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星野 源 横浜アリーナ2Days「ツービート / バンドDay」

星野 源 横浜アリーナ2Days「ツービート / バンドDay」

g12162.jpg12月16日(火)星野 源 横浜アリーナ2Daysツービート / 弾き語りDay

今年2月の日本武道館公演で病気療養から復帰した星野が次に目指したステージは横浜アリーナ2Days。「ツービート / 弾き語りDay」、「ツービート / バンドDay」と銘打った2公演のチケットは即完。それぞれ違う魅力で総勢2万2千人のファンを魅了した。

ミニスカサンタ2人の後に登場した星野は、彼女たちと腕を組みステージ中央へ移動。赤いベルベットの幕にシャンデリア。このゴージャスなセットを背に、Tシャツ姿でアコギを弾く星野の姿はかなり奇妙にも思えた。例えば友人に誘われては来たものの、星野源という存在をさほど知らなければ、もしかしたらオープニングアクトかと勘違いするかもしれない。しかしそのギャップが妙に面白い。“歌を歌うときは”、“ギャグ”、“化物”と歌い進めていくも、あまりに静かに聴き入る会場に、「このまま座っていると横浜アリーナっぽくないので、一回立ってみますか。」とスタンディングを促す。確かにそれまで歌った曲は立ち上がって拳を振りかざすタイプではなかったが、さすがに横浜アリーナの雰囲気を更に楽しみたかったのか、「一回アレやっていいですか?“アリーナー!”っていうやつ。それやったら座っていいから。」と発言し、会場も思わず爆笑。MCでは相変わらず序盤から笑わせてくれた。

7曲目の“くせのうた”あたりで、最初に感じていた横浜アリーナらしくないという違和感は消え始めていた。そうか。「らしくない」というのは、今迄経験がない為にそう感じるだけで、これもひとつのスタイルなのだと、会場の空気を吸い込みながら反響する “レコードノイズ”のヴォーカルエコーを聴きながら感じていた。ギターの弦が擦れる音と星野の歌声、メロディ。この広い会場で聴こえるのはたったそれだけ。騒ぐライヴも楽しいが、こうやって音の隅々まで堪能できるのは昨今、最も贅沢な音楽との向き合い方かもしれない。それを理由に、“くだらないの中に”が終わる頃には、すっかり星野の世界に浸っていた。

「すごいね、みっちり。」手でひさしを作り、客席を見回す星野。最近はバンドセットでのライヴも多く、その中で弾き語りはあるものの「何となく原点に帰ってみたいなと思った。」と、弾き語りライヴを開催した理由を話した。更にかつて奥田民生が広島市民球場で一人で弾き語りをした計画を自分も真似したかったと続ける。しかし「ちょっと淋しくなってきたので、ゲストを呼びたいと思います。」と、ギターの長岡亮介(ペトロールズ)を呼び込み、“穴を掘る”を二人で演奏。途中、どこかふざけたような長岡のコーラスと星野のファルセットで笑いを誘いつつ、オーディエンスのクラップは、星野と長岡の重なる音色と共に弾んだ。

「この広さで、このコミュニケーション出来たら凄いでしょ。素晴らしいお客さんです。ありがとうございます!」星野は再び会場を見回しながらお礼を言うと、“Night Troop”のイントロ、呼吸を合わせるように二人で向かい合いギターを鳴らすと、コーラスや表情豊かなギターはそれ以外の音までも想像させた。その後“地獄でなぜ悪い”が終わると「この後、そっちに行くので。」と、センター席中央に設けられたセカンドステージを指差し、二人は退場。その間、ステージ中央の大型スクリーンには星野の横浜アリーナ単独公演を記念し、一流ミュージシャン(?)からのメッセージと題して、レーザーラモンRGによる佐野元春のモノマネや、清水ミチコによる桃井かおり、森山良子、井上陽水のモノマネが会場を湧かせた。(このメッセージは星野がステージから退場するごとに行われる)

