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山崎まさよし【Yamazaki Masayoshi String Quartet

山崎まさよし【Yamazaki Masayoshi String Quartet "HARVEST"】

harvest2.jpg昨年4月に東京・かつしかシンフォニーヒルズにて開催されたアコースティックスペシャルライブ【LIVE SEED FOLKS Special in かつしか】を収録したライブアルバム『HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~』を今年4月22日にリリースした山崎まさよし。
同月24日より弦楽四重奏を従えた【Yamazaki Masayoshi String Quartet “HARVEST”】を全国9地区で開催し、5月19日(火)愛知県芸術劇場コンサートホールにてファイナルを迎えた。


今年の9月でデビュー20周年を迎える山崎だが、10周年、15周年と節目の年がそうであったように、20周年になる今回も服部隆之氏のアレンジによりライヴは作られた。
繊細でありながら時としてダイナミックさと重厚さを感じさせる弦楽四重奏の響きは山崎まさよしサウンドを彩り、 5月8日(金)東京文化会館 大ホールでの東京公演もオーディエンスを熱狂させた。


上野公園の一角にあるこの東京文化会館は、1961年に建てられた老舗のコンサートホール。
いたるところに歴史の匂いを感じていると、ステージには室屋光一郎(1st Vio)、伊藤彩(2nd Vio)、榎戸崇浩(Viola)、堀沢真己(Cello)が登場。互いの音を合わせる姿はまさにクラシックコンサートでよく観る風景だ。
チェロとヴィオラの音に合わせ山崎まさよしが登場。
デビュー曲”月明かりに照らされて”でスタートさせると、ストリングスの音色に山崎の声とギターが溶け込んだ瞬間、そのドラマチック性に感動する。 オーケストラが演奏するためのステージは広い。むしろ5人が演奏するには広すぎる程だが、気がつけばすぐにその広さを感じなくなっていた。


「東京文化会館にやってきました。あ、慌てなくて良いですよ。」少し遅れて到着したオーディンスたちに山崎が声をかけると、張りつめていた空気がふと和らいだ。
「別に気負うことはありません。ちょっとだけフォーマルになってもらえれば。後は取扱説明書に従って(笑)。」と山崎ならではの冗談も飛び出しつつ「今日はハーベストという収穫を楽しんで下さい。」と挨拶。
松田聖子のカヴァー”SWEET MEMORIES”は山崎の声にしっくり馴染み、実に心地良い。

harvest3.jpg”ベンジャミン”のギターはカエターノ・ヴェローゾのような憂いを持ち、その憂いは“星に願いを”へと結ぶ。”ア・リ・ガ・ト”が終わると、ピアノへ移動。何層にも重なる拍手がステージ上の山崎に降り注いだ。


「20周年ということで、このような贅沢な内容で。…贅沢ってこれ、お客さんにとって贅沢なのか僕にとって贅沢なのか(笑)。」と再びMCで和ませると、 山崎まさよしバンド の江川ゲンタ、中村キタローの話へ。
「二人とも音がデカいんですよ(笑)。」
そんな話に会場からも再び笑いが起こる。しかし、”心の手紙”が主題歌の映画『春を背負って』の話では、CGが多い昨今、リアルな画にこだわる木村大作監督の想いに感銘を受けて曲を書いたと語り、ピアノで同曲を歌い上げると会場は魅了された。


今回のライヴは二部制になっており、ここで第一部は終了。
15分の休憩を挟んだ後、第二部が始まると、山崎ひとりで登場。
普段ライヴ会場で見られるオーディエンスの振り付けの話や、20年の月日を一緒に歩んできたファンがライヴに旦那さんを連れて来る話など、ライヴでの一幕を独特の口調で笑いに変える。
第一部で残っていた緊張感が一気にほぐれたところでストリングスメンバーを呼び込む。…と、最後尾に服部隆之氏の姿が。これには山崎も驚き、思わず笑ってしまう。


実は服部、山崎に対して自分が来ていることを完全なサプライズにしたかったらしいが、誰かが山崎に伝えたことからそれは失敗に終わるも、このタイミングで出てきたことに山崎は心から驚き、喜んだ。
しかも服部は第一部の終盤に到着していたらしいが、山崎に気づかれないように楽屋の電気を消し、万が一そこへ入ってきても大丈夫なように、シャワールームに隠れるという万全な(?)対策まで取っていたことを暴露。
「何ですか、その根性!」思わず山崎もツッコミを入れながらオーディエンス共々、爆笑。
しかし服部はしみじみ「良い演奏でしたね!」と言うと、ツアー中とは思えないほど山崎の声の艶があると語った。確かにそれは感じていた。コンサートホールならではの声の響きというだけでなく、伸びやかな声の深さは圧倒的存在感を放っている。


