「3ヶ月連続リリース」という事で話題をさらった秦 基博。しかし、ゼロからのクリエイトというのは並大抵な事ではない。10月6日発売の3rdアルバム「Documentary」では今迄にない秦 基博と、従来の秦 基博らしい世界を渾然一体で打ち出してきている。その凄さはどこからくるのだろうか。そんな秦にレコーディングの事やアルバム全曲について色々と伺いました。
Recording
—— 3ヶ月連続リリースという事でかなり話題でしたが、怒濤のリリースでしたね。
そうですね。でも自分の中ではまだこれからというか、実感がない感じもしますけどね。
—— 仕上がりとしてはどういう感じになりましたか?
それぞれの曲が色濃くて個性もあって、このアルバムタイトル通り自分にとってのドキュメンタリーと言っていい位、リアリティのある言葉が散らばっていると思います。
—— レコーディングはいつ位から始まったんですか?
この作品は去年の秋頃からプリプロ制作期間に入って曲作りを始めました。久保田光太郎さん(編曲・ギター)と2人でずっとスタジオに入ってやっていたんですが、その前の2枚のアルバムに関しては、12曲なら12曲をどうやって作っていくかという、短期間に集中して作る方法をとっていたんですけど、今回はアルバムに何曲入れようとか、どういうアルバムにしていこうかというよりも、1曲1曲をどういう風に強く、色濃いものにしていくかというテーマを念頭に置いて、とにかく曲を沢山作りました。
3月、4月まではプリプロを続けていたんですが、並行して「透明だった世界」や「今日もきっと」などはタイアップの関係で先に仕上げて、6月位から伊豆のスタジオで合宿レコーディングしたのをきっかけに本格的にアルバム制作に突入した感じです。そのあとはほとんど毎日スタジオに入っていましたね。
今回はセルフプロデュースだったので、そういう意味でも自分がやりたい音をとことん追求できたと思います。それは単純に好きか嫌いかという事になっちゃうかもしれないんですけど、表現したい事がどこにあるのかというのをジャッジして、光太郎さんやエンジニアの人と話し合いながら自分の理想の音に近づけていく作業でした。
—— ではかなり濃厚な時間だったのではないですか?
そうですね。コミュニケーションは十分とれていたと思います。例えば二通りのやり方があって、プリプロ段階でがっちりアレンジを固めたあとでレコーディングをした曲もあれば、ある程度方向性だけ決めておいて、せーのでバンドメンバーとセッションしながらアレンジを決めていく曲もありましたね。
—— 今回、今迄にはない秦さんの曲へ対しての挑戦を感じたのですが。
確かに、曲のバリエーションもあるし、どの曲に対しても今迄にないものを作りたいという思いはありました。そのひとつにはアコースティックギターが持っている可能性をより探りたくて、打ち込みとアコギの融合だったり、生楽器の響きをどう聴いてもらえるかというところを深く考えました。曲を通してその世界感は勿論ですが、においとか景色を感じて欲しかったので、そういう気持ちになってもらえるかどうかを基準に、演奏のテイクを選んだりしましたね。
—— 3ヶ月連続リリースという事で、シングルとアルバムは別レコーディングだったのですか?
いえ、別レコーディングではなかったです。「透明だった世界」だけはすでにシングルリリースが決まっていましたが、その他の曲に関してはどの曲を9月のシングルにするかなど決めてない状態でレコーディングをしていきました。そういう意味で実は全部シングル曲になる可能性があったし、「メトロ・フィルム」もアルバム曲になる可能性もあったんです。