映像が終わるとセグウェイに乗って再び星野が登場。センター席を囲むような花道を通る星野に大興奮のオーディエンス。星野が昔から大好きでカヴァーしていたという、細野晴臣の“冬越え”を披露。 星野は本当に自分が好きな曲や、自分がカヴァーする意味があると感じられるものだけをカヴァーしたいと語る。カヴァーに関して、いささか星野寄りの考えを持つ筆者は、少しの肩入れで “冬越え”を楽しんだ。

「全然話は変わるけど。」ギターをつま弾きながら今年6月にリリースした『Crazy Crazy/桜の森』の初回限定盤DVDに収録されている“ばらばら”がどうやって出来たかという話に。「すげークソみたいなフラれ方をして、クソみたいな気持ちで作った曲なんですけど(笑)。」と、この作品にをびっくりするほど本音の言葉で振り返りながら、フラれた女性の続報で会場をざわめかせると「そんなあの子は、透明少女。」とNUMBER GIRLの“透明少女”へ繋げる。(そんな話から繋げて良いのだろうか!笑)そして“老夫婦”でセカンドステージを降りると、X-JAPANの“Forever Love”をBGMに、再びセグウェイで退場。セグウェイとX-JAPAN…どうやら小泉元首相をイメージしているらしい(笑)。

「どうも、奥田民生です。」頭にタオルを巻き、作務衣姿で登場した星野。“さすらい”を歌い始めたところで「待てーコラー!!」の声。スペシャルゲストとして、本物の奥田民生が同じ衣装で登場。これにはオーディエンスも騒然!奥田の“さすらい”や、星野が高校生の頃に聴いて気持ちが救われたというPUFFYの“MOTHER”を二人でプレイ。更に、「せっかくなので、二人でやる新曲を作ってきました。」と星野。思わず奥田も「ほら、パッとやる時に新曲を作ってくる位のやる気ですよ。だって俺なら在りものでやるもん。」と言い切り、会場を笑いに包んだ。その新曲“愛のせい”を再び二人で歌うと、奥田はステージを降り、再度長岡亮介を呼び入れると「あの人だけは駄目だね。緊張しちゃうんだ。裏とかでも全然喋れない。」と、奥田への本音を明かす。

ライヴも後半、長岡との“桜の森”にクラップが沸き起こると、「『働く男』という本を出したことがありましたが、本当は働きたくない。休みたいです。休んでるんだけどね。すごく休んでるんだけど、分かり易い、南国でトロピカルジュースを飲む。そういうことをやりたい(笑)。ただそう思うたびにこの曲が頭の中を流れます。 日々働いているみんなに捧げます。」と“ワークソング”へ。「働け この世のすべて背負え 定時まで 輝け 夜道の隅を照らして」ゆっくりとじっくりと、雪が落ちる程の速度でそんな歌詞や歌声、メロディが体内へ沁み込む。

「ウエーブがやりたい!」会場からの要望が出るも、時間の関係で全員で一斉にジャンプをすることに。その段取りを説明、練習しながら「盛り上がりのねつ造。」と笑う星野に、オーディエンスもつられて笑う。それでも「いくよ!」のかけ声に一体感は増し、“夢の外へ”でテンションUP!本編は “ばらばら”で締めくくった。

アンコール、放送作家の寺坂直毅による口上で今年の星野を振り返ると、ステージの幕が開き、目映い光の中、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S) 、ピエール中野(凛として時雨) 、小林創(Pf) 、長岡亮介(Gt)によるバンドセットが登場。「どうもー、星野源でーす!」白のスーツ姿の星野が改めて挨拶すると、 “Crazy Crazy”で盛り上がりも最高潮!「終わりです!でも逆にすごくない?」サプライズで登場したバンドメンバーは、この曲の為だけに朝からリハーサルに入ったらしく、オーディエンスからもアツい拍手が注がれ、星野も嬉しそうな笑顔を見せた。最後は再び星野ひとりになったステージで “Stranger”を歌い上げ、【ツービート / 弾き語りDay】は幕を閉じた。

