—— 「パレードパレード」、このサウンド感は今迄の秦さんの作品にはあまりなかったテイストのように思いました。
そうですね。これはギターのリフが先に出来て、そこにメロディを乗せていったんですけど、派手な装飾はしないですっきりさせたバンドサウンドで作っていきました。島田(昌典)さんに弾いてもらったメロトロンが後半をぐっと盛り上げてくれています。
—— 「朝が来る前に」、この作品は09年1月発売ですが、もっと最近の曲のように思っていました。
セカンドアルバム以降という意味では、始めてリリースしたシングル作品(2009年1月リリース)なので詞の世界感やサウンド面で今に繋がる部分はあると思いますね。だから今回このアルバムに収録する事によって曲が更に生きるように曲順を考えました。
—— 「Selva」はサウンド面が面白いですね。
これは生のパーカッションがメインになっています。アコギをループに変えてサンプリング(※PCソフトに取り込む作業)して、その上からみんなの楽器を重ねているんですよ。普段はリズム楽器などと一緒に、せーのでアコギを弾いてその響きがメインになることが多いんですけど、この曲ではアコギを素材として使ったことで、また違う印象が出せているんじゃないかと思います。
—— 「アゼリアと放課後」、このアゼリアは花のアゼリアですか?
そうです。花のアゼリアです。この曲は今と昔の思い出が交錯しているんですけど、自分にとっての原風景を描いています。アゼリアって、僕が住んでいた場所によく咲いていたんですよ。だから他の花とはそういう意味で印象が違って、僕にとっては昔を思い起こさせる花なんですよね。
—— 9月8日に発売したばかりの「メトロ・フィルム」ですが、すごく空気感を感じました。
ありがとうございます。どの曲にも僕自身が見ていた景色や物の感じ方が散りばめられているんですけど、作品を作る上では、この曲の主人公だったらどう考えるだろうかと想像する部分もあります。
ただ、それが自分にとってリアリティをもって感じられるかどうかが大事なところで。
—— 秦 基博自身という部分と歌の主人公というのはやはり違いますか?
そうですね。すごく難しいです。「僕」になりきって歌ってはいますけれど作品にするにあたっては客観性も必要だと思っていて。そこは俯瞰(ふかん)して物語を作る人として色々な視点で書いていますね。
Live
—— 11月から三重を皮切りに全国ツアーを展開されますが今迄の秦さんのツアーで一番長いですよね。
そうです!約4ヵ月にわたる、年をまたいでのツアーになります。本数も昨年の弾き語りツアーより多いですね。3rdアルバムを引っさげてのツアーなので 「Documentary」の中の楽曲が中心になると思いますが、夏フェスと同じメンバーで回っていくので、よりバンド感も増してくると思うし、3rdアルバムの曲もそうですが、それ以前の曲がこのバンドでどういう音になっていくかが自分でもすごく楽しみですね。あと、年内はライブをやった事のない地域での公演が多いんですよ。
—— やはり地域によってお客さんのリアクションも違いますか?
全然違いますね!そういう意味ではどういうリアクションが返ってくるか分からない土地もありますからね。アルバムを一緒に作ったメンバーと廻るツアーというのも初めてなので、そういうところも楽しみです。
—— 今後、どういう「秦 基博」を魅せていきたいですか?
今思っているのは、その時その時で感じる事を表現して、歌にしていきたいということですね。ライブは特にそうですがその瞬間にしかないものがあると思うのでそれを逃さないように歌っていきたいとは思います。ただこれから先、何を一番に思っているかは分からないですから。きっとその時その時で自分自身と向き合っていけたらと思います。
—— 最後に読者のみなさんに一言お願いします。
この3rdアルバム「Documentary」はタイトルにもしましたけど自分にとってリアリティのある言葉が並んだし、音楽的にも自分がやりたかった事を形にできた自信作なので、是非聴いて欲しいです。
あとはやっぱり全国ツアーでみんなと会えたら、また新しい世界が生まれるんじゃないかと思うんです。是非足を運んでださい。
—— ありがとうございました。
取材・文/まさやん