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ディスク・レビュー

SEKAI NO OWARI「INORI」

ARTIST : SEKAI NO OWARI

TITLE : INORI

RELEASE DATE : 2011年8月17日

PRICE : ¥1,260(tax in)

CD NUMBER : TFCC-89337

LABEL : TOY’S FACTORY


<オフィシャルインタビュー掲載
2010年、突如として音楽シーンに頭角を現したSEKAI NO OWARIが、遂に2011年8月満を持してトイズファクトリーより1stシングルをリリース、メジャーデビュー。
『INORI』と題された トリプルリードシングルは、圧倒的なクオリティーとボリュームを持ち、収録される『花鳥風月』『不死鳥』『Never Ending World』の3曲とも別々のメンバーによって作詞/作曲が行われ、別々の頭脳とアイデンティティーをもって表現されている。そして、その3曲が渾然一体となり、SEKAI NO OWARIの更なる進化と可能性の高さを提示する“究極のPOPS”として、聴く人の感性を激しく揺さぶる。

<収録曲>1.花鳥風月 2.不死鳥 3.Never Ending World


 

【SEKAI NO OWARI オフィシャルインタビュー】
2010年、僕らはSEKAI NO OWARIという特別なバンドと出会った。
忘れがたきインパクトをたたえたバンド名、ドラマーとベーシストの代わりにDJを担うピエロがいる変則的な4人編成、そして透徹した哲学を貫きながら、この世界の有り様とそこに木霊する“生命の声明”を暴き、鮮烈なコントラストをつけるようにそれをどこまでもポップに解き放つ楽曲の訴求力。しかも彼らは、自らの手でイチから築き上げたライヴハウス“club earth”で寝食をともにしながら、自分たちにしか体現できない音楽世界を育んでいた。バンドにとってその場所は、かけがえのない記憶と不屈の覚悟に彩られた秘密基地であり、時に仲間と音楽のあいだに流れるピュアネスを死守するシェルターであり、音楽シーンという広大なフィールドに足を踏み入れる前夜と第一歩を結ぶ玄関だった。はじめて彼らに会ったときリーダーの深瀬慧が語ってくれた、SEKAI NO OWARIのはじまりのエピソードが、いまも脳裏に焼きついている。

——“club earth”を作ったきっかけは、僕の人生と大きく関わるんですけど。僕は中学もあまり行ってなくて、高校も中退して。その後アメリカンスクールに通って、ニューヨークへ留学に行ったんですけど、向こうで精神的な問題が発生して、2週間で帰国したんです。その後、治療をしながら精神科医やカウンセラーに憧れるんですけど、勉強をしても強い薬の副作用で自分が何を書いているのかわからないような状態になってしまって。それからこいつらとバンドをやろうと思ったときにもうやるしかない、というか、逃げ道をバッサリ断ちたかったんです。これがうまくいかなかったらホントにやることがない。だから、このバンドをやる、“club earth”を立ち上げた強さを聞かれると、僕にはホントにこれしかないとしか答えられなくて。この仲間がいなかったらどうするかという質問をされるとめちゃくちゃ困るんです。僕と中島はギターをやっていて、藤崎は小さいころからピアノを弾いていて、LOVEはDJをやっていて。この4人の共通点は音楽だから、音楽をやろうと決めたんです——
 
2010年4月、バンドは原点の象徴であり続けるそのライヴハウスと同名を冠した第一声『EARTH』をリリース。『EARTH』に収められた7曲と同年11月のダブルリードシングル「天使と悪魔/ファンタジー」で描いた鮮烈な“光と影”のポップ・ミュージックとともにSEKAI NO OWARIは2010年を象徴するバンドのひとつとなった。ライヴにおいても、2010年初頭の時点では“club earth”に30人を集めるのがやっとというところから、『EARTH』以降は最初のツアー、数多くの夏フェス出演を経て、昨年末にはC.C.レモンホールを即完させるという驚くべきスピードで動員を増やしていった。しかし、それは4人にしてみれば想定外の展開などではなく、満を持して訪れた“来るべき時”だった。

「激動の1年というよりは、自分たちが“club earth”を造ってから思い描いていたことがリアルになった1年でした」(深瀬)
 
