ー 録音面でいうと、具体的にはどういう振り分けになっていますか?
前半7曲がいつも自分達が使っているスタジオや、紅布(レッドクロス)というライヴハウスで閉店後、朝まで録ったりしました。それは日本で録って「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン 」を挟んで後半3曲がアビーロード録音です。
ー「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン 」の質感はいいですね。それこそ今ここに置いてあるレコーダーみたいので録った感じ。
そうそう、こういうので録りました。いかにも”おのぼりさん” ぽくていいでしょ。
ー おのぼりさん(笑)ところで曲のことから少し話がずれますが、昨日(収録時) 紅布で加川良さんとライヴやりましたよね!
最高でした!毛皮のマリーズは最低でしたけど加川良さんは最高でした。
ー いやいやいや(笑)加川さん、「教訓」やりました?
最後にやってくれました。あの人は曲の合間に「こんな時代です〜」って言ってから次の曲をやるんですが、それを言ってから「教訓」をやったので、すごく沁み入りましたね。
ー うわぁ、鳥肌たつ!! twitterで西君がつぶやいていたので、すごく気になっていたんですよ。
僕らがバックで演奏をして、”女の証” と”戦争しましょう” という曲を一緒にやりました。僕がドラムをやったんですが、加川さんが歌詞を忘れて構成がぐしゃぐしゃになって、”戦争しましょう” は僕がテンションあがりすぎて、どんどんテンポが早くなってむちゃくちゃになりましたけど(笑)、でも面白かったです!
ー では曲の話に戻りますが、1曲目の “The End Of The World” はカヴァーですよね。これ色々な人がカヴァーしてるけど、元って誰でしたっけ。
多分Skeeter Davisだと思うんですよね。僕は彼女のヴァージョンが好きでいつかやりたいと思っていたんですが、今回テーマがテーマだったので、それならこの曲から始めればいいと思って収録しました。素敵じゃないですか。“The End Of The World” で、グッバイというところからどんどん悲しみの深いところまで追って追って一番深いところはどこなんだろうとなる感じが。そういうアルバムになればいいですね。
ー そういう中でも、ちょこちょこと面白げな曲も入っていて、”夢のあと” とかはどちらかというと日本のフォークっぽいですよね。
そうですね。加川さんとのライヴでもやりましたよ、折角なので。僕はTHE BANDのつもりだったんですが、歌をつけるとどんどん吉田拓郎さんになっていって(笑)
ー あはは!でもルーツを辿って歌詞を日本語にするとそうなるのは自然かもしれない。
うんうん。
ー あと “上海姑娘 “ も面白いですね。外国人ミュージシャンが東洋人を十把一絡げにした感じの音で(笑)
そうそう!スージー・アンド・ザ・バンシーズの「香港庭園(ホンコンガーデン)」みたいなのがやりたかったんです。ニュー・ウェイヴっぽい謎のアジア(笑)
僕の中にすごくロマンチックな幻想があって、また今回も岡崎京子さんの話になりますがー。
ー ええ、是非。私も大好きだし。
彼女の「東京ガールズブラボー」という作品で東京でただただ遊びまくるんですが、どこか虚無感があるという主人公が出てくるんです。岡崎さんの漫画に登場する女の子っていつもそういう感じで、物欲や素敵な男の子との関係とか、一見短絡的なんだけど、どこか明日が見えない感じ。夜遊びしていて、別にそのまま朝がこなくてもいいのにみたいな。
ー「Rock」とかもまさにそうじゃない?
そうそうそう!!!! 家出して、“ツバキハウス”(ディスコ)のロンドンナイトとかに行って好きでもない、名前すら知らない男の子と一緒に寝ちゃったりして意味もなく泣く!みたいな。そういうニュー・ウェイヴなイメージが僕の中に勝手にあるんですよ。何となくノーフューチャーな儚さのイメージがありました。何が悲しいか分からないけど悲しい感じ。「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」という岡崎さんの別の漫画のタイトルが、僕は言葉としてもすごく好きなんです。僕たちは死ぬことを絶対知っているけど、知らないふりをしてそれでもなお、まだ何かを生み出そうとする。いつかは別れがくるのに誰かと出会い必要とする。壊れるのが分かっていて、それでも大事にしようとする。忘れるのは分かっているけど、できるだけ覚えていようとする。そういう悲しさというのを歌いたかったんです。
ー それで言うと、”JUBILEE” もそうだけど “ダンデライオン” に、それこそ岡崎京子的な愛と悲しみを感じました。
確かにそうかもしれません! あの曲は女の子がとにかく我が儘を言って、それに男の子がうまく返すという歌詞にしようと思って、ひたすら我が儘を考えて、その我が儘に対して女の子の機嫌を損ねないように答えるという作り方をしました(笑)
ー 志磨君自体は女の子にこれだけ我が儘を言われたら、どうするの?
あれは僕自身です。なるべく彼女の機嫌を損ねないように地面を這いつくばってー。
ー あはははは!!! そうなんだ。あと”ラプソディ・イン・ザ・ムード” の、それこそムード感は好きです。
いいでしょ。こういうのは得意です。
ー 浅川マキさんっぽい。
あぁ、嬉しい!
ー こういう曲ばかりをセレクトして、志磨君のソロライヴとかも観てみたいです。
あー、いいですね!おいちゃんになったらやりたいですね。おいちゃんなのに女装してやりたい。
ー いい!キレイなドレスとか着て。
そうそう。
ー ”The Ballad Of Saturday Night” とかはジョンの “Gimme Some Truth” を彷彿とさせるし、”となりにいてね ” の イギリス的な、まさに!という音ですね。
モット・ザ・フープルというか(笑)あれはお遊びじゃないですけど折角アビーロード行くなら、こういうのやりたいと思ってやりましたね。
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