毛皮のマリーズ 志磨遼平 インタビュー Page2


ー 言葉を新しく紡ぐんだけど、どこか記憶から引っ張り出す感覚なんですね。

そうです。曲が元々持っている力というのもあるし。ある彫刻家の方が言っていたんですが、彫刻を作る時というのは、石を石像の形に削っていくというよりは、石の中に埋められている、例えば美しい女神様のようなものをそのままの姿に切り出して解放してあげるというイメージらしいんですよ。感覚としては、それが近いかもしれません。メロディに突飛なアレンジをつけるということを僕は好まなくて、そもそも曲が持っている楽器の鳴りや言葉というのがある気がするんです。僕は誰も聴いたことのない音楽を生みたいという欲求がないんですよ。今、29歳になりましたけど、29年の中でしか培われていないものというか…。実は昔からあったようなものが僕の口を借りて出てくる時がすごく神聖な気持ちになれるんです。僕じゃない誰かが作っているように思えてしまう、そういう曲を僕は大事にしたいです。


ー 志磨さんが作る楽曲って、確かにルーツとなる部分が色濃く出ているけど、絶対的な「自分」というのがあるのかと思っていました。

僕はないんですよ。なるべく僕という成分が入らないようにしたい。


ー 志磨遼平として必要な成分というのは何でしょう?

これもまた人の話になっちゃうんですが、ストーンズのキース・リチャードは、作曲家はピックアップ(エレキの振動を電気信号に変換するもの)だと言っているんです。


ー ピックアップ?

ええ。ここからは僕の拡大解釈も入ってきますが、大気中に名曲の成分が浮遊していて、それをピックアップである作曲家が察知して拾うんです。自分はそれを拾って信号に変換するだけなんですが、なるべく間違いのない状態でキャッチして、再生する装置である。だから自分達はピックアップの装置を常に磨いておいて、いつでも受信できる状態になければいけないーというようなことを言っていました。


ー なるほど。

きっと、くだらない曲というのも浮かんでいるんですがたまに、もの凄い大物が浮かんでいて、それは絶対逃してはいけないんですよ。でもちょっと怠っていると逃すんですよ。ぼけーっとしてたり、友達からの電話で「行く行く、今から飲みに行く」なんて言ってるとね(笑)。だからそういう時も常にもアンテナを張っているといいんです。それで今度はそれを再生する時に、歌がむっちゃ下手だとちゃんと再生できない…今でも下手ですけど(笑)


ー いやいやいや(笑)

でも、実際下手だと損なうわけですよ。楽曲の魅力を完璧に再現できなくて。だったらちょっとは歌が上手くいたいし、聴こえてくる音楽に対して自分の知識がないと、伝えられない場合もありますしね。いい音で何か鳴っているんだけど、それが何の音か分からないとちゃんと再現できないじゃないですか。でも分かっていれば「この音はメロトロンで、あっちで鳴っている音はフレンチホルンだ」ってわかる。


ー イメージやアイデアの具現化するには、確かに知識や技術が大きな役割を担いますね。ところで、ロンドン、しかもアビーロードスタジオでのレコーディングはいかがでしたか?

もう夢の国でしたね。オアシス! 桃源郷!! ユートピア!!!


ー あははは!

スタジオの中は当時ビートルズが使っていた時とあまり変わらないんですよ。普通に、ビートルズがレコーディングに使った楽器とか置いてあるし。さすがに “Dont Touch”とは書いてありますが。あと、マイクは当時のものをずっとリペアして今も使っているんですよ。


ー 海外でレコーディングやマスタリングをしたアーティストさんには必ず伺うことなのですが、レコーディングの上で、日本との差というのは感じました?

専門的なところでいっても違いはあって、例えばPro Tools(ソフト)で編集する時に、日本だと波形をすごくキレイに揃えるんです。手術で切れた神経を縫い合わせるみたいに。僕はそれしか知らなかったんですが、向こうのエンジニアはすごく大雑把に切って、つなぎ目もふわっとクロスさせるんですよ。だから大雑把同士でうやむやにしちゃうみたいな(笑)。それをクロスフェードというんですが、波形が全部今迄見たことのない形になってるの! こういうのは国民性なのかもなぁって感じました。ただ、それでも作業的には日本人の方が早いんですよ。あと、エンジニアさんが自ら口を出すということは日本ではあまり経験がないんです。こちらから「AパターンとBパターンのどちらがいいと思う?」とか聞けば勿論答えてくれますけど。でも向こうのエンジニアさんはガンガン言ってきてくれるんです。


ー へー、そうなんですか。

「このギターはストレッチじゃないよね」とか「この音、いらなくない?」とか。そうすると僕も「それならそうしようか」って。あと、うちのエンジニアはすごく真面目でした。
海外で友達のバンドがレコーディングした時、作業の途中でも「はい!ティーブレイク」って平気で作業中断されたりして「え、まだ途中やのに」っていうことがあったらしいんですよ。夜もまだやりたいと言っても「ダメダメ、今日はここまで!」とか言われたりしたという話を聞いていたので、これは作業をサクサク進めなきゃって思っていたんですが、僕たちのエンジニアは、僕たちが煙草吸いたいとか言わない限り休まないという感じでした。


ー すごい真面目!

そうなんですよ。日本だと大体昼の12時位から初めて夜の10時、11時位には終わりたいねという感じなんですが、ロンドンでは朝の9時30分から夜の9時30分まできっかり12時間! だからスムーズに進みました。そうそう、向こうの6月は白夜なんですよ。


ー 白夜!!

ええ。だから夜の9時30分に作業が終わって外に出てもまだ明るいんです。


ー 白夜だとずっと遊んでいたくなっちゃいそう。

そうそう。でも実際はへとへとで全然遊ばなかったです(笑)でもアビーロードに毎日通えるって、こんな贅沢なことないですからね。別にビッグ・ベンとか観たくないし(笑)


ー 風景的にはどうでした?

最高でした! ロンドンは一日の中に四季があるといいますけど、まさにその通りです。6月だったんですが朝は涼しくて昼になると、ものすごく日差しがキツくなる。でも日本みたく湿気がないから汗かかないんです。ただ汗はかかないのにめっちゃ暑い! アチチチチって(笑)でも夜はコートが必要な位に冷え込んで。


ー そもそも今回は何故アビーロードスタジオでレコーディング出来ることになったんですか?

今回、「ティン・パン・アレイ」とは違って、すごくチープなものにする予定だったんです。音数も少なくて、なるべく4人でやれる音楽ということを考えていたんです。だから「宅録でいいです。でもメッチャ音の悪いの作りたいんです」って言っていたんですがディレクターに「音が悪いと言っても限度があるから、宅録でも普通に聴けるもの作ってくれよ」と言われたので「それなら僕が家で作ってきたものを、海外の超高級スタジオで仕上げるってどうですか?」って言ったんですが、そう言ったものの海外の超高級スタジオなんてそんなに詳しくありませんから(笑)、アビーロードスタジオの名前を出したんです。それが昨年の秋位だったんですが、自分でもそれをすっかり忘れていて。それで今春になって「そろそろパスポート取れよ」って言われて「え、何の話でしたっけ?」って(笑)


 

アーティスト情報

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■ 2011年10月8日(土)

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■ 2011年10月13日(木)

札幌 PENNY LANE 24

■ 2011年10月15日(土)

仙台 Rensa

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名古屋 ボトムライン

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長野 JUNK BOX

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■ 2011年11月11日(金)

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■ 2011年11月18日(金)

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