2011年、彼らにとって大きな環境の変化があった。まず3月に“club earth”を離れ、新たな場所に共同生活の場を移した。さらに、今回リリースするトリプルリードシングル『INORI』からSEKAI NO OWARIはトイズファクトリーと契約を交わした。つまり、事実上のメジャー・デビューである。しかし、彼らはこの“メジャー・デビュー”という響きに戸惑いを覚えたという。

「トイズファクトリーにたくさん好きなアーティストがいるというのもあるんですけど、何より大きかったのは一緒にやりたいスタッフがここにいたということですね。作品を制作する基盤がトイズファクトリーになったことで自由度も増したし、自分たちがやりたいことを実現できる環境も増えて、より密度の高い作品を作れるようになったんです。4人の根本的な意識は何も変わっていなくて。『EARTH』をリリースしたときに“自分たちはこういうものですと伝える自己紹介盤です”言っていたんですけど、いまもその延長線上でリスナーとコミュニケーションを取っている感覚があって。はじめて会ったときは深刻で暗い人だと思われていたけど、2回目にお酒を呑んだときはすごくしゃべるやつなんだって知ってもらえて、今度また呑みに行こうよって約束をするような(笑)。

『EARTH』から『天使と悪魔/ファンタジー』、今回の『INORI』と、ずっと同じ歩みのなかで生まれているものなんです」(藤崎)

「メジャーに行くと、締め付けが厳しくなるというイメージをもっている人も多いと思いますけど、もしそれが事実なら僕らは逆ですね(笑)。あくまで信頼できるスタッフとやりたいことをやれる環境を選んだので。自分たちの信じたところにどんどん向かっていけているという実感があります」(中島)

「個人的には『INORI』のレコーディングからバンドを代表して機材を選ぶようになって。レコーディングがめちゃくちゃ楽しかったんです。楽しいことがどんどん増えていて、さらに新しいことに挑戦できる環境にいられるのは幸せだなと思います」(LOVE)
 
ここからは、『INORI』に収められた「花鳥風月」、「不死鳥」、「Never Ending World」について。深瀬、藤崎、中島という3人のソングライター/コンポーザーのクレジットが各曲にバランスよく配されているのが印象的だ。この3曲の独立した存在感と有機的な連なりは、SEKAI NO OWARIの不抜の音楽的アイデンティティに新たなポップネスと歌の普遍性が宿ったラヴソング集として捉えることができる。

M1「花鳥風月」(作詞:藤崎/作曲:深瀬)は、まるで往年の歌謡曲のようにDNAレベルで親しみを感じるメロディとひとりの女性が森羅万象に慈しみを捧げながら“あなた”を想うリリックが、柔らかな包容力に彩られたサウンドのなかで溶け合っている。これまでのSEKAI NO OWARIにはなかった歌心の発露に驚く人も多いだろう。メロディ自体は2年ほど前から存在しており、藤崎は当初からピアノの独奏でこの旋律をなぞっていたという。さらに彼女はこの曲ではじめて作詞を手がけている。

「ピアノで弾いて美しく鳴る曲なんですよね。ことあるごとに弾いていましたね。歌詞はそんなメロディに溶けるような言葉を選びたいなと思って。私のなかでは理論と感情に基づいたすごく壮大なテーマがあるんですけど、それはすごく個人的なものでもあるし、自由に受け取ってもらいたいです」(藤崎)

 ほとんどの楽曲でアレンジのイニシアチヴを握る中島はこう言う。
「メロディ自体に和風っぽい雰囲気が強くあって、それが魅力でもあるんですけど、アレンジはそこに寄り過ぎるのではなく、いかにSEKAI NO OWARIらしさを出せるかを考えて組み立てていきました」(中島)

「原曲は自然に対する畏怖の念みたいなものを感じさせる強さがあったんですけど、中じんがもってきてくれたアレンジは、もっと日常的で、ラジオのカーステから流れてくるような感触のあるものになっていて。それがすごくいいなと思ったんです。どこかで僕らはそういう音楽は作れないんじゃないかと思っていたところもあったので。情景や思い出に溶け込む音楽を前にしたら、どんなに哲学を振りかざしても勝てない瞬間があるんですよね。そういう曲になったと思うし、僕らの音楽の新しい切り口だと思います」(深瀬)
 
