音速ライン「心のままにチョックインツアー」2012 3/16@代官山UNIT
2月22日にアルバム『Alternative』をリリースした音速ラインが3月16日、ツアー「心のままにチョックインツアー」2012を東京・代官山UNITからスタートさせた。
メンバーが登場すると、大きな歓声と共に満員のフロアは、その波をそれでも前へ動こうとさせる。今回は『Alternative』全曲を中心に、懐かしいナンバーも聴かせてくれた。
次々に転調するキャッチーで、どこか懐かしさのあるメロディに、藤井敬之の甘く優しい、でも突き抜けるようなまっすぐな歌声が実に心地よい。ベースの大久保剛はどんどんとオーディエンスを煽り、弦を押さえる左手は次から次へと音の世界を展開していく。
「baby baby!!!!!」を歌い出して数秒、藤井が止まってしまった。でもそんな演奏の中断は、その日のそこのライヴだけで味わえるもの。オーディエンスは当然、大喜び! 藤井は少し照れくさそうに「一緒に歌おう!」とフロアへ呼びかける。その一連の流れは実に自然で、初めて音速ラインのライヴに参戦した私でさえ、その”仲間”に入れた気がした。
しかしトークの面白さには少し驚いた。藤井は「いやー、シャレてるなぁ、この街!」と冒頭切り出すと、そのシャレオツ発言に大久保は本気で笑う。勿論オーディエンスも笑う。「俺と大久保はバブリーな時期を経験しているから」というと、大きな肩パットが入ったスーツの話から、月刊ムーの話まで飛び出した。…っと、さすがに月刊ムーは、若いオーディエンスをポカンとさせていたようだったが(笑)。
フロアがクラブではなくディスコのように感じたのは「1980」のサウンドのせいだろうか。胸を締めつけるような懐かしく切ない叙情的メロディに、エレドラ(エレクトロニック・ドラム)の特徴的な音が、ミラーボールの光と共にフロアに降り注ぐ。
しかしどうやら代官山ネタはまだ続いているようで、あれだけフロアを熱気に包んだにも関わらず、相変わらずトークでは笑いに包んでしまう。藤井は代官山らしく(?)、気取った体-テイ-(あくまでもテイらしい)でぼそぼそと喋り始めたが、格好をつければつけるほどフロアには笑いが広がり、結局のところ、オーディエンスにイジられる。まぁそれだけ愛されるキャラなんだろう。かと思うと「お前ら頑張れよ!」という藤井に「はーい!」と素直なオーディエンス。何やら先生と生徒のようだ。
…と、このままいくと、いかにトークが面白いかという話で終わってしまいそうなので、この位にしよう。
ドラムのパワーが象徴的な「i know i know」にフロアのテンションもあがり、攻めたアンコールでは懐かしい「声」のサウンドにステージ背後のライトが列をなして激しく瞬く。点滅を繰り返すスポットライトや頭を大きく振る大久保に煽られるフロア。
藤井が呼び込むように、くいっと指をまげるとオーディエンスは一緒に歌う。
「今日はありがとう!」
大久保はマイクではなく生声で叫び満面の笑みを浮かべた。
Wアンコールを受け登場した藤井はFacebook用にとみんなの写真を撮る。
ここでもピースの仕方が妙に古くさいという話になり、ツボに入った大久保はずっと笑ってしまっていた。オーディエンスを楽しませることは勿論だが、本人達自身が何より、このツアー初日のステージを楽しんでいる姿が最高に思える。
演奏が始まると大久保はステージ横の大型スピーカーによじ登り、もっともっととオーディエンスを盛り上げる。
攻めたアンコールとは違い、Wアンコールではそのポップな空気感が、まだ寒さ残る三月の東京を暖めた。
この後、それでもまだ拍手が鳴り止まないフロアが一瞬ざわついた。
何だろうと目をやると藤井と大久保がフロアにいるではないか!!
みんなとアカペラで最後を締めくくりたいと、改めて2人はステージに戻り、「空になる」を全員で歌い、大きな拍手と歓声の中、藤井は最後に「また(SHIBUYA)AXでね!」と手を振った。
この後、宮城、福岡など11カ所をまわり、5月11日はまた東京・SHIBUYA-AXへ戻ってくる。多分、音速ラインの音楽やライヴは中毒性があるのだろう。また次も観てみたいと思わせてくれたライヴだった。
Photograph by:Ayako Asami
TEXT:まさやん
■ 音速ライン オフィシャルサイト
http://onso9line.com/