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山崎まさよし TOUR 2012-2013「SEED FOLKS」@渋谷公会堂 2月6日

山崎まさよし TOUR 2012-2013「SEED FOLKS」@渋谷公会堂 2月6日

0205SHIBUYA.jpg昨年12月、東京・立川市市民会館 大ホールからスタートした山崎まさよし TOUR 2012-2013『SEED FOLKS』。
全36か所・38公演の中盤戦にさしかかる渋谷公会堂での東京公演2日目はあいにくの雪模様だったが、開場する頃にはすっかりやんでいた。
まだ先はたっぷりある為、今回はセットリストや具体的な流れは伏せておくが、山崎まさよしというミュージシャンの織りなす世界感に触れてもらえればと思う。


山崎まさよしのライヴには余計なものがない。
ド肝を抜く演出、煌びやかな照明。それはそれでエンターテイメントとして素晴らしいが山崎のライヴに存在するのは、彼の歌声とギター、 江川ゲンタ(Dr.Per.)と中村キタロー(Ba.Key.) の演奏、そしてそれを共有する時間だけ。(かといって、装飾が貧そだと言っているわけではない。)
股上の深いズボンにサスペンダー、キャスケットというクラシックスタイルで登場した山崎。
Muddy Watersがそういうスタイルだったかは知らないが、50年代のブルーズ・マンのような出で立ちであることには見て取れた。
ギターを軽くチューニングしながら少し間を置き、自分とオーディエンスの息を合わせると、深く響く弦の音が静かにライヴをスタートさせる。
ギターボディにあたるライトが山崎のリズムに合わせ会場を淡く照らし、棘のない山崎の歌声は強い存在感を放つ。まるでそこにオーディエンスがいないのかと思うほどの静けさが、歌が止んだと同時に割れんばかりの大歓声へと変わった。

「雪が降りましたけど、どうですか?…(会場、一瞬沈黙)どうですか?って訪ねてるんですけど…(笑)、どうですか?!」
淡々とした口調で話す山崎特有のMC。開場からも笑い声と「大丈夫!」や「寒い!」という声が飛ぶが、絶妙な間で「知らんがな!」とツッコミをいれる。これも山崎流(笑)。
さらに衣装に対しても「カワイイ!!」という反応があると「カワイイって言うな!…いやカワイイにシフトチェンジする。60歳くらいになったら、これ(ズボンの股上)がどんどん上に来たりね。」と笑うと、会場からの「ずっとやって!」という声を汲んで、中村が「ずっとやってねぇ〜ヤマさん♬」と歌ってみせた。

昨年11月にリリースしたシングル曲、“星空ギター”は、遠距離恋愛をテーマにした歌詞がブルージーかつ山崎らしいメロディ展開で切なく響く。どうしようもなく、やりきれない裸の感情とロマンチックな想いが旋律を通してオーディエンスへ注ぎ込まれる。


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中盤戦にさしかかる頃、約10分の休憩を挟みステージは続く。

中村と動きを合わせたステップやちょっとしたダンスは無条件に会場が沸く。
山崎のライヴには江川と中村がかかせない。だから演奏やステージングでの息がぴったりなのは勿論のこと、3人交えてのトークはまるでスタジオでリハをしているようにリラックスしている。そんなふとした話から山崎は「よく、歌詞について「実体験ですか?」と聴かれるけど、こんな体験ばかりしていたらお肌ボロボロになっちゃうよ!」と言った。
お肌ボロボロって、女子か!と、今度はこちらがツッコミを入れたくなるようなトークで会場も爆笑。
山崎は自分のことを女々しいと言うが、それはきっとミュージシャンにとって、悪いことではないだろう。
でなければ“One more time, One more chance”のような、いつまでも色褪せない名曲は生まれないだろうから。

先ほどまでリラックスムードで爆笑していたオーディエンスも、完全にこの楽曲の世界に身を置いているのが空気として伝わる。97年リリースだから、すでに16年の歳月が経っている。
狂おしいほど切ないサビは慟哭に似ていて、きっとこの曲を傍らに幾重もの記憶が構築されていったのだろう。
しっとりとした曲が続いた中盤戦の始まりからどんどんと加速する。
タオルを回したり、シンガロングしたり、それに山崎がフェイントをかけてみたりと、オーディエンスのテンションがあがりっぱなしで本編は終了。

「今時、こういう格好しているのは、「相棒」の水谷豊さん位です。」と、サスペンダーに手をかけて水谷豊扮する杉下右京のマネをしてみせ、アンコールではまた和やかなムードの笑いに包まれた。
「渋谷は若きミュージシャンの登竜門で、Egg-man、そして渋谷公会堂、NHKホールへと段階を踏んでいくんです。」
確かに山崎の言葉通りで、そういう意味でも「渋谷公会堂」という名前には沢山のミュージシャンの希望が詰まっている。
かく言う山崎も2006年から2011年まで「渋谷C.C.Lemonホール」というネーミングライツホールだったこの会場が「渋谷公会堂」という名前に戻ったことを喜んでいた。
そして設立15年にあるファンクラブ「BOOGIE HOUSE」について話すと「活動を続ける上で何か出来たらいいんだけど、歌うことしか出来ないし……つまりは苦し紛れに歌う(笑)」という出口のないオチに会場は大爆笑。
しかし、「ずっと退会せずに「BOOGIE HOUSE」へ入っていてくれたことに感謝します!今日来てくれた人に感謝します!」と、すべての人へ感謝を述べると大歓声と拍手が巻き起こった。
リリースが楽しみとされる新曲も披露した聴きごたえ十分なセット内容のTOUR 2012-2013『SEED FOLKS』渋谷公会堂2日目は大歓声で幕を閉じた。



0206SHIBUYA3.jpg山崎の世界と歌声は時にコミカルに、時にエロティックで情熱的に、時に切なく、時に寛容にと、様々な表情を見せながら、オーディエンスを魅了し続ける。
しかしそれは単に感性の問題だけではない。イメージを具現化出来る技術を持ち合わせているからだ。真髄には確固としてブルーズが根付いているが、そこから派生するロックやフォークなどの要素が「山崎まさよし」という“ミュージシャン”を作り上げていた。
「種を蒔く人」という意味を持つ『SEED FOLKS』。
山崎が蒔いた種はオーディエンスに花を咲かせ、若いミュージシャンには枝葉をつける。ここ最近の山崎のステージには、言葉ではなく音楽を通してそういうメッセージが込められているように感じるが、今回は特にそれを感じる素晴らしいライヴだった。
4月27日(土)、新潟県民会館にて全公演が終了する時にその種はきっと満開の花を咲かせるだろう。

 

PHOTO:岩佐篤樹
TEXT:秋山昌未
 

セットリスト

※全公演終了後、セットリスト公開。

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