昨年末のC.C.レモンホール公演でも披露されたM2「不死鳥」(作詞:深瀬/作曲:中島)は、「自分らしい音だと思う」と中島が自負する軽快に跳ねるギター・リフとビートを軸にしたシャッフル・サウンドで、僕とロボットである君との恋を巡る会話劇を踊らせている。その会話劇が浮かび上がらせているのは“永遠と有限”の対立であり、生あるものにはすべて終わりが来ることを悟りながらもなお永遠に焦がれ、それと同時に死という終わりから与えられるものに美しい魔法を見る二律背反の死生観だ。この曲は『EARTH』に収録されている「死の魔法」へのアンサー・ソングという側面ももっている。さらにふと思い出したのは、「天使と悪魔/ファンタジー」のリリース時のインタビューで、深瀬が「SEKAI NO OWARI=シリアスという方程式で捉えられることをすごく危惧していて、だからいまシンプルなラヴソングを書こうとしているんです」と言っていたことだ。

「もともとラヴソングが大好きで、ラヴソングに憧れをもっているのに、いざ自分が書こうとすると悩みに悩んで、書けなくて。そこからどうしようかと考えたときに会話の繋がりで物語を表現しようってなって。自分のなかで恋愛は何かと考えたときに“手に入れたいのに手に入らないもの”だなと思ったんです。で、俺にとってそれは何かなと思ったら、やっぱり永遠だった。いずれ死んでしまう自分の永遠に対する憧れをラヴソングに変換してこの歌詞を書きました。僕はもともと温度のある言葉が嫌いで。でも、ラヴソングって必然的に人間味やあたたかみのある言葉を選ぶことになるし、この曲でも『Never Ending World』でも、いままで絶対に書かなかった〈手を繋ぐ〉という言葉を書いていて。最初は抵抗もあったんですけど、いまではよかったと思っています」(深瀬)
 
荘重かつ神秘的なレクイエムであり、SEKAI NO OWARIのヒューマニズムを祈るように表明するM3「Never Ending World」(作詞:深瀬/作曲:藤崎)は、3曲のなかで唯一3月11日、つまり震災以降に像を結んだ曲である。そして、彼らがSEKAI NO OWARIというバンド名を背負ったことに対するひとつの答えも示されている。

「震災を受けて、自分のなかに沸き起こった衝動をこの曲に投影しました。もともとこの曲は年始から何パターンも作っていたんですけど、全然上手くいかなくて。でも、震災の翌日にピアノに向かったヴァージョンにはじめて手応えを感じたんです。3月11日以降に多くの人が感じたこと、頭に描いていたことを、この音だったら何年後でも思い出せるという確信がありました」(藤崎)

「この曲はリスナーにメッセージを伝えたいというよりは、自分たちの決意表明、宣誓のようなものですね。ただ、この曲から何かが伝わるのであればいくらでも受け止める覚悟もあって。SEKAI NO OWARIというバンド名も“世界が終われ”みたいなニュアンスでつけたと思っている人が想像以上に多くて。確かにそういうことに対する解答にもなっていると思います。僕らの新しいスタートであり、今後のフラッグになるような曲だと思います」(深瀬)
 
『INORI』からはじまる、SEKAI NO OWARIの第2章。11月22日には日本武道館でのワンマン・ライヴも決定しており、彼らの音楽世界が放たれるスケールは現在進行形で大きくなっている。いま4人はSEKAI NO OWARIの未来をどう見据えているのだろうか。

「僕らには夢というものがないんですよね。夢って誰かのようになりたいとか、あの場所に行きたいとか比較対象や目標設定があってこそのものだと思うんですけど、そもそも僕らにはそれがないので。ただ、自分たちにはどういうルーツがあって、どんな道のりを辿ってきたからいまがある、ということは常に確認しておきたいとメンバー全員が思っています」(深瀬)
 
これからもつぶさに見つめていきたいと思う。SEKAI NO OWARIが響かせるいまを、その歩みを。


【関連サイト】
SEKAI NO OWARI HP: http://sekainoowari.jp/
SEKAI NO OWARI MOBILE SITE: http://sekainoowari.net
Twitter:http://twitter.com/fromsekaowa
Blog(藤崎彩織):http://ameblo.jp/sekaowa/

TOY’S FACTORY(レーベル):http://www.toysfactory.co.jp/
Lastrum(事務所):http://www.lastrum.co.jp/web/top/

 


 

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