「幸せですねぇ。」最後の最後、星野はつい言葉が出てしまったという感じで笑顔を見せ、約2時間45分にも及ぶステージは、翌日の【ツービート / バンドDay】へ繋がる。


g12171.jpg12月17日(水)星野 源 横浜アリーナ2Days「ツービート / バンドDay」

前日の悪天候から一変、冬晴れの 12月17日(水)の横浜アリーナは、バンド編成による「ツービート / バンドDay」。前日の “Crazy Crazy”で発射された銀テープを持っている人の姿もあった。バンドに加え、 ストリングス&ホーン・セクション18名がステージに上がればそれだけで圧巻だ。昨日同様ミニスカサンタと腕を組み登場する星野源。ストリングスの“デイジーお味噌汁”から始まり、2曲目の“ギャグ”ではスタンディング。弾き語り特有のミニマルさとを堪能しつつ、奥田民生やバンド登場のサプライズもあった前日だが「今日はサプライズないからね。」の発言に軽いブーイングと、星野の「うるせー!」がやはり笑わせてくれた。しかし「オレの身体的サプライズが。」と、意味深な言葉を残し、“穴を掘る”へ。まぁ笑っていたので他愛ないことだろうと思いつつ、前日は長岡亮介(Gt)と二人で演奏したこの曲は、ホーンやピアノがチャールストン的軽快さで会場を楽しませた。

「ここでみんなに俺の身体的サプライズを言っていいですか?出てきた瞬間にめっちゃウンコしたくなって。」初の横浜アリーナでまさかのウンコ発言!しかし優しいファンの「トイレ行けばー!」の声に「いい?ここ横浜アリーナだけどいい?」と、さらにまさかのトイレへ直行!さて、ここで困ったのは残されたバンドメンバー。結局セッションでうまく繋ぐと、大型スクリーンに映るのは星野の帰りを待つマイクのアップ。これには会場も大爆笑。バンドメンバーと全てのスタッフに敢闘賞をあげたいところだ。

こんなバンドセッション中、何食わぬ顔で踊りながら帰ってきた星野の「ありがとう。オニのように出た。」に大爆笑の嵐。そして「本来のオレ!」と気を取り直し、“くせのうた”へ。大げさなことは何ひとつ歌っていないのに“未来”のメロディは暖かく光り、「名曲」という表現以外思いつかないほど秀逸な言葉が並ぶ“くだらないの中に”は、前日と同じくオーディエンスを魅了した。ここでセカンドステージへ移動。 勿論移動手段はセグウェイ。 前日同様、一流ミュージシャン(?)からの横浜アリーナ公演祝福コメントがオーディエンスを笑わせ、セグウェイで移動する星野には、みんな身を乗り出して手を振った。

セカンドステージで弾き語る“ひらめき”が終わると、星野は静かな口調でこう言った。「きっと、オレのライヴを観に来てくれるみなさんは、どこか変態な部分があると思うんです。やっぱりみんな同じだと思うけど、休日ってSEXしたくなるよね。」その言葉に「なるなる!」と元気よく答えるオーディエンスの言葉を拾い、「それじゃあみんなでやってみようか。僕がSEXしたくなるよねって言ったら、全員でなるなるって。」とMCを広げる。まぁ内容はともかくとして(笑)、この人は本当にオーディエンスとのコミュニケーションが巧い。臨機応変にその日しかないMCを繰り広げ、“スカート”へ。

星野は、中学生前から曲作りをするも、当時はネットがそれほど普及していなかった状況もあり、YouTubeなどでオリジナル曲を発表する場がなかったと語る。「でも何か分からないけど、届け!みたいな、念じるみたいなことをずっとしていましたが届くわけもなく。とは言え、もしその念がすごく遅いスピードで、14年くらいかけて皆さんの下にふと伝わった、そういう風に思いたいです。それで弾き語りをしっかりやりたいと思いました。」こういう時の星野がとても真摯に純粋に音楽と向かい合っている。初の横浜アリーナ公演なのにトイレに行くは、くだらない話をするは。でもそんな不真面目さと真面目さの共存がこの人の魅力かもしれない。