そして再び、江川ゲンタと中村キタローの話になると、「あの二人には音楽的に鍛えられた。」と心情を語る。10年前、ストリングスとトリオバンドでコンサートを開催した際、服部がストリングスアレンジをした”あじさい”を、ギターではなくストリングスと歌で表現させるのが難しかったと当時を振り返る山崎。
服部も「テンポがFIXされないですからね。山崎さんが息を吸うようにどんどん覚えていくから、それにぴったりとついてくる。インテンポじゃないのがちょっとクラシックに近い世界。」と音楽トークを展開。更にこのステージはあのカラヤンも立ったと服部が告げると「え、ここ!?」と驚く山崎。あまりのことに「今のところ、忘れさせてください。」と一言。息がピッタリの二人のMCは、他愛ない話から音楽の真髄まで及び会場を楽しませ、服部はここで退場。先程話に出た“あじさい”を披露。
その豊潤なストリングスの音色と、暖かい山崎の歌声が会場を包み込んだ。


大地の力を強く感じる“メヌエット”から、 ループマシーンを用いた“水のない水槽”へ。細かく音を刻むチェロ、凛としたバイオリンの音色、コンテンポラリーミュージックのようなアバンギャルド性を持つこの曲に大きな拍手が注がれた。


「隆之さんはエイターテイナーですね。」と、服部の登場にまだ動揺を隠せない様子の山崎。
98年にリリースされた、この“水のない水槽”でストリングスアレンジを服部氏が担当したのが出会いのきっかけ。
「想像力が駆り立てられるアレンジ。ボトムの部分が沸き上がってくる旋律。一緒に仕事をした時、いつも心地良い感じがします。」と、服部氏に対しての敬意を言葉にするが「オレは何で今日はこんなMCなんじゃい(笑)。いつもはもっとくだけてるやろ。」と、真面目な口調で語っていた自分が恥ずかしくなったのか、わざとふざけた口調で会場を笑わせる。


また、オーディエンスからポール・マッカートニーのライヴに行ったかと問われると(今回は行っていないらしい)、2002年にTVの企画でワールドツアー中のポールに会った時の話に。
ポールと一緒の撮影した記念写真に写る自分は、笑顔が引きつっていて自分ではないみたいだと笑いも交えつつ振り返った。


山崎のピアノは優しい音色で“ツバメ”を奏で、バイオリンの少しの切なさが叙情的に響くとライヴもいよいよ後半。

“Flowers”では再びギター位置に戻り、ギターの軽快な音色にオーディエンスもスタンディングでクラップ。
更に“ドミノ”では、緊張感を併せ持ちながら疾走するストリングスを背負いボルテージを上げる。間奏ではカルテットのみでヴィヴァルディ<四季>冬第1楽章を華麗に披露。大歓声が鳴り止まぬ中、山崎のヴォイスパーカッションが炸裂する“Fat Mama”で更にオーディエンスを盛り上げれば、クラップも更に強くなる。ここはもうカラヤンも立った格式高いコンサートホールではなく、ライヴハウスだ!
熱気を帯びながら、またも止まぬ拍手と歓声を受けて、山崎も「素晴らしい!」と興奮気味。
「本性が(笑)。みなさん(手を)叩いてしまいましたね。それもいいじゃ〜ないの〜(日本エレキテル連合の真似らしい)」と、本来の自身のライヴの熱狂を手の内にした山崎はギターを弾きながら「今日は本当にありがとうございました。サプライズもあり…。最近この歳になるとサプライズが泣けてくるんです。20周年で本当に幸せな想いです。」と感謝の言葉を述べた。
そして「まだ歌ってもらうからね!」と言うと、オーディエンスの歌声と共に“晴男”で本編は終了。


アンコール、 タンバリンの音をループマシーンに入れこみ、Stingの“Englishman in N.Y”をカヴァー。
続く“セロリ”では、ひとつの花をふたつにするかなり初歩的な(笑)マジックで盛り上げると、ストリングスメンバーを改めて紹介。


最後の“お家へ帰ろう”では「みんなこれ出来る?」と、クラップではなくフィンガースナップをリクエスト。オーディエンスのフィンガースナップと歌声の響きに合わせブルースハープを弾く山崎は、会場を嬉しそうに見回し、アウトロの余韻を楽しむようにライヴは終了。


【Yamazaki Masayoshi String Quartet “HARVEST”】は、山崎がストリングスを先導することもあれば、ストリングスが山崎の音を強く彩ることもある。互いの音が美しく溶け合ったかと思えば、ある種戦いにも似た音のせめぎ合いがあったり、曲ごとに見せるケミストリーは実に素晴らしく、スタンディングオベーションで東京公演の幕は閉じた。


Photography:岩佐篤樹
Text:秋山昌未

フォトギャラリー

セットリスト

<第一部>
M01. 月明かりに照らされて
M02. 僕はここにいる
M03. SWEET MEMORIES/オリジナル 松田聖子
M04. コイン
M05. ベンジャミン
M06. 星に願いを
M07. ア・リ・ガ・ト
M08. 心の手紙
M09. One more time, One more chance

<第二部>
M10. あじさい
M11. メヌエット
M12. 水のない水槽
M13. ツバメ
M14. 花火
M15. Flowers
M16. ドミノ
M17. Fat Mama
M18. 晴男

ENCORE
En1. Englishman in N.Y/オリジナル Sting
En2. セロリ
En3. お家へ帰ろう

Interview

Live Report

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