバーが一旦退場すると、中島だけが残りそう語ると、この武道館ライヴの約3週間前に出来上がったばかりという新曲をアコギで披露。スクリーンには手書きの歌詞がノートをめくるように映し出され、メンバーも登場するとLOVEはカホンを叩き、藤崎は鍵盤ハーモニカ、 深瀬はタンバリンで、アンプラグドの暖かさに包まれた。可愛さのある優しい曲。
曲が終わると「いいでしょ、 なかじんの曲!」と、藤崎は笑顔で言い「曲名が決まらなかったぁ!」と緊張から解き放たれた中島も笑う。そんな中、クールに「俺のタンバリン、酷いね」と言う深瀬の言葉に会場も爆笑する。
それでも一音出せば、もう楽曲の世界に入り込み、” 世界平和” では赤いライトが武道館を染め上げた。重いピアノの音、プログレ的サウンド、世界を二つに割るようなレーザーの緑。深瀬や中島の影が揺らめく緑と赤にLOVEは大きく手を広げ天を仰ぐ。圧巻という2文字が頭を支配し、身動きさえ出来なくなる。
「今日、新曲持ってきました」と深瀬が言うと、会場からは歓声が響いた。
深瀬は高校生の頃からピアノが好きで、その時教えてもらったベートーベンの ”月光” からインスパイアされた曲だと語り、その新曲 “ Love the warz” を披露。確かに ”月光” を思わせるイントロだが、そこからの広がりがセカオワだ!ラップのように弾むリリックと、ドラムンベース的サウンドにスパニッシュのような中島のギター。その勢いのまま “花鳥風月” “幻の命” とくれば、もう何もいえない!!
「なんと、あと2曲です」
中島の発言に、「えー、ヤダー!!」の声が飛び、そんなオーディエンス達に深瀬は「僕の声を越える位の大きな声で歌ってもらえたらと思います」と言い、ポップ感満載の”ファンタジー” で、深瀬と中島はカメラに向かい頭を寄せ合い歌う。再びシャボン玉が上がると、オーディエンスの笑顔と歌声も弾み、本編最後は”青い太陽” で終了。
セカオワコールを受け、アンコールで再びステージに登場したメンバー。深瀬は「ヒューって出来る人いる?」と、指笛のジェスチャーを見せると、会場から高らかな指笛が響き、「いいねー!楽しい!!」と、真から武道館を楽しんでる笑顔を見せた。
今回、冒頭に出て来たロボットやライヴ中の映像、レーザーに至るまで、なんと藤崎が総合演出を務めたという。これまでのことを思ってか、泣きそうな笑顔を見せる藤崎をアツい拍手が包み込んだ。
去秋の渋谷C.C.Lemonホール(現・渋谷公会堂)ワンマンでのアンコール1曲目と同様の “眠り姫” は愛しい人が永遠の眠りについたら…という、世界一考えたくない思考を深瀬はいつもの甘い声で歌い、不覚にも泣きそうになってしまった。
アンコール最後の “インスタントラジオ” が終わり、メンバーの退場後、再びOMC-1が登場し、エンドロールをもって『SEKAI NO OWARI at 武道館』は幕を閉じた。
全17曲、時間としては2時間以上やっているのに、あっという間に感じるライヴパフォーマンスで満員の武道館を熱狂させ、臆することも斜に構えることもなく、ただ自分達の音楽を伝える彼らは音速でここまで来た気がするが、これも実は通過点にしかすぎないとさえ思わせる素晴らしいライヴだった。
撮影/関 信行(go relax E more)
取材・文/まさやん
01.スターライトパレード
02.虹色の戦争
03.天使と悪魔
04.Never Ending World
05.死の魔法
06.不死鳥
07.yume
08.なかじんソロ
09.白昼の夢
10.世界平和
11.Love the warz(新曲)
12.花鳥風月
13.幻の命
14.ファンタジー
15.青い太陽
アンコール
16.眠り姫(新曲)
17.インスタントラジオ