随分昔に作ったという“老夫婦”、前日もカヴァーしたNUMBER GIRLの“透明少女”、そしてリリースの予定はないが昨日だけで終わらせるのは勿体ないと、奥田民生と一緒に歌うために作った新曲“愛のせい”を歌い上げ、セカンドステージは終了。(やはりBGMは、X-JAPANの“Forever Love”)

ストリングスの“さようならのうみ”から再びメインステージに戻ると、会場をミラーボールの光がプラネタリウムのように幾千の星で埋め尽くす“レコードノイズ”では、完全に楽曲の世界に飲込まれ、歓声があがる懐かしいナンバー“兄妹”では激しく変わる音階に合わせるように、笑顔でリズムをとるオーディエンス。



本編最後の曲前、再び「ウェーブしたい!」の声を受け、バンマスの合図でウェーブ。「遅い。頑張れ(笑)。 あ、いいね!」と、ステージからウェーブを観る星野は本当に楽しそうだった。そして“桜の森”で締めくくると、前日と同じくアンコールでは、寺坂直毅による口上で、2年前のこの日12月17日は星野がくも膜下出血の手術をした日と告げられ、会場は感慨深い雰囲気に。

しかしそこに登場したのは、長髪サングラスでビブラート全開のニセ明!勿論歌は“君は薔薇より美しい”。弾けまくったそのステージに会場の熱量は一気に上がる!しかしニセ明はこれで終わりだと、最後にサングラスとウィッグをステージの端にそっと置き、まるで山口百恵の引退ライヴのような厳かさを演出。(20代には分からないネタかもしれないが)笑いが耐えないアンコールだったが、「今日はみんなと一緒に過ごすことが出来て本当に幸せです。ありがとうございます。今年1年は色々ありましたけど、恩返しとかをしたいと思ってやってきた1年でした。来年はよりもっとくだらないことや面白いことをやっていきたいと思っています。来年もよろしくお願いします。」

2012年、手術からの復活。2013年再びの活動休止。2014年、そこから復活した星野の挨拶は本当に大きな意味を持っており、オーディエンスもただただ拍手で気持ちを交わした。そして “Crazy Crazy”で【星野 源 横浜アリーナ2Days「ツービート / 弾き語りDay」「ツービート / バンドDay」】は熱狂のうちに幕を閉じた。

星野の退場後、興奮冷めやらぬ会場だが、ステージの大型スクリーンに「星野源ドキュメンタリー映画化決定」という朗報がに映し出され、新たな興奮を生んだ。詳細はまだ発表されていないが、来年も星野源に注目したい。


Photo by 三浦知也/五十嵐一晴
Text by 秋山昌未



■ オフィシャルサイト
http://www.hoshinogen.com/

 

フォトギャラリー

セットリスト


12月16日【ツービート / 弾き語りDay】
01.歌を歌うときは
02.ギャグ
03.化物
04.くせのうた
05.レコードノイズ
06.フィルム
07.くだらないの中に
08.穴を掘る
09.Night Troop
10.地獄でなぜ悪い
11.ひらめき
12.スカート
13.冬越え(細野晴臣カヴァー)
14.透明少女(NUMBER GIRLカヴァー)
15.老夫婦
16.さすらい(奥田民生カヴァー)
17.MOTHER(PUFFYカヴァー)
18.愛のせい
19.桜の森
20.ワークソング
21.夢の外へ
22.ばらばら
・Encore
En1.Crazy Crazy
En2.Stranger


12月17日【ツービート / バンドDay】
01. デイジーお味噌汁
02. ギャグ
03. 化物
04. 穴を掘る
05. もしも
06. ステップ
07. Night Troop
08. くせのうた
09. 未来
10. くだらないの中に
11. ひらめき
12. スカート
13. 老夫婦
14. 透明少女
15. 愛のせい
16. さようならのうみ
17. レコードノイズ
18. ワークソング
19. 兄妹
20. 地獄でなぜ悪い
21. 夢の外へ
22. 桜の森
・Encore
EN1. 君は薔薇より美しい
EN2. Crazy Crazy

 

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